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パリのはしっこで今宵も開店、酒処ユイじょり

「日本では毎日食べるものなのでどこでも当たり前に手に入るけれど、海外ではなかなか手に入りにくいもの」

フランス以外は住んだことがないのでわからないけれど、個人的には、「納豆」と「豆腐」がまっさきに挙がる。

豆腐と、私

カエルの子は、カエル。
血は争えないもので、私の両親もまごうことなき飲兵衛だ。

父は利き酒の資格を持ってるんだよねって前にぼそっと言っていたし、母は鋼の肝臓を持っている。私からみてもよくお飲みになる。


「ぷしゅっ コポコポ・・・」

夕方、キッチンから聞こえてくる、スーパードライの缶を開けてグラスにすすぐ音。母が夕食の準備を始めるサインだ。

長年旅館の女将をしてきた祖母の血を継ぐ、料理上手な母。彼女のつくるごはんはとにかく品数が多い。

和え物に焼き物に煮物、たまに揚げ物。
大体が酒のつまみっぽいものなのだけど、それらが所狭しと並べられ、毎日が居酒屋のような食卓だった。

そんな居酒屋ごはんのラインナップの中でも、季節を問わず、毎日必ず夕食時に出されるのが、湯豆腐

飲兵衛な母の主食だったことは否めず、子ども心に、「えーまた湯豆腐ー」と妹とともにブー垂れていたものだ。

だが現在、予定調和的にすくすくと飲兵衛に成長した今となっては、湯豆腐を並べる母の気持ちが私にはよーくわかる。基本的に飲むときはそんなに食べないので、湯豆腐をちゅるっと流し込むくらいがちょうどいいのだ。


東京に一人暮らししているとき、豆腐は主食の一部だったことさえある。
大好きなスーパーの豆腐コーナー。ハマりやすい性格のため、気に入ったものがあれば、お供をとっかえひっかえして1週間豆腐で過ごしたことなんてザラにある。

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そんな、幼少時から慣れ親しんできた、豆腐。フランスに移住してからというもの、すっかり食卓から姿を消してしまった。
まあ、美味しい豆腐が簡単に手に入らないから、仕方ないのだけど。


豆腐の白で思い出す、日本の夏

すでに夏が終わりを告げようとし始めた先週のこと。

1万キロ離れていても通じ合っているかのようにコレこれ!って食べたいものをあげてくれる、noteエア飲み友の@えりきゃっとこと、えりちゃんの先週のつぶやき。

いつもながら心をきゅっと掴まれる文章。

このつぶやきで、私は日本の夏を猛烈に懐かしく思うとともに、あんなに毎日食べていた豆腐をかれこれ半年以上食べていないことに気づいた。

ありがとう、えりちゃん。
noteは本当にインスピレーションをくれる場だ。

ふわっふわウインナーロールでますます日本への思慕が高まる土曜の昼下がり。
ようやく夏休みが明けた馴染みのアジア食品店に向かう。

フランスの豆腐事情

フランスのスーパーでも最近、Bioスーパーを中心として、tofuを肉に見立てたベジタリアン用の商品などはよく見かけるが、日本で売られているようなかたちでのtofuはほとんど売られていない。

パリ市内東北部、ベルビルのエスニック街に美味しい豆腐屋があると昔きいたことがあるが、いかんせんうちからは対角線上にあるため、行くのがかなり面倒臭い。

近所のアジア系スーパーで売っているとしたら、まずはパックで常温保存できるタイプ。

それか、冷蔵庫に入ってはいるけれど怪しげな健康豆腐と書かれたもの、のいずれかな印象だけれど、今日は日本がほこるハウス食品製のTofuを発見した。

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タイプが柔らかめか普通か固めの3タイプある。
価格はおよそ400円。

おそらく大豆の味がしっかりする日本で食べられるような美味しい豆腐には出会えないだろうと踏んでおり、最初から冷奴にするのはあきらめて、揚げ出しか豆腐ステーキにすると決めていた私。ならば選択肢としては、普通かかためのいずれかだ。

5分くらい迷って、結局、普通のものを買ってきた。

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パッケージからすると、
アメリカ産でヨーロッパに輸出されている模様

さてと、主役の豆腐も手に入ったところで、私もビールを片手に、はじめますか。


本日のおしながき

・揚げ出し豆腐、しいたけの餡掛けとともに
・土井先生のだし巻き、だし75ccバージョン
・やみつききゅうり、涙の糸唐辛子のせ
・チーズ香る、鉄鍋お好み焼き

すべてを同時に、やみつききゅうり以外はなるべく温かい状態で出すべく、1つのコンロをいかに効率よく使うか、段取りが重要だ。どれも手が混みまくっているわけではないので、材料と作り方はまとめてしまおう。

0、豆腐を半分に切り、4等分にし、キッチンペーパーなどでくるんで上から重石をのせて水切りをしておく。重石をのせた写真をとったはずが、まーたブレブレで意味のわからない写真しかとれていなかったので、省略。。

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1、やみつききゅうりをつくる。適当な大きさに切って軽く塩もみしたきゅうりをごま油、砂糖、塩、にんにくすりおろしをまぜたものであえて、冷蔵庫にいれておく。

2、だし巻き用のだしをとっておく。

先日、日本のパリで遅めの夏休みを満喫中の@ケイチェルおいたんから、Gyozaの投稿でつくっただし巻きに対して挑戦状をいただいていた。おいたんのだし巻き道、とっても面白いので貼らせていただく。

たまご大好きおんな板東的には、大歓迎なこのチャレンジ。

まずはみんな大好き土井先生のレシピを参考に、だし75ccからチャレンジしてみようと決めていた。どうせ90ccもチャレンジすることになるにちがいないから、とりあえず自分でだしをとっておこう。

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かつおぶしエキスをしぼりとったら、そのまますこし冷ましておく。

3、だしを冷ましている間に、揚げ出し豆腐のタレをつくっておく。
乾燥しいたけの戻し汁に、だし汁少々、醤油、酒、みりんで味をととのえて、水を吸ったしいたけを薄切りにしたものとともに火にかける。沸騰したら火を止めて、水溶き片栗粉でとろみをつける。

我が家ではこんなのが少しのこっていたので、とろみづけに使用。日本の便利グッズ最高。

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3、だしを冷ましている間に、まず、お好み焼きから作ってしまおう。
お好み焼き粉の作り方のとおりに2枚分の分量で生地を準備し、2枚分でおおきな1枚を焼く。韓国系の某スーパーで豚の薄切りを買ってきてあったので、こちらで使用。

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Otto氏はチーズ味がお好みなので、チーズをのせて蓋をする

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ひっくり返して両面焼いたら、オーブン可のお皿か鍋にいれ、100から120度くらいのオーブンの中に入れて保温しておく。

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4、あとは、だし巻きを焼いて、揚げ出し豆腐を焼き揚げにするだけ。

まずは、レッツだし巻き。卵3つを溶いて、だし75ccを入れる。私は卵焼き=甘めがやっぱり好きなので、砂糖を大さじ1いかないくらいと塩ふたつまみくらい入れる。

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焼きに入る。日本になくなく置いてきた銅製の卵焼き器が恋しいけれど、IHがNGだから仕方ない。油をこまめにしきながら、卵を巻いていく。

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ぐちゃってなってるけど、巻くので気にしない

巻き終わったら、巻きすでくるくる巻いておいておく。

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色は綺麗。でもいつも作っている卵焼きとそんな変わらないなあ・・・

5、揚げ出し豆腐を揚げ焼きに。水切りした豆腐に片栗粉をまんべんなくまとわせ、フライパンに多めに引いた油で全ての面をこんがり焼き上げていく。

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6、全てをよそって、食卓へ。

冷蔵庫でスタンバイしていたやみつききゅうりは、糸唐辛子をのせるだけ。

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だし巻きは、等分に切って、大根おろしと薬味を添える。私は大根おろしを上にのせたいけれど、そうするとOtto氏が食べない危険があるので、横に別添。

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先日の卵焼き(だし45cc)と見た目はほぼおなじ。。

お好み焼きは、ソースとマヨ、青のりとかつおぶしでシンプルに。

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そして今日の主役、揚げ出し豆腐。深めのお皿に豆腐を並べ、上から餡をかける。大根おろしをのせ、生姜おろしをぱらぱらと散らす。万能ネギがほしいところだけどないので、シブレット(あさつきよりさらに細いハーブ)で代用。

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本日も開店、酒処ユイじょり

お客はひとり、飲兵衛女将もご一緒する酒処ユイじょりは、フランスらしく遅めの21時半に開店。

乾杯する前なのにすでにブレているのはご愛敬。

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ちょこちょこと、煮干しとか自家製シャケフレークとかも小皿で提供

ううう、ビールもいいけれど、日本酒も飲みたくなるねえ。

いつもの一皿入魂スタイルよりもどっと疲れるけれど、いろんなものを少しずついただける日本の居酒屋ごはん、やっぱり最高だ。外で食べたら(inパリ)ビール抜きで40ユーロくらいしそうだから、こういうのは家でつくるに限る。

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ちなみに、揚げ出しに使った例の普通の硬さの豆腐。生の状態でちょこっと味見してみたけれど、かたさについては木綿豆腐よりもさらにかたい。ハードタイプは一体どんなかたさなのだろう・・・。

また、大豆の味については、「おーい」と3回呼んでひょこり頭だけ出してくれるレベルで感じることができた。うん、できるかわからないけど次は自作にチャレンジだな。

そして、だし巻き。75ccはたしかにじゅわっと感が45ccに比べたらあるけど、お店のふわっじゅわっにはまだ届かない。やっぱり砂糖いれないほうがいいのかな・・・。

なんて考えながら、夜は更ける。
豆腐もたまごも、故郷の味を求める私の旅はまだまだ続く。


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あ、もうひとりいた。足下でずーっと女将を見つめるお客🐶



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