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【日本一周 京都・滋賀編29】 西洋建築!日本一おしゃれな郵便局

・ヴォーリズラリー

 堀切港からバスを乗り継ぎ、近江八幡にゆかりのあるヴォーリズの建築を見に行った。彼は英語教師として滋賀県立商業高校に赴任したのち、建築家として日本全国の1600の建物の設計を手がけた。その第一号となったのが今回訪れるアンドリュース記念館である。


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正面

 大学時代の親友であったハーバード・アンドリュースが夭折した際に、彼の家から送られた資金をもとにヴォーリズが設計したものである。クリーム色を基調とした外壁に、木枠のガラス窓がアシンメトリカルに配置されたかわいらしい建物である。二階はドライフルーツ屋さんとして利用されていたが、それ以外の部屋は公開されておらず、ふわっとした観光になった。

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背面

 アンドリュース記念館の向かいには、近江八幡協会:牧師館がたっていた。アンドリュース記念館は建築当初の雰囲気を残して建て替えられたものだが、こちらの建物はたてられた昭和初期の状態のままで残っている。瓦屋根と赤い欄干のとりあわせが和洋折衷の風を感じさせ、個人的にはこちらの建物の方が好みだった。

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牧師館の正面図

 にわかヴォーリズの愚見だが、彼の建物はどれも窓枠の意匠が遊び心にあふれていると思う。牧師館にしても、窓枠のひさしが少し斜めに取りつけられていて、それを支える木材も独特の曲線を描いて、枠の四角からはわずかにはみ出すといった素敵なつくりになっている。全体のダイナミックさも大切だけれど、こういった細かい部分でどれだけ遊べるかも建築家として求められる資質なのだなと思った。

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可愛らしい小窓

 そして、アンドリュース記念館から徒歩3分ほどの距離にある旧八幡郵便局を訪れた。こちらもヴォーリズが手がけた建築であり、知名度も高めの作品である。

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旧八幡郵便局

 なにより印象に残っているのは、外壁の凸凹の激しさ。油彩画でも、ときどき筆致の主張がつよい作品に出会ってたまげることがあるけれど、外壁の規模となればその衝撃は比じゃない。頬擦りしたら返り討ちに会うな、とか。雲仙普賢岳の溶岩みたいにコシのある塗料を使ったのだろうか、とか。そのあとも壁に引っ張られてしまって、全体像の記憶があまりない。けれども、巡行記を書くにあたって写真を見返すと、入り口のアーチはメルヘンチックで、郵便局のロゴも今と違ってかわいらしい、「地元の郵便局がこれだったらいいな」と思ってしまう建築だった。

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でこぼこでこぼこした外壁

 正直なところ、昨夜、京都の大丸で尾道に言われるまでヴォーリズ自体まったく知らなかった。しかし、その次の日に訪れたヴォーリズ建築三連チャンはなかなか楽しめましたとさ。

明石

・建築巡り

 沖島からフェリーに乗り込み、堀切港に戻ってきた。行きのバスは近江鉄道バスだったが、帰りは「あかこんバス」というコミュニティバスを利用する。一日に数本しかでていない過疎路線であるが、幸運にもフェリーとの時間がかみ合ったため、「どこでおりても片道200円」という良心的価格設定の恩恵に授かることができた。

 今から向かうは、昨夜見学した大丸京都店の建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズが手掛けた建築群。


 バスに揺られることしばらく、山形県・角館の武家屋敷通りと、廃れ気味の商店街をドッキングさせたような、特殊な趣をもつ街のバス停で下車し、目的の地点へ進んだ。

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 アンドリュース記念館は、日本のヴォーリズ建築第一号として知られている。クリーム色の外壁には、黒茶色の屋根がかぶさり、なにげに窓が多いのが特徴だ。1907年竣工とのことだが、現代の住宅の中に混ぜても十分馴染む外観をしており、彼が当時の日本に新たな風を吹かしたであろうことが容易に想像された。(一度改築を経ているので、今見ているものがオリジナルのデザインと大きく異なっているかもしれないが。)

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アンドリュース記念館の横に立つ、おしゃれな教会

 ちなみ、アンドリュース記念の一階はカフェになっているため、利用客以外は自由に出入りできず、内部見学は入り口のみとなってしまった。そこには、ヴォーリズの功績を紹介するキャプションが掲示されていたのだが、その文章のクオリティが、出来の良い中学2年生が書いたような、絶妙に惜しいもので、正直大人が書いたものとは思えなかった。そこで、塾講師の肩書をもつ私たちは、一介の国語科教師として、「ここはこう言いかえるべきだ」などと、高飛車にも、添削をしてみたりした。

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 最後に見たのは、旧八幡郵便局。今日日の郵便局と言えば、日本各地どこだろうと、事務的雰囲気を前面に押し出した無機質な外観で統一されているが、ここは違う。アンドリュース記念同様、クリーム色の外壁は、素材の石を活かし、ゴツゴツとした表面を持つ。

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 入り口の扉の上には、ポストマークが堂々と掲げられおり、建物自らが自身の存在を誇っているようにすら感じられる。かっこいい。「郵便局=灰色の箱」という、現代の形式に縛られる前の、有機的なその姿に新鮮さを覚えた。

・メンバー
明石、尾道

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