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旅と成長

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遠方のルソーと静寂のシャガール

遠方のルソーと静寂のシャガール

 寒さはなかった。空気は澄んでいるが、どこか陰鬱さが落ちていた。体を動かせば、気持ちが晴れるだろうと少し遠くに車を止めて歩く。空気には匂いがなかった。

西洋画が好きな小職の目的地は美術館「ハーモ美術館」。私が好きな画家ルソーが収蔵されている評判の美術館である。開け放たれたドアには時勢を物語っていて悲しいはずなのに、それは毅然と湖を見つめていた。エントランスに入るとダリの彫刻と館員の方が迎え入れて

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ホアキン・フェニックスよろしく

ホアキン・フェニックスよろしく

新そばの季節だ。この時期よく近くのそば屋を訪れる。自転車を飛ばして10分。相も変わらずお一人様な僕だが、ここは居心地がよいので、よく訪れるのだ。

店の引き戸を開けるとキレイな女性がいた。彼女は彼氏らしい人とそばをすすっていたが、何か寂しげというか悲しげというかそんな顔をしていた。二人は静寂に満ちていた。そば屋で別れ話か?と思いながら、その二人の席のとなりしか空いていないようで、近くに行く羽目にな

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コートールド美術館への旅

コートールド美術館への旅

3連休の中日に東京都美術館に行ってきた。知識はあまりないが、絵画を観るのが好きな私は、よく美術館に足を運ぶ。美術館の「静」の場面が好きだからだろう。強いていうが、美術館が静かだからとかではない。美術館は人が多い。人が視界に多く入り、騒がしい。私の言う「静」とは人の並びの煩さの近くに佇む動かぬ絵画である。私は、絵画の魅力はそこにもあると考えている。

話を進めよう。コートールド美術館はどうやら富豪が

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無銘の旅

無銘の旅

会社にいると自分が小さくなっていくのを感じる。あの蝕まれていく感じだ。

〜ができない。〜をミスした。〜(僕ではない)くんは優秀。自分には何もないと錯覚し、さらに何もない自分の価値が蝕まれていくようで。

また、自分は認めてもらえていないと感じる。評価さえしてもらえない。放置され、この先どうなっちゃうんだとか。言われたことをやったのに、それは違うと言われたり。行く宛もないのにを充てを探してしまう。

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涼了たる西洋の風 #旅する日本語

涼了たる西洋の風 #旅する日本語

日の終わりにずんだシェイクを飲みながらこの旅を振り返った。

涼しさを思い出した。

大学の後輩に誘われ、仙台旅行に赴いた。天気は晴れ、真夏。汗が滴り落ちる。牛タンを喰らい、かの伊達政宗像を拝むと仙台をすでに満喫した気分になった。暑くて、ダルさが蓄積し、夏を満喫したと錯覚していた。

刻は3時、後輩に「瑞鳳殿に行きますよ。」といわれ、思考を巡らせた。というより、脳のメモリからサルベージを行った。結

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