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実はあまり知られていない、「精神疾患のしんどさ」4選と「予防法」8選


はじめに:コロナ禍で精神疾患症例数が急増中!

コロナ禍において、精神疾患の症例数が急増しています。

共同通信によると、

新型コロナウイルス禍での生活環境変化の影響で増えた疾患について、民間企業が全国の医師に尋ねた結果、回答した561人のうち4割近くが「精神疾患」を挙げ、最多だったことが20日分かった。感染者の後遺症と思われるメンタル面の症状では「悪夢を見る」「うつ状態」「常にコロナにおびえている精神状態」などが多かった。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

また、精神疾患による経済損失も極めて大きいと言われております。慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室および同大学ストレス研究センター専任講師である、佐渡充洋氏の「うつ病の疾病費用研究 (精神神経学雑誌 第116巻 第2号/2014)」によると、以下のような莫大な経済損失があると言われています。

「直接費用:約1,800億円」「罹病費用:約9,200億円」「死亡費用:約8,800億円」であるからして、うつ病による日本の社会的総損失額は「約2兆円」であることが分かります。

また、うつ病以外にも、以下のような影響があると言われています。

統合失調症の社会経済的損失額は「総額 約2.7兆円」、不安障害では「総額 約2.3兆円」です。それらの精神疾患による社会経済的損失を合わせれば、政府の予算が圧迫していることは明らかではないでしょうか。
そんな現状にも拘わらず政府の改善への具体的な施策は乏しく、2017年には厚生労働省より戦後初めて日本人の10歳~14歳の死因の1位が自殺であったことに加え、精神疾患患者数は約419.3万人であることが公表されています。

コロナウイルス感染症発生以前にも、精神疾患増加については危惧されており、2018年のロイター通信の報道によれば、2030年までに精神疾患による経済損失は最大で16兆ドル(約1,650兆円)に上ると言われています。

日本は特に精神疾患大国と言われ、向精神薬の消費量が世界の中でも群を抜いて多いと言われています。以下グラフが示すように、向精神薬の消費量は年々うなぎ登りで増えています。

精神薬の市場規模

コロナウイルス感染症は収束の目処が一切立っておらず、2020年12月30日現在で全世界の感染者数は8190万人、死者は179万人に上っています。

ウイルス自体の影響も危惧されていますが、周辺領域(特に経済)への影響はそれよりも大きいと言われ続けており、精神疾患急増もその一つではないでしょうか。今後更なる増加の可能性が叫ばれており、経済状況の更なる悪化→精神疾患の増加→更なる経済への悪影響、というネガティブスパイラルに陥る可能性が危惧されます。

今や、日本では20人に1人がうつ病にかかっていると言われる時代。今の中年層の同級生のうち、クラスの中に1人や2人は、今この瞬間にうつ病で苦しんでいる人がいる、という計算です。また、精神疾患はうつ病以外にも数多く存在します。つまり、精神疾患は今や誰がかかってもおかしくない病気です。

この記事を書こうと思ったきっかけ

きっかけは他でもなく、私が精神疾患の経験者で、今も治療中の身であり、これ以上精神疾患を増やしたくない、という切なる思いから書かせていただいています。

私は、今から10年以上前に「パニック障害」にかかり、呼吸困難で救急車で搬送されたこともあります。また、今年6月にはフィリピン・マニラにおいて体調不良を訴え、その後現地医師および日本の医師に「重度のうつ病」と診断されました。

診断を受けた後、自分はSNSなどを通じ、同じ病で苦しんでいる人との交流を始めました。彼らと交流していて感じた「共通の悩み」は「精神疾患大国にも関わらず、日本社会においては、精神疾患という病気のしんどさがきちんと認知や理解されていない」ということです。

それもそのはず。大怪我や大きな病気をすれば、目に見えて体に症状が出て来るため、そのしんどさが「伝わりやすい」のですが、精神疾患の場合は、見た目でしんどさが伝わりにくいのが特徴なので、致し方ない部分もあります。

しかも、概して精神疾患の方は「頑張り屋さん」で「真面目な方」が非常に多く、「顔は笑っているけど心は泣いている」人ばかりなのです。自分からその辛さを打ち明けられる人は少なく、そのまま病気になるまで頑張ってしまいます。周りからは「あの人が精神疾患を患っているなんて、信じられない」と言われることが多いです。

だから、そのしんどさが気づかれにくい。

今は私は随分と回復し、仕事もだいぶこなせるようになってきました(サポートをしてくれた家族や仕事仲間たちには、感謝の気持ちしかありません)。

今日は経験者の身から、精神疾患のしんどさについて、自身の経験談も含め、できる限り解説したいと思います。また、しんどさだけ書いても「じゃあどうすればいいの?」という疑問が湧くと思うので、予防法についても書かせていただきます。

詳しく書けば本が書けるくらいのレベルですが、noteということで極力簡潔にまとめますね。

しんどさ①:「心だけでなく、体すら言うことを全く聞いてくれなくなる」

精神疾患にかかる方の多くは、

・まじめ

・責任感が強い

・完ぺき主義

・人からの評価が高い

・道徳観も強い

と言われています。

人からの依頼を断れずに、たくさんの仕事をかかえ込んでしまったり、柔軟に臨機応変な対応が出来ずに自分を追い込んでしまったり。結局は、ストレスをため込んでしまって、こころのバランスを崩してしまうこともあるようです。

だから、自分がボロボロになるまで、いや、ボロボロになってからも更に頑張ってしまい、ついには精神疾患にかかってしまう。

人からの評価も気になるのでストレスが極地に達し、不眠症になり、やがては体調を大きく崩して初めて自分が精神疾患にかかったことに気づきます。

自分も去年の春ごろから、フィリピン現地の支社長という重責を任され、強いストレスからか不眠に悩まされるようになりました。その後1年以上、睡眠薬を飲みながら「無理して」激務をこなしていましたが、ついには睡眠薬も効かなくなるくらいの強いストレスを抱え、そこに更にコロナウイルスによるロックダウンで営業活動ができなくなり経営状況が悪化、という状況で、ストレス度合いは完全にメーターを振り切ってしまいました。

今年の6月中旬、その中でZoomミーティングをしていた最中に、ついに気を失ってしまいました。現地従業員によれば、Zoomで私の名前を何度も呼びかけ、携帯を何十回も鳴らしたらしいのですが、その間も気絶していた状態。約1時間半後に目が覚めたようなのですが、その間のことを全く覚えていません。

その後は自分が経験したことのないくらい強い倦怠感や「もう人生どうなってもいいや」という感覚で、食事を作ることはおろか、シャワーを浴びることすらやらなくなり、ベッドとトイレを往復するだけの日々。

「死にたい」とすら思えなくなっていました。

「外に言って空気を吸ったほうが良い」と現地医者から言われました。しかし、体がほぼ動かなくなります。

食事をしたいとも思えなくなり、3-4日間何も食べていなかったと記憶しています。

もはや、心はもちろんのこと、「体すら言うことが効かなくなる」状態でした。

この時点で仕事に復帰することは困難ということ、また医療環境がより充実している日本に移った方が回復には良い、と判断し、休職と日本帰国を決断しました。

私だけでなく、多くのうつ病患者が、似たようなこと、もしくはそれ以上のことを経験していると思います。もはや、「廃人状態」となってしまうのです。

今まで自由に出来ていたことが、ほぼ出来なくなってしまうもどかしさ

本当は仕事を始め、頑張りたいことややりたいことがたくさんあるのに・・・心も体も言うことがきかないので、やりたくてもできなくなる。大きな病気や怪我をしてしまえば、最初から諦めもつくのですが、「やれる可能性がありそうなのに、できない」というのは、なかなかしんどいものです。

しんどさ②:「働けなくなり、一般社会から隔離される」

前述の通り、私は休職を決断せざるを得なくなりました。

同僚や部下からすれば、私は「突然現場から姿を消し、フィリピンから離れてしまった」状態です。

そう、精神疾患にかかると、突然休職になるケースが多く、社会から「突如姿を消す」のです。

姿を消した後は、基本的には自宅で療養したり、自然の多いところに行ってボーッとしたり、医者に診察してもらったり、のんびりすることが多いです。

本当は仕事を頑張りたいのに、それができない・・・仕事を残してしまって申し訳ない・・・

そう思い始めると、良くなることもなかなか良くならないので、なるべく思わないようにはしていました。

しかし、特に最初のうちは、社会から隔離された疎外感と付き合っていくことになります。

そして、多くの方は、残念ながら社会復帰がなかなか叶わない状況に陥ります。精神疾患に対する偏見も多く、転職活動をしたとしても、なかなか受け入れてもらえない現状もあります。

しんどさ③:分かってもらえない

他の病気と同様、「なってみないとそのしんどさが分からない」のが精神疾患の特徴です。

前述の通り、見た目では「病気になっているかどうかが分かりづらい」病気なので、なかなかこのしんどさが分かってもらえません。

休職して休んでいると、やがて家族や周辺から「そろそろ仕事したら?」とか「ブランク長くなると後できつくなるよ?」などと言われたりします。

中には、「本当にまだうつ病なのか?ただ休みたくて休んでいるだけじゃないのか?」「サボっているだけなんじゃないの?」などと辛辣なことを言ってくる人もいます。

サボりたくなくて、頑張りすぎて、この病気になってしまったのに、、それが分かってもらえない。。

ストレスがメーターを振り切ってしまったのに、分かってもらえない、という新たなストレスとの戦いをこなさなければならないのが、精神疾患あるある的なしんどさです。

しんどさ④:完全な治癒が困難(というか不可能)

暗めのタイトルで申し訳ないですが、これが現実です。

一度精神疾患にかかると、「完全な治癒」というのが困難、というか、不可能である、と言われています。

精神疾患は再発の可能性が極めて高い病気で、症状が出にくくなる「寛解」というレベルまで持って行くことは可能ですが、「完全な治癒」は医学的に不可能である、と言われています。

寛解状態になっても、病気が復活してしまう人もいます。

現に、私も10年以上前にパニック障害を発症した後、寛解状態になったこともあって海外移住という大きな挑戦に出ましたが、帰国後、10月下旬に食事中に急に呼吸困難に陥り、救急車で運ばれました。結局、これは寛解後のパニック障害の再発でした。

患者は、まずこの「2度と元の自分に戻れることはない」という現実を受け入れることを求められます。

精神疾患になるということは、デッドラインを越えてしまい、後戻りができなくなるようなものです。なので、精神疾患の一歩手前、という人は、「絶対に越えてはならない」ラインの目の前に立っているようなものです。

精神疾患にかからないための8つの予防法

さて、ここまでしんどさについていくつか話してきましたが、ここからは「精神疾患にかからないためには何をすべきか」をお伝えします。これは、もはや「精神疾患にかかる前の自分に対してのメッセージ」、または、来世もし自分がまた人間として生まれてくるなら、「来世の自分へのメッセージ」と言えるかもしれません。

①しんどさを少しでも感じたら、すぐ休め!

繰り返しですが、精神疾患はデッドラインのようなもので、一度そこを越えたら後戻りできません。

少しでもしんどさを感じたら、遠慮なく休みましょう。休むべき時に休まず働けば、「忙」の状態に。つまり、「心」を「亡」くすと書いて「忙」となるわけて、どんどん心を病んでいきます。

②環境を変える勇気が必要な時もある!

仕事において、成果を出すことや自己肯定感を得るために、重要です。ただ、それと「自分に今の環境が合っているかどうか」は別問題。

何をどう頑張っても成果が出ない、という状態が一定期間続いたなら、もはや環境の変化を検討する必要がありそうです。

フィリピンという文化も習慣も全く違う国において、「これ以上ないくらい」本気でビジネスに取り組んだことは、素晴らしい経験になりました。

しかし、こんな状態(うつ病)になるまで頑張る必要が果たしてあったのかな?本当に自分に向いている環境だったら、こんなに頑張らなくても成果は出たんじゃないだろうか?

もっと早い段階で環境を変えておけば、こうはならなかったのではないか?というのが正直な気持ちです。

③「やるべきこと」と「楽しいことや好きなこと」のバランスを取れ!

フィリピンでは毎日激務に忙殺されていました。今思えば、「楽しいこと」や「好きなこと」は、ほとんどやっていなかった気がします。

「やるべきこと・仕事」が99%、「休息」が0.999%、「楽しいこと」は0.001%程度だったかと。

これでは誰だってメンタルを壊します。

仕事は生きていくために大切です。僕は巷で言われている「好きなことだけやれ!」というのは非現実的すぎるので、言うつもりはありません。

ですが、日本は仕事を美徳化しすぎているのは事実。「ちょうど良いバランス」を見つけるのが重要かな、と思います。

④朝、日光をしっかり浴びろ!

これは今も治療の一環としてやっていることです。

うつ病をはじめとする精神疾患は、セロトニンという脳内ホルモン(人が幸福感を感じるホルモン)が減少してしまうことにより、倦怠感や頭痛、吐き気、その他の症状として出てきます。

精神疾患からの回復を行う際は、このセロトニンを増やす行動を起こすことが極めて重要です。

増やし方には色々ありますが、一番おすすめと言われるのが、「朝散歩をすること」です。

起きてから1時間以内に朝散歩をすれば、日光を浴びることでセロトニンが活性化されます。そして、約16時間後、それがメラトニンという睡眠の質を高めるホルモンの分泌を促し、質の高い休息を与えてくれます。

⑤週2時間程度運動をしろ!

特に有酸素運動を行うことにより、セロトニンが活性化すると言われています。目安としては週2時間程度。

⑥1日最低7時間は寝て、入眠90分前までに入浴を済ませろ!

質と量の高い睡眠は、人生において必須です。

うつ病患者の殆どは、発症前後で不眠症状を訴えています。

睡眠は細胞を回復させるための唯一の機会。最低でも7時間は寝ないと、脳が活性化されず、翌日のパフォーマンスにも影響します。

また、入眠90分前に入浴を済ませることも重要です。入浴は副交感神経を優先させ体をリラックスためには必須。40-41度のお湯に15分程度浸かると、体内温度が下がります。その後約90分後に上がり始めるのですが、そのタイミングで入眠をすることで、入眠後約90分で睡眠の質が最高レベルに達すると言われています。

毎日の睡眠に質と量を求めることにより、翌日のパフォーマンスを上げるだけでなく、うつ病を始めとする精神疾患の予防にも繋がります。

⑦瞑想する

Googleなど、大手メガIT企業などが積極的に取り入れている「マインドフルネス瞑想」が、日本でもだんだん定着し始めてきています。

マインドフルネス瞑想は「今この瞬間に集中する」ために行いますが、「過去や未来に囚われすぎない」ことは自己肯定感や幸福感を増加するために極めて重要と言われています。

また、深呼吸を瞑想中に取り入れることによって、脳内に酸素をしっかりと送り込み、副交換神経を優先化させてリラックス効果を高めてくれます。個人的には入眠前に行うことで睡眠の質が向上したと実感しています。

*上記④〜⑦は、以下文献を参考にしました。

⑧幸福のハードルを思い切り下げる

精神疾患にかかる方の多くは、今の自分に「足りない」ことにばかり目を向けがちです。「自分は大したことない人間。だから頑張る」と言って前に進んでいくことを優先しがち。

ですが、「今の自分も十分に幸せ」と思えないと、ずーっと「満たされていない」状態を自分の中に作ってしまいます。

僕もまさにそうで、「年収XXXXを稼いでいないから」「まだ自分の目標が達成できていないから」と、「足りないこと」ばかりに目がいってしまってばかり。

しかし、うつ病にかかってからは、今までとは逆の発想で、「今の自分も幸せだし、何なら何か成し遂げていなくても無条件に十分幸せ」と思うようにしていきました。

何故なら、うつ病にかかると、前述のとおり、今までできなかったことが思うようにできなくなるので、外に散歩に行けた、というだけでも嬉しい気持ちになります。

もしかしたら、うつ病は、そういう些細なことでも幸せを感じてもらうよう、神様が自分に与えてくれたギフトだったのかもしれません。

まとめ

精神疾患にかかってしまった方へ

かかってしまったことを悲観せず、自分が「今日、今この瞬間に、出来ること」に集中してみてください。過去や未来を悲観しないことが重要で、精神疾患にかかったとしても、生き続けていくことは出来ます。

むしろ、みなさんは素晴らしい能力やポテンシャルがあるから「こそ」、この病気にかかったのではないでしょうか。きっと、「これだったら多くの人がなかなかできないだろう」というものを持っていらっしゃると思います。

それをひたすらやり続けて、伸ばし続ける。日々それに実直に地道に取り組むことに集中する。

それを重ねることで、もしかしたら今まで想像しなかった自分に会えるかもしれません。

精神疾患の一歩手前まできている、と実感している方へ

あなたに必要なのは、とにかく「休むこと」です。すぐにブレーキをかけて、休んでください。

何度も言いますが、精神疾患になってからでは、遅すぎます。自分が上記に書いたような「しんどさ」を経験するハメになります。

それをしたくなければ、今すぐ休んでください。あなたが今ここで休職したり休んだとしても、必ず誰かがカバーしてくれます。世の中はそういう風に出来ているので、心配せず、何も考えず、とにかく休んでください。

そして、出来るだけ好きなことをやるようにしてください。後先はあまり考えず、遠慮なく好きなことに取り組んでください。

精神疾患にかかった方のご家族や周辺の方々へ

以下のような言葉は絶対使わないようにしてください。

・頑張れ

・仕事どうするの

・サボってるだけじゃない?

そして、以下のような言葉をかけてあげてください

・今まで良く頑張ったね、もう頑張らなくていいよ

・仕事は何とかなるから、心配せずに休んで

・好きなことをどんどんやってみたら?

これ以上、自分が経験したような精神疾患を経験する方が増えないよう、祈っています。

今年はあまりに激動すぎる年になりました。そして、多くの方々が、頑張りすぎるほど頑張って来られたと思います。

なので、みなさまが少しはホッとできるような、穏やかな新年を迎えられますように。

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