ジェネラリスト路線のWebマーケターは組織に馴染みづらいのかも?と感じた話
コロナ禍で自分の人生こんなもんなのか?と自問自答をした末…勢いでフリーランスへと転身することになったUtoです。
やりたいことは沢山ある中で、今自分にできる生き残る術は直前まで勤めていた「Webマーケティング」しかないと思い、現在はWebマーケターとして活動を始めました。
私がフリーランスになるしかない!
と決心したのは「やってみたいこと」を叶えるために行動しよう!と思い立った…というのも本当のことなのですが、実は転職活動中に「自分のようなタイプのWebマーケターは組織に属するのが難しいのではないか?」と確信せざるを得ない気づきを得たからなんです。
正直私はWebマーケティングという業界に対して一番落胆している部分があります。
ぶっちゃけ愛がない!!
お客様への愛がないWebマーケターが溢れかえりクソみたいなプロモーションやコンテンツを大量に量産するだけ。しかも対して改善施策とかしないんですよね。
SEOならSEO、広告なら広告と専門領域だけで話して「お客様のビジネスがどうすれば良くなるのか?」を全体から俯瞰して見ることはせず、小さい領域だけで話を進めることが現状…と酷いものです。
「分業制」という効率化による弊害が質を悪くしている要因だと私は推測しています。
課題に対して施策を同じ視点で考えられない素人集団をプロフェショナルと呼んでいる企業が多い中で、私は一部の手法におけるスペシャリストではなく、全体を俯瞰して見れるジェネラリストになりたいと思い会社員時代は奮闘していました。
その結果、企業からは絶妙に扱いにくい人材となってしまいました…
Webマーケティング業界の現状
Webマーケティングってぶっちゃけ何?
と、聞かれたら多くのマーケターは「Web領域におけるマーケティング活動」と答えると思います。
では「マーケティング活動」とは何を指すのでしょうか?
アメリカ・マーケティング協会ではマーケティングの定義を以下と述べています。
マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。
出典:American Marketing Association
日本マーケティング協会も同じくマーケティングの定義を述べており、1990年に以下の様に公表されています。
マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。
出典:日本マーケティング協会
つまりマーケティングとは「モノが売れるための仕組み」を意味し、マーケテイング 活動は「モノが売れるための仕組みを作る活動全般」を指します。
Webマーケティングはその広いマーケティング活動の中でも「Web(インターネット)領域において、モノが売れる状態(仕組み)をつくり出す活動」となるわけです。
WebマーケターはWebという領域において顧客との接点を創出し、商品価値を伝え、購入に至るまでのサポートをし、購入後のケアまで行うことを専門的に行うスペシャリストとなるわけです。
一般的に以下の広範囲における活動がマーケティング活動の対象となります。
活動を指します。
全体商品の企画・開発・設計からブランディングに至るまでの一連の活動、市場調査・分析、商品の価格設定、広告・宣伝・広報活動、販売促進、流通、マーチャンダイジング、店舗・施設の設計・設置・経営、営業、集客、接客、顧客の情報管理、情報発信、コンテンツ作成、イベント、コミュニティ開発など「モノを売るための仕組み」に関わる「認知」「興味・関心」「購買意欲の促進」「情報取集」「購入」「シェア」
Webマーケテイングにおいても同じことで取り扱うソリューションは広範囲に及び、その全てを個人で扱うことは難しいでしょう。
主なWebマーケティングのソリューションは以下が当てはまります(手法含む)
Webサイト設計・UI/UX設計・デザイン・コーディング、SEM(SEO、リスティング広告、DSP、動画広告など)、SNSマーケティング、コンテンツマーケティング、メールマーケティング、Web接客、ブログ、アフィリエイト、YouTube、アプリ開発・運用、解析・分析(アクセス解析、ヒートマップ、ABテスト、レポーティング)MA…など
手法も含めWebマーケティングの世界は広く深く、近年ではWeb領域をさらに拡大したデジタルマーケティングと定義されビックデータやIOT、AI、VR・AR・MRの様なXR、O2O(Online to Offline)、位置情報、CRMの範囲拡大、天候データ、行動データなど領域は拡大していき、データを取り扱う全てに対して〇〇マーケティングの様な形で新しい用語は日々登場している状態です。
なので、この幅広い領域の中で専門性を磨き、スペシャリストとしてマーケティング活動に貢献することは理にかなっていますし、企業も専門性を高めるためにスペシャリストを育て、作業ごとに分業制にして組織として運営をしています。
ただ、近年Webマーケティングの領域は少し前までは隣接していながらも距離を保っていた各ソリューションが混ざり合い「一つの視点」だけでは企業のマーケティング活動を発展させることができなくなってきました。
例えばGoogleやYahooの検索エンジンに対して上位に表示される様に対策をする「SEO」という領域も近年ではユーザーの検索離れやネットリテラシーの向上、更には悪質なコンテンツの大量生産を受けてのGoogleのコアアルゴリズムのアップデートを受けて「非常に難易度の高い領域」になりつつあります。
検索結果が上位になっただけではマーケティング活動は完了せず、その先のサイト内での行動やユーザー体験こそ重要視されるようになりました。
この「ユーザー体験」は1つ2つの手法を専門的に扱えるだけでは対応できず、実際必要となるスキルは多岐にわたるのが現状です。
分業制による中途半端なスペシャリスト集団は本質的ではない
SEO=Webマーケティングと認識されるほどSEOは代名詞の様な存在ですが、実際はSEO対策をして検索エンジンで上位をとるだけでは売り上げには直結しなくなり、従来のSEO担当者の対策範囲ではなかった「広告との同時運用」「デザイン」や「UI/UX」「SNS」等の他チャネルとの兼ね合いなど多岐に渡る様になりました。
求められるスキルや経験も「ディレクション」「KW選定・調査・効果測定」「ライティング」「記事企画・編集」「分析スキル」「HTML \CSSのコーディングスキル」「定性分析」「デザインや導線改善」「広告の知識」「アフィリエイト」「メディア運用」など広範囲となり、実際にそれらを念頭においていないと適切な提案ができない状態になっています。
ロジカルシンキングや仮説思考といった思考スキルも重要となり、求められる働き方もコンサルティング、プランニング、ディレクションと多岐に渡り、クリエイティブに関するスキルまで必要となるようになりました。
Web広告の担当者に関しても同じでリスティング広告、ディスプレイ広告、DSP、SNS広告、アプリ広告、Amazon広告、動画広告など多くの種類があり、さらに出稿する方法も多岐に渡り「リマーケティング/リターゲティング広告」「インフィード広告」などそれぞれ特徴を把握した状態で広告を作成する必要があります。
最適なプランニングをするには運用スキルが必要になりますし、運用するにはプロモーションのプランに関して認識のズレがない様に運用する必要があります。
アフィリエイトやPR活動なども担当範囲になると、必然的にSEOや広告の知識も必要となりますし、広告を運用する際にはその商材に対する深い知識や企業の強みなどを抽出し短い言葉に落とし込む能力も必須となり、数値を追うだけでなく様々な角度から多角的に現状を見る能力が重要です。
また、広告の運用は何度が高く現在多くのユーザーは「広告嫌い」な状況です。そのため不快感を与えずに適切なユーザーへ広告を届けるとなると広告担当者もまた多くのスキルを求められ「検索傾向の調査」「ライティング」「デザイン」「LPの導線設計」「アクセス解析」「SEOやSNSの知識」「UI/UX」など幅広いスキルが必須な状態です。
しかも実際にはSEOと広告は現在はどちらか一つだけを行えば良いわけではなく、両方とも同時に進める必要があります。
つまり広告もSEOも同等のレベル感で知識を求められ経験を求められる状態になっています。
そのため各ソリューションのスペシャリストのチームを結成し、チーム単位で動くことがWebマーケティング活動の理想形態であることは疑いようがありません。
そして、そのスペシャリストチームは他の領域に対しても「ある程度知識と理解力がある」状態が好ましく、共通の目標に向けて行動する連帯感が重要になります。
実際に多くの企業では分業制を採用していますが、現状は各フェーズ単位でのスペシャリストで自身の担当範囲以外は無知という結果的に狭い視野でしか物事を見れないマーケターが大量生産されるのが現状です。
それが無駄に多い会議や効果のでない施策、ソリューションの横断ができない組織などの課題を生むことになっています。
更に多くのWebマーケティング支援会社は一つのソリューションに特化した専門性の高い組織形態となっており、SEOならSEOの業務に特化したスペシャリストであることが多いです。
そしてSEOの事業会社はSEOの中で作業を分業化しているので、表向きではSEOのスペシャリストのチームで動いているとアピールするも内情は中途半端で各領域でのみ専門性のある人たちの集合体で、それぞれが互いの領域を知らないので「残念な施策」しか打てない状態になっているのです。
しかもSEOだけで、他の領域は素人当然です。
仮に複数のソリューションを取り扱っているWebマーケティングの支援会社があったとします。
Web戦略におけるプロジェクトで別領域を扱う専門家たちが同じ認識で「同一のKGI」に向けて施策を進めれているチームは稀で、それぞれの専門家が互いの領域の視点でのみ話を進めるので穴だらけのWeb戦略が生まれます。
本来Webマーケテイング活動は多角的な視点からユーザーの行動フェーズに合わせて複数のWeb施策を一つのKGIに向けて運用していくことが重要なはずです。
残念なことに現状はそうならずに中途半端な専門領域を持ったマーケター大量生産しているだけの支援会社が多い状態なのです。
ジェネラリストはノイズを生み出すため組織に馴染みにくい
私はWebマーケティングの支援事業部に所属しましたが、偶然にも一つの分野に特化した専門家としての道を最初から歩みませんでした。
運よく同タイミングでSEO、広告、サイト改善、アクセス解析、EFO、LPO…と言った複数のソリューションを扱う案件に入社当初から担当することになり、未経験スタートだったため最初からWebマーケティングに対して覚えることが満載になり、日々業務内で新しいことをやり続けるという状態からスタートしました。
元々前職が人と話す仕事をしていたのでアカウントプランナーの様な動きもすることになり、「ヒアリング→提案→分析→指示書作成→効果測定」と言った一連の流れをSEO、広告、サイト改善のコンサルなど幅広く担当することになったことから、スペシャリストではなくジェネラリストの道を歩むことになりました。
実際相談を受けた際にジェネラリストの思考だと「効果が出やすそうな施策」というのを広い視点から提案できるのでかなりお客様受けは良くて、相談される頻度はかなり高かったので需要がありました。
「SEOよりも商材的に広告も始めた方が良いかもしれない」
「今回のコンテンツSEO施策はSNSとの相性も良さそうです」
「今やってるコンテンツSEOの記事を使って広告回してみますか?」
「数値傾向的に先に改善すべきは集客よりもフォーム周りになります」
具体的に複数の手法を使用した改善案の会話をすると、KPI達成に対して少ない予算でも確実に効果が出る施策から入れるので結果的に長期的な付き合いになりやすく、信頼関係も生まれるので案件獲得率も上がることに気付きました。
なので、私はこの知識や経験はスペシャリストには及ばずとも、ジェネラリストとしての広い視点で提案から実装までサポートできることは強みになると思い新たなステージを求めて転職活動をしました。
しかし、私の様に幅広く全ての工程に携わってしまうと分業制との相性が悪く、効率化を求める企業からするとプロジェクトに対して多角的に見れるからこそノイズになりやすいため、相性の不一致が続きました。
ジェネラリストに近い思考になると全ての工程に筋が通っているのか否かが気になってしまい、「本当にその施策が100%良い方向に向いているのか?」と考えてしまうことや、ついつい介入してしまうことから歯車を乱してしまいます。
お客様のパートナーでいたい私と、分業制によるスペシャリスト集団はウマが合わないと分かった瞬間でした。
結果的に私はWeb接客ツールの運用の会社に転職し、CVの最適化やツールの運用方法を学んだのち現状の危機感やコロナ鬱による感情の爆発で退職してフリーランスに転機することになりました。
私はWebマーケテイングという世界が好きだからこそ、ご一緒する方には成功して欲しいし、自身も全てのスキルを100%かけて挑みたいと思っていたので組織は息苦しく感じてしまったのだと分析しています。
私は分業制を否定するつもりはありません。
しかし、利益を重視し、効率化のために教育をしない企業が多い中、自身の領域でしか育たない分業制の組織はWebマーケ界隈を滅ぼすと思います。
そして利益重視の組織が増えていくと、ジェネラリストのWebマーケターは組織に所属しにくくなり去る道を選ぶことになります。
私は去った側の人間ですが、今はフリーランスとして自身の知見を生かして活動ができていることが幸いです。
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