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価値のあるアクセス解析とは「意思決定」を促すことである

アクセス解析は対象のWebサイトの目標(主にCV数やPV数、広告クリック数など)を達成するための課題を見つけるために、サイト訪問者の特性や行動、訪問経路、デバイスなどを分析することを指します。

Webマーケティング活動を勤しむ中、アクセス解析は切っても切り離せないほど非常に重要な要素です。

私は普段、フリーランスのWebマーケターとして事業者さまのWebマーケティング活動におけるのサポートをしておりますが、アクセス解析はどの事業者さまとご一緒させていただく時も必ず行います。

事業者さまのサポートを行う時に過去の施策傾向を教えていただく際に過去のレポートを見させていただくことがありますが、時々「数値を可視化しているだけ」のレポートを見ることがあります。

アクセス解析で広大で把握し難いデータを取りまとめて視覚化することも重要なスキルです。しかし、それだけではアクセス解析としては不十分です。

数値傾向をまとめるだけのレポートは「あーなるほどね」とWebサイトの傾向は分かりますが、「で、それでどうしたら良いの?」とそのさきが提示されていません。

価値のあるアクセス解析とは「意思決定」を促すことです。

分析によって視覚化された数値傾向を元に、抽出された目標達成の妨げとなっている課題に対して、問題解決となる改善案や施策を導き出し、次の行動への意思決定を行う判断基準になることが「アクセス解析」の真の役割になります。


アクセス解析とは何か

アクセス解析:Webサイトのログデータを元にサイト訪問者の特性や行動を分析することで、分析した結果を元に抽出された課題を改善することが目的である。

Webマーケティング活動を行う中でアクセス解析はWeb施策を実施する上で最も重要な要素の一つです。

アクセス解析を行うことで例えば以下のことが分かります。

①ページの閲覧数や訪問者数が分かる
②サイトを閲覧しているデバイスが分かる
③サイトやページの平均滞在時間が分かる
④どのチャネルから訪問開始したのか分かる
⑤どのページから訪問しているのかが分かる
⑥直帰率や離脱率などユーザー行動が分かる
⑦新規ユーザーかリピートユーザーかが分かる
⑧ユーザーの性別や地域、年齢や環境などが分かる
⑨「いつ」「誰が」「どこを見て」CVしたかが分かる
⑩指定した期間で比較することで施策あの変化が分かる

アクセス解析をすることで「いつ」「誰が」「どこから」「どのページに」「どれくらい」「何をしたのか」といったユーザーの行動を、数値傾向からサイトの「目的・目標」に対して適切な役割を果たせているか、改善点があるかを分析することができます。

アクセス解析は「現状の状態の確認」「Web施策の効果測定」「課題の抽出」といった目的のために行われ、どの目的でも共通して「ボトルネックの発見」が分析結果として現れます。


レポートの役割

アクセス解析を行う際に作成することが多い「レポート」ですが、レポートとは何のために作成するのか考えたことはありますか?

広告運用でもSEO対策における順位傾向でもアクセス解析でもレポートを作成する意味は同じです。

レポートを作成する目的を大きく分類すると以下の5つに分けられます。

① 現状の状態を可視化するため
② 課題改善における仮説を検証するため
③ 施策の進捗を記録し、関係者に共有するため
④ 目標に対する課題を仮説立てのヒントのため
⑤ 共通認識として議題をスムーズに進めるため

レポートを作成することで複雑で専門知識の必要なWebマーケティング活動を分かりやすく翻訳し、目標達成に向けた施策の結果や検証を同じ言語で会話することができるようになります。

レポートにはデータの「翻訳」を行う役割を担っていて、解析した数値を共通認識できるレベルまで翻訳し、施策を前進させることがレポートが持っている価値になります。

質の高いレポートにはWebマーケティング活動を前進させる力があり、それはアクセス解析のよって分析されたデータを翻訳し、分かりやすく通訳してくれる機能が備わります。


アクセス解析は必ず次のアクションに繋がる必要がある

アクセス解析を行ったことで、数値傾向を可視化し、課題に対する仮説を立てたとしても「次のアクション」へと繋がらなければ数値を見ただけになってしまいます。

Webマーケティング活動は地道な改善の積み重ねです。

例えば文字サイズの調整や画像サイズの変更、HTMLやCSSの最適化、文言の変更、リンクの追加、ファーストビューに掲載する情報の変更、ボタンの色の変更、配信する広告の単価調整、ページの見出しの変更など細かい部分の改善を繰り返していきます。

SEOやWeb広告と聞くと派手で難しい印象を抱く方もいますが、実際は小さい調整の積み重ねで、改善は非常に地味なものです。

Web接客ツールを導入したとしても、最初は派手で大きな改善へのテコ入れに見えますが、導入後はユーザーの行動に合わせて接客のシナリオを細かく調整して最適化するものです。

アクセス解析を行った際は、必ず何かしらのアクションに繋がらなければ意味がありません。

① 期間、デバイス、チャネル、CVの有無などで行動の比較をする
② ユーザー行動における差異がどこにあるのかを調べる
③ 差異を見つけたら実際にサイトを閲覧してみる
④ 課題が発生していそうな要素を探す
⑤ 課題と思われる箇所を仮説立てする

例えば、上記の手順でアクセス解析をした結果、申し込みフォーム画面での離脱が多いことに気づいたとします。

実際にサイトを閲覧してみるとナビゲーションやフッダーが設置されており回遊できる状態になっていました。

数値を見るとフォーム画面から「サービスページ」に回遊している傾向にあることが分かったため「ユーザーはフォーム画面内で離脱するのはナビゲーションなどで再確認のためにサービスページへ遷移し、そのままフォームに戻らず離脱しているのではないか」と仮説を立てたとします。

この時にできる改善施策として「フォーム内のリンクの撤去」と「フォームに到達する以前にサービスページを閲覧してもらい理解してもらうためのコンテンツ作成」を上げました。

あとは実際の定例会でアクセス解析によって抽出された現状の状態と目標達成に向けた課題の説明、そして改善への仮説と施策の提案を行い、次のアクションを促します。

実装後、期間を置いて効果測定を行い、その際にまだ課題が見つかれば別の施策を実施する…といった形で改善のサイクルを回すことがアクセス解析では重要になります。


定性分析の重要性

数値傾向を見ているだけではWebマーケティング活動の活性化は行えません。ユーザーと接点を持つ瞬間や行動に移すタイミングでは数値では見えてこない「感情」の部分が働くからです。

改善提案を行うのであれば、デザインや利便性なども考慮した提案が必要になってきます。

アクセス解析だけではなく定性分析(ヒートマップ分析、ヒューリスティック分析、ユーザーテストなど)と組み合わせることによって仮説の質は向上し、より効果の出る改善を行うことができるようになります。

数値傾向は変化していなくても、ヒートマップ上ではスクロール率が増加しているのであれば、定性的な変化が表れたと言えます。

仮説の精度を上げるなら「定量分析+定性分析」の組み合わせを行い、Webマーケティング活動におけるイシューを見つけ出し、施策に落とし込むことで改善の速度も上がっていきます。


まとめ:行動に繋がらない分析に意味はない

アクセス解析を行いレポートを作成した時、「各指標を見やすくまとめただけの資料」をよく見かけます。

混沌とした数字の羅列を見やすく可視化することは大変重要なスキルです。しかし、可視化しただけでは何も生まれません。

アクセス解析を行う際は、その後のアクションへ繋がる一手を生み出さなければなりません。

現状の把握をし続けても、次へ次へと進まなければ停滞してしまいます。

「意思決定」ができるようなアクセス解析を行うためには「問題点」の発見と、課題に対する仮説を立てること、そして仮説を実証し改善へと導くことが大切です。


おまけ:アクセス解析について学べる良書の紹介

基本的なアクセス解析の考え方を学べる書籍を紹介いたします。

使用するツールが変わっても基本的な考え方は変わりませんが、紹介する書籍はGoogleアナリティクスがメインとなります。

Googleアナリティクスは現在「Googleアナリティクス 4 プロパティ」として大幅なアップデートがされたため、GA4を利用している場合は参考にならない部分もあるかと思います。

ただし、ほとんどのサイトは従来のGoogleアナリティクスを使用しているため、参考になることは多いと思います。


■現場のプロがやさしく書いたWebサイトの分析・改善の教科書【改訂2版】

分析・改善を行う際にサイトの特性や施策ごとに「注力する指標」は異なります。

本書はどのアクセス解析ツール利用している方でも参考になること間違いなしの一冊なので手元に置いておく価値はあります。

私も様々なシチュエーションに対応するために何度もヒントをいただいた本です。


「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本

本書はGoogleアナリティクスを扱う人も手元に置いておきたい書籍ランキングがあればTOP3に入るのではないかと思うほど分かりやすい参考書です。

特にオススメなのが「序章:サイト分析のプロセスを理解する」で、この序章がアクセス解析において最も大切なことが書かれていますので、一読の価値ありです。


■デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?

「AIアナリスト」を提供する株式会社WACULの垣内氏の著書で、「AIアナリスト」にはお世話になったWebマーケターも多いのではないでしょうか?

本書は賛否両論を産んだ内容で過激な言い回しもありますが、「デジタルマーケティング」という視点であればかなり参考になります。

無駄を省いたWeb施策の考え方は参考になるため、オススメです。


■イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

本書は「問題解決」における名著で、個人的に何度も助けられた一冊です。

「イシューを見つける」という考え方はアクセス解析においても同じです。ここが抑えられているかいないかでWebマーケティング活動の加速度は変わってくると思います。

10年前の書籍ですが色褪せることなくヒントを与えてくれるかと思います。


【パーソナル】
名前:Uto a.k.a. ペイントペインゆらめき
職業:Webマーケティングコンサルタント
趣味:サウナ、アート鑑賞、一人旅、音楽Dig
特技:和太鼓、フットワークの軽さ

【連絡先】
メールアドレス:yy.edih.xx@gmail.com
Twitter:@hd2OimM
何かご質問等あればお気軽に連絡くださいませ。



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