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読書感想文

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#短歌

ひとなみ/ひとなみ(藤波えりか、金森人浩)

ひとなみ/ひとなみ(藤波えりか、金森人浩)

フォロワーの藤波えりかさんが携わっているというので、探してゲットした歌集。藤波えりか、金森人浩の短歌ユニットで「ひとなみ」というらしい。名前からとったユニット名だろうか、等身大で生きている感じが出てとてもよいですね。東京の文学フリマで買ったのですが、その時は可愛い栞や冊子もついてきてうれしかったです!

内容は自由詠やテーマ詠、相聞歌やいちごつみなどを含む140首。なかなか面白く読ませていただきま

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やわらか視線論/完全にもうやめた

やわらか視線論/完全にもうやめた

前回に引き続き、おしまいさんと笹沼鹿さんのユニット「完全にもうやめた」の歌集をゲットしたので、感想を書こうかなと思います。まず表紙が美しい。ビルの影になった歩道橋に、淡いイラストの女の人が立っている。写真の上から絵の具を落としたような色が重ね合わさり、柔らかな景色を幻出させている。目を引いた歌をすこしピックアップして見ていこうと思います。

目の前の喧嘩に目を奪われて、日常の感情部分を置き去りにし

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完全にもうやめた/完全にもうやめた

完全にもうやめた/完全にもうやめた

 文学フリマの会場で、短歌のブース辺りを歩いていてふと表紙が目に留まったので購入。20頁で8篇の65首を掲載。このブースをお二人でやっていらしたが、その二人(笹沼、おしまい)がユニットとして活動されているらしい。

 あ、いいな、と思った短歌がいくつかあったので紹介。

 この生きることと死ぬことの境を曖昧にする表現に惹かれました。補充は生きるための行為、それはそう、しかしそれは酔うためで、入眠を

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天国一丁目/水庭まみ

天国一丁目/水庭まみ

 文学フリマ東京35で購入。
「天国一丁目」、筆者は水庭まみ(@njamena22)

 14篇の詩と、20首余りの短歌が収録されています。
 詩集なのでページ数は40頁と少なめですが、14の詩の14の世界がいちいち新鮮で、緻密に選ばれたその語彙の連なりが、1篇の詩に充分なふくらみと豊かさとかおりと音を吹き込み、夢の球体のようになっていて、たくさんの夢を通過する、そんな感じの読書体験でありまして、

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「エモーショナルきりん大全」雑感、幻視者としての悔悟

「エモーショナルきりん大全」雑感、幻視者としての悔悟

『エモーショナルきりん大全』(上篠 翔、書肆侃侃房 、2021)

フリッツ・ラングを引くまでもなく、ましてや西田幾多郎を引くまでもなく、あまつさえヘラクレイトスを引くまでもないし、もちろんパスカル・キニャールを引くまでもない。別にだれの言葉も引用も必要がない。なぜならここには彼の文字があるのだから。上篠翔の文章がある。だからそれについて語ろう。それ以外のすべては必要ない。少なくとも今は。

なん

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