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投稿欄で落選した詩、自作の詩

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詩誌の投稿欄で落選した自分の詩を取り上げて、自分なりの感想と反省などを書きます。また好きな詩人さんの真似をした詩や日記を収めます。
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『よぎる』

『よぎる』

何かが頭をよぎった気がする

まだよぎったばかりで後ろ姿が
うっすらと見えている

薄暗い朝の食卓のテーブルに
置き去りにされた塩みたい

もしあれがアイデアというものなら
紙に書けば捕まえることもできるだろう

ただの大きな大きな黒い鳥だと言うのなら
黙って見送ることにしよう

もしかすると、おふくろの味
それならまたお盆を待てばいい

右折をする素振りを見せているあいだに
とりあえず日記に書い

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『あらまし』

『あらまし』

もうひとつの方の
あらましが聞きたい
と言うから
もうひとつ目も
ふたつ目もないけど
考えうる
別のあらましを話してみる

するとやっぱり
そこじゃない、と言う

ながい籤が外れたみたいに
あらましを静かに戻して
復活するのを待つ

あくせくしても
しょうがない

母親の寝ぐせを
見てはいけない日がある

そこの部分だと言ったけど
どこのあらましだったのか
ちっともわからない

『楽園』

『楽園』

なんとなく嫌な気持ちだったのは
それを隠していたからだろう
生まれてこのかた本音だったことがない
目を伏せなくったっていい
ヒトが笑顔をつくり続けないのは
その方が本心だからだろう?

楽園があると信じている
それは記憶からくるものなのか
幻想からくるものなのかわからない
楽園じゃない場所にいるのが今で
わたしは私を盲目にする物語の
入口を探している

何度も出口と入口を間違えて
戻れない場所にた

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『糸口』

『糸口』

家のなかって
歩いてるのかな

歩くってのは
もっと
別の場所から別の場所へ
移動することな気がする

家のなかは移動してるんじゃなくて
すり減らしてるんだよ
棚とか壁はそうして古びていく

それは私のせい
というところもあって

身長も顔の形も大きく変わらないし
同じような通り抜けかたをするから
なんだろうな

糸口はもっと大きくした方がいいよ
ってあなたは言う

『月の匂い』

『月の匂い』

夜遅くに家に着く。
家の明かりがすべて消えているから
少しだけ散歩する。

あたりの家の二階の窓から
常夜灯の明かりが見える。
まだ起きてる人がいることに
安心する。人は生まれながらにして
人を欲しがる中毒なんだ
自覚症状がまるでない

見上げると月。
息を思いっきり吸い込むと
少しだけ月の匂い
がする。

聞きたいことを上手に
聞くにはどうしたらいいのだろう。
聞き上手というのでは
それは聞けな

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『夢の愛想笑い』

初めてみる学校の校庭
イベントの後はいつも離れがたく
皆なかなか帰ろうとしないけれど
その集まり方はよく知らない
知らないけれど
一人で帰って
自分がいなくなったあと
何かあったんじゃないかと思う
そのことはよく知っている
きっとそう思ってる子が
校庭から離れられないでいる

こんな特別な日が
どうして特別な日にならないのだろう
いつもと同じように夕方になる

家に着いてからのうたた寝
夢のなかで

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『誰かの赤面』

『誰かの赤面』

わたしは人の言葉に惹き込まれる癖があって、気がつくとよくその人の世界に入り込んでいることがある。

それは夢のようでもあるし物語のようでもあるし現実のようでもあるけど、要するに何だっていいのだ。それが、三つのうちのどれかなんてよくわからない。

このあいだもある人と話していたら、少しづつ景色が溶けていって、わたしはその人の世界にすっかり入り込んでいた。

するとその人のもう一人が私の隣に座って「あ

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『近道』

『近道』

今日は懐かしい近道を通った。懐かしすぎて、その近道はどこからどこへ着くのかを早くしてくれる道なのかはすっかり忘れてしまっていた。ただ遠くに見える山々との距離感とか道沿いに並んでいる畑の野菜の出来栄えがいつも通る道よりも目的地に近づいてるのを早い気分にさせてくれていた。

僕は待ち合わせ場所に向かっている相手にラインをした。「よく覚えてない近道を通ってるから少しだけ早く着くかもしれない」そう言うと「

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『真夜中の郵便夫』

もともとは誰宛でもない日記だったから
真夜中の郵便夫に頼むことにしたんだ

彼、きっと朝方までそこらじゅうを
ふらふらほっつき歩くのだろうね

深夜便の切手を貼ったから
きっと眠りから起こさないように
君の郵便ポストに落としてくれるんだと思う

でもその日記は朝陽と君に弱いからな
早朝には消えてしまうかもしれないから
何を書いたかを教えておくね

おはよう

とだけ鉛筆で書いてあるんだ