【悲恋】💔彼女は突然言った。「わたしのお父さん、関西電力やねん」
当方がまだ24歳のときのことである。
4月1日。
会社の新入社員研修に駆り出された私は、ひとりの可愛らしい、小さな女性新入社員を見つけた。
眼鏡をかけた、ポニーテールの知的で大人しい女性だった。
人事部からもらった資料を見たら、なんと、「大阪府立大阪女子大学」卒業とある。
その後、「大阪府立大学」と合併し、維新のバカどものために、その後「大阪公立大学」になり、いまは存在しない。
・・・
数学が「1」(そりゃあ、毎回、「0点(200点満点中)」だから仕方ない)で、物理と地学が「1」の私は、国公立大学に激しいコンプレックスがあった。
高校時代、「共通一次テスト(国公立大学受験のための第一次試験)」の日、私立一本に絞らねばならなかった「アホな生徒たち」は、1時間目から6時間目まで「自習」という退屈な日をおくった。
1日中、軟式テニスのボールで、素手をバットにして、だだっぴろいグランドで延々と草野球をしていた記憶がある。
あ、途中で、近所のラーメン屋に行って、「学生ラーメン(150円)」を食べたような気もする。
・・・
やがて、私と彼女は、お互いが「#竹中直人」のファンであることを知り、急速に仲良くなる。
「プルプル、プルプル」「・・・なに?」
という竹中直人のギャグで、よく微笑いあった。
そして、いろいろあった。
で、はじめて、彼女の自宅に呼ばれることになった。
玄関のドアを開けると、気の強そうなオバサンが出てきた。
彼女のお母さんだった。
「どうも、はじめまして」
「…就職してから、帰りが本当に遅くなってしまって…」
あまり歓迎されていないような気がした。
こういう性格の人なのかな、とも思った。
靴を脱いで、家にあがった。
彼女の部屋のある2階にあがる前に、リビングがあり、彼女にそっくりの頭の禿げたオッサンが、ソファーに座ってテレビを観ていた。
「あ。どうも、はじめまして。おじゃまします」
「あー、会社の先輩の人ね。よく話を聞いてますよ。ゆっくりしてってね」
お父さんは、大黒さんのような微笑みを浮かべて、手をふってくれた。
この人は、愛想のよい人だな、と少し安心した。
・・・
2階の彼女の部屋にはいって、座布団に座った。
「お父さん、愛想のいい人やねえ」
「出世するのが嫌で、昇進試験を受けないんです」
「ほう、珍しい」
「中間管理職になって、苦労するのが嫌なんやって。お母さん、おかんむり」
私は思わず笑ってしまった。
私と似たところがある人だなと思ったからだ。
中間管理職なんかクソ喰らえ、と当時の私も思っていた。
一生、平社員のほうがいい、と思っていた。
もしくは、フリーランス。
彼女の表情が、突然、真剣になった。
「あのお父さんのことで、秘密にしていたことがあるねん」
「なんや」
「…うちのお父さん、関西電力に勤めてるねん!」
私は、沈黙した。
しばらく考えたあと、
「僕は、原子力発電所は、絶対に反対や。それを推進している関西電力も憎んでる」
「知ってる。以前、トイレの前で北野さん(私の同期の女性社員)と二人で、原発がいかに危険か話してるのん、隠れて聞いてたから」
「さよか」
その頃、私は、広瀬隆の「眠れない話」「危険な話」を読んで、いかに原発が危険かを会社でも広めようと努力していた。
私は沈黙が怖くて、話し続けた。
「もし、ふたりが結婚したら、結婚式には、お父さんの関係で、関西電力の社員の人たちもいっぱい来るやろ。そのとき、僕は演説するで。<いかに原発が危険か!><いますぐ、原発をすべて止めるべきや!>と」
そのとき、彼女の部屋のふすまが開いた。
怖い顔をした彼女のお母さんが、紅茶とクッキーを乗せたお盆を、震える手で持ちながら立っていた。
「帰ってください。理由は聞かずに今すぐ帰ってください」
私の話を全部、ふすまの向こうで聞いていたらしい。
「おじゃましました」
私は、さっさとたちあがり、玄関で靴を履き、駅に向かった。
次の日から、彼女とは一言もしゃべることなく、私は数カ月後、会社を辞めた。
・・・
もし、彼女のお父さんが、日清食品や三洋電機に勤めていたら、いまごろ、私は孫と一緒に家でかくれんぼをしているかもしれない。
人生、すべては「IF」の物語である。
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