世界を切り取れ【短編】
森は緑であふれていた。
芝生に寝転がり、空を見上げる。
快晴。
青空が広がっている。
この青空は、どこまで広がっているのだろう。
無限に広がる空と、自分。
自分がちっぽけな存在のように感じる。
頭の上を、一羽の鳥が横切った。
まるで空を2分割するかのように。
もう一度、空をよく見る。
鳥が横切った軌道をイメージする。
空が2分割される。
もう一度、空をよく見る。
空は、緑の木々の葉で切り取られている。
木々の葉で囲まれた空。
こう見ると、空は有限なのだ。
木々の葉で囲まれた空は、鳥の軌道で2分割された。
人差し指と親指をくっつけて、輪をつくる。
その輪から空を覗いてみた。
空は切り取られている。
輪の中に空だけが見える。
輪をずらせば、雲も入る。
さらにずらせば、雲だけにもできる。
無限に広がる空なのに、自分の指で、切り取ることができる。
しかも、見たいものだけを見ることができる。
世界は切り取れる。
全世界を、全宇宙を、手に入れることは難しい。
しかし、自分が望めば、世界を切り取ることができる。
その世界は、自分のものだ。
苦しい世界を切り取れ。
悲しい世界を切り取れ。
寂しい世界を切り取れ。
ただし、切り取るのは自分なのだ。
輪をつくれ。
輪をずらせ。
輪をのぞけ。
自分の思い通りにしたいなら。
自分で世界を切り取れ。
前回まではこちら。
おひまなら、こちらもどうぞ。
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