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【年齢のうた】椎名林檎●「歌舞伎町の女王」の主人公は15才

今週もあれこれライヴを観ました。

六角精児バンドのインストアイベントで、生演奏を堪能し、サインをもらい。


カーネーションは、ゴツゴツした演奏に浸り。

そうそう、六角さんのトークで「あいつ、カーネーションとツアー廻ってんだよ、一日に7食とか食ってんだよ」と言われた谷口雄くんは、カーネーションのステージで重要な役回りを務めています。

今日の日曜日は、あがた森魚の「ラストタルホピクニック」に参加し、フリーライヴも堪能。ちょっと暑かったけど、たいへんな高揚感を味わいました。

しかし今日の会場?の飛鳥山公園のある王子という街には、果たして何年ぶりに行っただろうか。街の話題や公園のことはテレビでしょっちゅう目にしていたけど。
アスカルゴにも初めて乗りました。かわいい。

にしても王子は街全体がレトロな感じ。それは北区がそうなのか? で、至るところでくり広げられる渋沢栄一押しが想像以上に強めだった。
サンスクエアと、そこの東武ストアが良かったです。家族で喜んでお買い物。

今回取り上げる曲は、椎名林檎の「歌舞伎町の女王」です。

デビュー当時を振り返る椎名林檎


椎名林檎はこのところよくメディアに登場している。ソロでのニューアルバム『放生会』がリリースされたからだろう。

本作の注目は女性アーティストとのコラボで、MVもたくさん作られている。ビックリするくらいに。

そんな中で、こうしたニュースもあった。

シンガー・ソングライターの椎名林檎が、15日放送の日本テレビ系「with MUSIC」に出演。1999年に発表し、現在でも伝説的名曲と称される「丸の内サディスティック」について、「恥ずかしい」「書き直したい」とネガティブワードを連発した。

番組内ではファンからの同曲を絶賛する声が寄せられ、昨年の「JOYSOUNDカラオケ年間ランキング」でも11位にランクインしたことが紹介された。その後、曲が流れると、椎名は「やだ~、本当にもう」とうつむき、「恥ずかしい」と漏らした。

さらに「この曲、20年ぶりぐらいに聞きました」と照れ笑い。MCの有働由美子アナウンサーに「『恥ずかしい』は何でですか?」と問われると、「だって、18(歳)とかのころの日記を出されてる、読み上げられてるみたいな感じじゃないですか」と心境を吐露した。

 いまだに衰えぬ人気を誇ることには「全然、意味がわかんない、歌詞とか本当、もう、書き直したいです」と恐縮しきり。有働アナから「あの歌詞が、今の若い人たちが、今受け取って、今歌いたいって」と言葉を向けられると「ありえない。おかしいです。よく考えていただきたい。『将来僧になって』とか、もう意味がわかんないじゃない」と顔を赤らめながら否定し、「上手に歌えたらカッコイイ」という意見にも「ないよ、ないですよ。すごい変なことおっしゃってると思って」と受け入れなかった。


この番組は僕も観ていた。家事をしながらだったので全部をちゃんとは観れていないが、コラボもあり、かなり華やかな内容だったと思う。

やや脱線するが、「丸の内サディスティック」は先週の日比谷音楽祭で演奏されていた。ハラミちゃんが主役のステージで、スカパラホーンズとともに。
日比谷音楽祭は、亀田誠治がプロデュースしているのである。


こちらは10年ちょっと前、東京事変でのライヴでの「丸の内サディスティック」……じゃなくて、「幕ノ内サディスティック」。さまざまな時のこの曲が観れる。


僕は、椎名林檎とは彼女のデビュー当初からの数年間、よくインタビューで会っていたし、この時期のライヴもしょっちゅう観たものだ。椎名は最初からソングライターとして、さらにパフォーマーとして、非常に優秀で、とんでもないライヴを幾度も見せてくれた。

そんな中で「歌舞伎町の女王」は、ことさら印象に残る楽曲だった。
そしてこの歌には、年齢についての描写がある。

15才という設定が鮮烈さを呼んだ「歌舞伎町の女王」


「歌舞伎町の女王」については、先ほどの番組『with MUSIC』の中でも話題に出ている。
再び記事を引用する。

また、98年に19歳で発表した「歌舞伎町の女王」については、自身の実体験から生まれたイメージが元になっていることを告白。17、18歳ごろに上野のレコード店でアルバイトしている際に水商売のスカウトを受けたことを明かし、「あまりにも、すごい熱心に『すぐ女王様になれるよ』『すぐ儲かる』って。10代の時に。あまり熱心だから、ちょっと想像しちゃったんですよ。『歌舞伎町の女王』がいいなと。名刺もいただいて、それは港区のお名刺だったんですけど、新宿区の方が曲がイメージできるなと」と裏話を語った。


この曲は、歓楽街を背景にした物語の描写が鮮烈である。

主人公は15才。ただ、十五になったあたしを置いて、ということは、彼女は少なくとも14才の頃から歌舞伎町にいるのだろうか?
さまざまな想像を膨らませる歌詞である。


15才という年齢、日本最大の歓楽街である歌舞伎町、さらに歌謡曲的なメロディ。こうした濃密な舞台設定も秀逸だ。
思えば1998年、リリース当時の「歌舞伎町の女王」を聴いて自分がちょっと連想したのは、藤圭子のことだった。そう、「夢は夜ひらく」である。

藤圭子のこの曲については、当【年齢のうた】の最初の頃に取り上げている。

「圭子の夢は夜ひらく」の歌の石碑があるのが、歌舞伎町にほど近い花園神社というのも何かの縁だろうか。
そして椎名は、藤の娘である宇多田ヒカルとこれまでに何度か共演済み。その最新は今度の新作にも収録されている。

話を「歌舞伎町の女王」に戻す。
この歌は、やけにリアルなように感じさせる描写がとても優れている。もちろんフィクションであるとわかってはいるのだが、たとえば九十九里浜やJR新宿駅の東口と、実在する場所を記すことで、ストーリーをさらに増幅させ、濃度を上げる手法がとられている(もっとも九十九里浜や年齢の十五という言葉は、物語性もありながら、譜割りの上でハマるから、つまり語感という観点でも使われている可能性がある気がする)。

そんなふうに、こちら側の脳内を大いにかき立てるほど、映像的で、かつ、色彩感が強い言葉使い。それに加え、野性味を放つ巻き舌気味のヴォーカルの切迫感もかなりのものだ。デビュー当時の椎名は、この巻き舌による唄い方について言及されることが多かった。もっとも、僕もそのひとりだったが。

MVも、くすんだトーンの中に原色の色使いが鮮やかである。と同時に、椎名のホクロにも強いインパクトを覚えたものだ。

椎名のデビュー曲はこの前の「幸福論」(同じ1998年の発表/のちに別バージョンをリリース)なのだが、「歌舞伎町の女王」によって一気にブレイクしたことで、世間的にはこの曲が彼女によるファーストインパクトだと受け取られているはずだ。
あの時からもう26年。時間の経過を感じる。
そして「歌舞伎町の女王」の破壊力は、今もって思い出せるほど、自分の中に残っている。

最後に、この歌の主人公が15才であることに、もう一度触れておきたい。

15才になる前から歓楽街にいて、やがてその歌舞伎町の女王になるという運命を唄ったこの曲。そんな世界観は、エンタメも表現も、何もかもがスマートに、お行儀のいいものになりつつあったあの時代に、非常に大きな衝撃を与えた。そしてこの歌を書いて唄う当の椎名自身がまだ19才だったことも、明らかに普通ではない才能であることを伝えていた。

いろいろと思い出してしまう。19才だった彼女と話したこと。その頃の、小さなライヴハウスでの演奏。
あまり昔話っぽくしたくもないが、ひとつだけ。そのインタビュー取材の移動中のタクシーで、僕は彼女にパラダイスガレージのアルバムを渡したものだった。もう本人も覚えていないかもしれないが。


椎名は今の音楽シーンの最前線で戦い続けている。キャリアを積めば積むほどその才能はさらに巨大になっているかのようで、まったく驚くばかりだ。そしてもはや日本の音楽シーンを代表するほどのアーティストになっている。

これからも自身のペースで、質の高い作品を作り続けてほしい。


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