最近の記事

うつ病

9話目 会社の人事異動で職場が変わった時の話。 異動は初めてではなかったが、希望とは全く異なる業種の部署への異動が度々続いたこと、異動した先が社内でも有名なブラックな職場(休日出勤など過重労働が多い)であることから、異動をきっかけにメンタルの調子が一気に崩れたことがあった。 抑うつ、無気力、倦怠感、不安、早朝覚醒からの不眠、感情の喪失… 典型的なうつの症状だった。 仕事が忙しくなるにつれ、毎日帰宅が23時前後となり、土日も出勤するようになり、心身ともにボロボロになっていっ

    • こわい想い出

      八話目 小さい頃、親が古い家を買って暮らしていた時期があった。 当時は子供部屋などなく、妹も含め親子4人で寝室で寝ていた。 若い頃の父親はいたずらが好きらしく、夜、僕や妹が寝る前に、ちょっと来いと居間に呼ぶことがあった。 そこには寝る前に顔にパックを貼り付けた母親がいた。 幼い僕は、母親の顔がなくなったと本気で泣いて怖がった記憶がある。 大人になって、妹に子どもができ、互いの小さい頃の昔の想い出話を語る機会があった。 僕がこの話をすると、妹も幼いながらに記憶にあったらしく

      • 赤い部屋

        七話目 若い頃、バー通いにはまっていたときに、たまたまカウンター席で一緒になった人から聞いた話。 「赤い部屋」という都市伝説を知っているだろうか。調べてみたがこの話には二つの系列がある。 ひとつは、インターネットにまつわるもので、消すと死んでしまうというポップアップ広告があるという噂で、ある者がその「あなたは赤い部屋が好きですか?」と書かれたポップアップ広告を開くと、そこには今までにそのサイトを開き、死んだとされる人達の名前が書かれており、その男もその中に名前が書かれるこ

        • 車窓の屋敷

          六話目 10年以上前の話。 私はバス通勤をしていた。 会社がある中心街から住宅街に行く途中にある、おそらく昔は城下町であったであろう古い街なみ。 そこに焼杉板の黒い板塀で囲まれた、古い家がある。塀の長さからかなりの敷地面積である。 普通にしていると板塀の高さのため、屋敷の中を見ることはできない。 ただバスの種類と座る座席の位置によって板塀の中が見えることがある。 その日はたまたまそういうバスに乗った。 気づくと何が原因か分からないがその通りは渋滞し、しばらくその屋敷の横にバ

          不正受給

          五話目 こんな話を聞いた。 その男は、福祉事務所で勤めていたという。彼はそこで生活保護に関わる仕事をしていた。 ある日、事務所の窓口で騒ぎがあった。 とある受給者(仮にAとする)が〇〇を出せ!責任者を出せ!と騒いでいるのである。 騒ぎの経緯を簡単に説明すると、先日、Aのもとに生活保護を停止するとの手紙が届いた。Aには同居人がいるにも関わらず役所に虚偽の申告をしており、不正受給の疑いがあるからだと言う。 しかし、Aは同居人など絶対にいない、と主張しており、担当のケースワーカー

          不正受給

          けむり

          四話目 件の実家に移り住む前の話。 私が住む街で、ある強盗事件が起きた。 とある消費者金融会社に、強盗が押し入り、ガソリンを巻いて、従業員を死傷させたという事件である。 私がその事件を知ったのは夜のニュースだった。年齢的に消費者金融なんて関わりのない場所ではあるが、それでも事件現場は前を通ったことがあるくらいの、住んでいる場所から差程遠い場所ではなかった。とても生々しく感じたのを覚えている。 まだ若く愚かな私は、たいして事件の詳細も知らないまま、犠牲者を想う気持ちも薄く、

          飛んでくる

          三話目 最初に言うがこれは夢か現か分からない話。 件の私の実家の部屋(自室)で起きたことだ。 私はセミダブルのベッドを大きな窓のすぐ横に置いて寝ている。窓は洗濯物を干すための小さなベランダに接している。 ある暑い日の夜。2階なので窓は網戸にして開けたまま寝ていた。 私の実家は閑静な新興住宅街にある。そのため、(当時は)夜は虫の声が聞こえるほど静かである。しかも深夜(1時は過ぎていたと思う)。 普段なら耳が痛くなるくらいの静けさだったりするのに、なぜか窓の外が騒がしい。

          飛んでくる

          和室にいるもの

          二話目 自宅にある和室の話。 自宅の一階には居間にふすまをはさむかたちで和室(客間)がある。 ある日のこと。妹二人と居間でテレビで映画を観ていた。私はちょうど和室を背中にする位置に座っており、妹二人はその向かい側で並んで座っていた。 ふと妹二人が同時にこちらを見て、その後、二人で顔を見合わせてしばらく固まった後、うわぁーと大声を上げた。 私はなんだなんだと理由を尋ねたところ、こんな話をした。 私の背後には和室がある。照明は消してあるが、ふすまを全開にしていたため、居間から

          和室にいるもの

          ひっぱるもの

          一話目。 まずは自分の体験談を書こうと思う。これは僕がこの気まぐれな投稿をはじめようと思いついたきっかけとなる話だ。 最初の投稿日、2021年2月15日。まさにこの日の未明に起きた出来事である。 昨夜、私は深夜12時頃に床についた。疲れていた訳でもなく、ましてや無性に眠気を感じていた訳でもないが、明日(厳密には今日)の仕事に備え、早く寝ようと目を閉じて横になっていた。 ふざけたもので寝ようとすればするほど眠れないものである。それでもいろいろと考えごとを巡らすうちに睡魔

          ひっぱるもの

          語りはじめ

          私はいわゆる怪談や怖い話を愛する好事家である。だが、心霊現象やオカルト体験には全くと言っていいほど縁がない。ありがたい話である。 僕は怖い話を聞いたり読んだりするのが好きであって、別に霊が見たいわけでも、不思議な体験がしたい訳でもない。肝試しとか深夜の心霊スポット巡りとか、ましてや曰く付きの事故物件に住むだとか正気の沙汰ではないと思っている。 そんな私だが、不思議な体験は何度かしているし、知人が体験した怖い話なんかをいくつか知っている。身元がばれないように、多少の脚色や編

          語りはじめ