和室にいるもの

二話目

自宅にある和室の話。
自宅の一階には居間にふすまをはさむかたちで和室(客間)がある。

ある日のこと。妹二人と居間でテレビで映画を観ていた。私はちょうど和室を背中にする位置に座っており、妹二人はその向かい側で並んで座っていた。
ふと妹二人が同時にこちらを見て、その後、二人で顔を見合わせてしばらく固まった後、うわぁーと大声を上げた。
私はなんだなんだと理由を尋ねたところ、こんな話をした。
私の背後には和室がある。照明は消してあるが、ふすまを全開にしていたため、居間から和室の中が暗いながらも丸見えの状態であった。
妹がたまたま何か気配を感じたらしく、二人同時で振り返った和室を見た。
すると暗い和室の中を、黒い人影のようなものが右から左、ちょうど窓(縁側)側から廊下側に向けてサッと横切るのを観たのだと言う。
さして広くはない、何もない和室。
どこにも影の主など見当たらない。
妹たちはいったい何を見たのだろうか。

また違う日の話。
当時、自分の部屋にエアコンがなかったため、夏は2階がとても暑く、階下の和室が庭の木の木陰になるということもあり、よく窓を網戸だけにして涼みながらごろ寝をしたものである。
私はこの部屋で仰向けに寝そべり、ヘッドホンで音楽を聴きながら文庫本を読むのが好きだった。
怠惰な本読みの読書に眠気はつきものである。
この和室でまぶたを閉じ、うたた寝をはじめると決まって起こることがある。

寝そべっている自分の周りを何か気配のようなものが動くのである。
畳の上を擦るような微かな振動を感じる。
かすかにヘッドホンから流れる音の奥に、曲のリズムとは異なる足音のようなものも聞こえる。
大人の重い歩みではない。
閉じた瞼にイメージが浮かぶ。
古めかしい着物を着た子どもたちの姿。
いや、四足の獣?
そう、柴犬くらいの大きさの何かが複数動きまわるイメージ。

目を開けると、そこは何も変わらない明るい和室である。
その感覚は、畳に直接寝そべり、耳を塞いだ時のみ起こる体験であった。

ちなみにこの和室は、金縛りにあった自室のちょうど真下にある。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?