【鶴の恩返し】たくさん踏む
むかしむかしのそのむかし
男と女は雪山暮らし
Bluetoothなどまだ無い時代
鶴と夫婦の不思議な話
男は町に出かける「焚き木を売るぞー」と
そーっと見守り鉢に手をかける女房
男の行く道はオフロード
長い旅路をコツコツと
しばらく歩くと何かを見つける「なんだろう」
男は思う「もしかしてバッファロー?」
そんな訳もなく、ゆっくりと近づく男
漂う緊張感、心拍数上昇
辺りを見渡しても何も無く、
あるのは風の疾走感、山々の臨場感
男は何かを確認した、ワナにかかった鶴だ
ホッと肩をなでおろす男、「鶏狩って売るか」
近寄る男にわなわなと暴れる鶴
その様子はまるであばれる君
思いとどまった男は鶴を助けてあげた
解き放たれた鶴は翼を振り上げた
男も両手をあげた「気をつけておかえり」
その日の夜、町に寄る事なく帰る男
女房が用意していた料理に子供の様に喜ぶ
ほころぶ顔に、轟く笑い声
喜ぶ女房をよそに、驚く男
誰かが戸を叩く
男:「こんな夜中に誰だろう」
女房:「怖いから無視しましょう」
男:「いやいや、無視できないだろう」
いやいや戸を開ける女房
そこには綺麗な娘が立っていた
「雪に困ってしまいました、
今晩泊めていただけませんか?」
男:「お礼は頂けませんが、泊めましょうよ」
女房は言った「そうね、お米出そう」と
夫婦はゆっくり休んでもらおうと部屋を用意した
苦労しただろう浪費しただろうと気を遣ったのだ
娘は部屋に入ると、こう相談した
「この部屋自由に使わせて、決して覗かないで
あと、お礼にはたをを織らせてください」
そう約束を交わした
二人は動揺したが、同時に高揚感もあった
はたを織る音が鳴り響く
夫婦はどうしても気になっていた、そして
約束を破り、部屋を覗いた
驚いた、そこには鶴がいた
「見間違えたか?」
翌日の朝、まだ雪が残る山、清々しい朝、
ただ、違和感があった
家中探しても娘が見つからない
鶴と見間違うよりいくらかマシだが、
やはり心配だ
ふと気づく、昨晩そこには1羽の鶴がいた
今朝、鶴はたちまち飛び立ったが、
娘が織っただろう美しい織物が残されており、夫婦はまじまじと見た
そこには手紙も残されていた
「ご恩は決して忘れません、私はワナにかかっているところを助けられた鶴です。恩返しに来たのですが、姿を見られたのでもうここには居られません。織物を売って、裕福に幸せに暮らしてください本当にありがとう」
むかしむかしのそのむかし
男と女は今や恵まれた暮らし
Bluetoothなどまだ無い時代
鶴と夫婦の幸せな話
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