マガジンのカバー画像

短歌

3
自選短歌集。
運営しているクリエイター

記事一覧

冬の海辺|短歌

冬の海辺|短歌

さざなみに洗われ転がるまるい石 蹴飛ばし届くか遠く灯台

波打ち際、走り去る大型犬 しっぽの影がゆらゆら揺れる

髪をさわる 風が吹いては何度もさわる 意味はなくとも必要だった

地平線、コートの裾がなびいて消える 小舟の青、灯台の白

つよく吹く潮風に目がしみる 滲んだ目尻はそのままでいい

焦がれていた、ファインダー越し橙の陽 輪郭ぼやけて夢うつつ日和

さよならと言わないままで手を振った 絡

もっとみる
月をみるたび、元気だろうかと思い浮かぶひとのこと|短歌

月をみるたび、元気だろうかと思い浮かぶひとのこと|短歌

おなじ月、あなたは見上げていましたか。降り注ぐのは、月までの距離

やわらかく静かに浮かぶ月のなか映るまぼろしあなたの瞳

雲隠れ 見えなくなって手を伸ばす 光のなかに立っていた彼

天高く飛んだあなたの後ろ髪 月に届いて秋夜を包む

煌々とひかる彼の生き写し 今夜だけは空に住みたい

こんばんは、生きていますか。空に問いかけ、深呼吸する

自選短歌集 『燦然』

爪の垢煎じて飲みたいわけじゃないその心臓を鳴らしたいだけ

チャイティーラテあの人も好きだったよな ぴりっと辛い冬の残り香

五月雨のなか歩いたあの人はどこへ向かうか無人駅の屋根

いつの日か終わる君のはじまりをそっと見詰める私も終わる

花開く薄紅色を空へ差し青く居た日々脱ぎ捨ててゆく

さんざめく歓声採光あざやかに届かぬ距離の愛しきことよ

星が降る潤む黒目は流星群ちりばめ星彩何億光年

惹か

もっとみる