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六年目

7
2024年
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#創作

夏祭り

夏祭り

日が沈み始めた頃に待ち合わせをすることがなんだか非日常で、隣にいる友人は幻なのではないかと、まだ輪郭のぼやけた空に浮かぶ月を見上げてふと考えてしまう、駅の地下自由通路を潜った先の提灯の眩しさと喧騒、ほんの数十秒前の世界とは繋がっていないのではないか、浴衣姿のクラスメイトを見つけるたびにやっぱり現実なのだと、すこしだけがっかりして人の波にのって屋台を見廻る、真っ白なタオルを頭に巻いてわっしゃわっしゃ

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短歌《いつかのわたしたち》

短歌《いつかのわたしたち》

ミルク多めのカフェオレを飲みたいと優しさに飢えてるわたしたち

枯れかけの花束愛でるあのひとはきっと誰の死も愛してくれる

ぽつぽつと咲き始めてる桜見て散りゆくとこを想像してる

無意識に二人分の珈琲を淹れるくらいに君が好きだよ

誰もかも死んだ人には優しくて誰のための優しさなのか

みっちりと包まれている購買の惣菜パンの優しさを買う

まんまるのホットケーキにナイフ刺す世界を覗く切り込み入れる

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ヒト

ヒト

誰かといることが最小単位で、異性愛者だろうが同性愛者だろうが、そこを満たせなければ人間として未熟であると勝手に判断されて反吐がでる、すべてのことに配慮して生きることに疲れてしまった、男とか女とか以前にひとりの人間としてしかあなたを見ていないっていうとがっかりされる、面倒くさい、テレビの向こうで旬の俳優が、良いお母さんになりそうな女性がタイプというのをきいて引いてしまった、じゃあ君は良い父親になれま

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