幸せになる勇気 全ての教育者へ 。最近、尊敬していますか?
幸せになる勇気は誰向けの内容か?
・先生、部下を持つ人、お子さんがいる人
・自分の教育方法に不安がある人
・これから教育者の立場になる人
上記の方は非常に参考になる内容だと思います。
何故この本を読もうと思ったか?
嫌われる勇気を読んで、アドラー心理学に興味を持ったので続編も気になり読んでみたいと思いました。
作者について
岸見一郎氏
1956年、京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。京都教育大学教育学部、奈良女子大学文学部(哲学・古代ギリシア語)、近大姫路大学看護学部、教育学部(生命倫理)非常勤講師、京都聖カタリナ高校看護専攻科(心理学)非常勤講師を歴任。専門の哲学に並行してアドラー心理学を研究、精力的に執筆・講演活動を行っている。
引用元:アマゾン
古賀 史健氏
ライター。株式会社バトンズ代表。1973年福岡県生まれ。1998年、出版社勤務を経て独立。著書に『嫌われる勇気』(共著・岸見一郎)、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』、『古賀史健がまとめた糸井重里のこと。』(共著・糸井重里)などがある。2014年、ビジネス書ライターの地位向上に大きく寄与したとして「ビジネス書大賞・審査員特別賞」受賞。2015年、ライターズ・カンパニーの株式会社バトンズを設立。
引用元:アマゾン
結論
前作「嫌われる勇気」よりも突っ込んだ話になっているため、非常に難しく感じました。
今作ではアドラー心理学を教育者として、活用するためにはどうすればいいかという具体的な行動に落とし込んで書いています。
嫌われる勇気は抽象的な話、幸せになる勇気は具体的な話、という感じでしょうか。
本書では尊敬と愛の重要性を説明しています。
教育の目的は自立
アドラー心理学では教育の目的は「自立」すること。
その自立の入口は相手への尊敬から始まります。
尊敬というのは相手のありのままを見て、唯一無二の存在だと知ることです。
教育者の思った通りに相手を操作するのではなく、その相手らしく成長出来るように助けて上げるというイメージですね。
尊敬の第一歩として、相手の関心事に関心を寄せることが重要。
そして相手の関心事を、一緒に楽しむことが重要なんです。
例えば子供が好きな絵本や漫画を読んでいたら興味を持ち一緒に楽しむ。
好きな音楽を聞いていたら興味を持って一緒に楽しむ。
といった対等な姿勢が大事なんです。
嫌われる勇気にも出てくる共同体感覚を、具体的な行動指針にすると「他者の関心事」に関心を寄せるということなのでつながっている部分でもあります。
賞罰教育をなぜ否定するのか
アドラー心理学では賞罰教育、いわゆる褒めることと叱ることを否定しています。
まず褒めること、というのは終わりがありません。
どういうことかというと、褒めてもらうと行動の目的が、適切な行動をするというよりも褒めてもらうにフォーカスしてしまいます。
そうすると、褒めてもらう人がいないと適切な行動をしなくなります。
叱ることも考え方は同じで、叱られないことが行動の目的になってしまう。叱る人がいないと不適切な行動をするようになってしまいます。
そして、叱るという行為は暴力と一緒です。
暴力は言葉でコミュニケーションすることを、煩わしく思い最終的に選択してしまう手段ですよね。
叱ることも同じで、普通に口でコミュニケーションを取っても埒があかない時や時間を惜しんだ時に頼ってしまいます
問題行動の5段階
アドラー心理学には問題行動を5段階で表しています。
第1段階 称賛の要求・・・目的:褒めてもらうこと
第2段階 注目喚起・・・目的:悪いことでもいいの目立ちたい
第3段階 権力争い・・・目的:反抗や不従順で特別感を得たい
第4段階 復習・・・目的:相手の嫌がることをして憎しみを求める
第5段階 無能の証明・・・自分の無能さを証明する。もう構わないで欲しい。
第4段階以降は専門家の力が必要なので、親や先生は対応が難しくなります。
そのため教育者は、第3段階までに食い止めてあげないといけません。
食い止めるために必要なのは、貢献感や所属感です。
共同体のなかで自分が貢献出来ている、という感覚が持てれば問題行動を起こさないで済みます。
教育者が出来ることを本書内でこう言っています。
自分の人生は、日々の行いは、すべて自分で決定するものなのだと教えること。そして決めるにあたって必要な材料(たとえば知識や経験)があれば、それを提供していくこと。
引用元:幸せになる勇気
このように子ども達の決断を尊重して、必要なものを援助してあげることが必要です。
それを積み重ねて行くと自分の人生は、自分で選ぶことが出来ると「自立」につながっていきます。
競争原理から協力原理へ
前述の賞罰教育とも関係してきますが、褒めるということを良しとしてしまうと競争原理が働きます。
どういうことかというと、褒められると嬉しいから褒められるための行動をもっと取りたいと思う。
そして褒められることを目的とする人が集まると競争意識が芽生えます。
いかに自分が他者よりも褒められるかを追求していき他者を全て敵と認識します。
ただし、これはライバルを否定しているわけではありません。
「競争」を否定しています。
本書内でマラソンに例えていますが、ライバルとマラソンの完走を目指すのであればお互いに励まし合い切磋琢磨をすることが出来て問題ありません。
しかし、勝ち負けで判断すると一気にライバルを敵とみなしてしまいます。
「完走を目指す」というのが「ライバルに勝つ」に目的が変わってしまう。
そうすると、ライバルとの駆け引きや時には不正や妨害行為をしてしまうかもしれません。
レースの結果ライバルが勝つと、嫉妬や劣等感に苛まれてしまいます。
そうでなく、ライバルを含めて他者を「仲間」と認識していけば協力原理が働きます。
現状、競争原理が働いていると思われる組織(共同体)では一つづつ競争の芽を摘んで協力原理にもっていくしかありません。
完璧な能力の人間はいません。
みんな、いいところもあれば悪いところもあるし、得意なこともあれば苦手なことだってある。
共同体内でそれぞれの凸凹を補い合うという意識で相手を尊敬することが出来れば協力原理が働きそれが貢献感につながるということですね。
人生の最終タスク「愛」とは
アドラーの語る「愛」とは「ふたりで成し遂げる課題」です。
利己的にわたしの幸せを求めるではなく、利他的にあなたの幸せを願うわけでもない。
「わたしたちの幸せ」を築きあげることが愛といいます。
わたし、あなたどちらかの幸せが欠けてもいけないということです。
利己的、利他的はどちらも主語は「わたしにとって」になります。
アドラー心理学には3つの人生のタスクがあります。
「仕事」「交友」「愛」です。
仕事は他者を信用(条件付きで信じること)してお互いの不足しているところを補い合い結果として自分が幸せになるいわゆる健全なギブアンドテイクの関係です。
交友は他者を信頼(無条件で信じること)してひたすら相手に与えること。
担保や見返りを求めないという(ギブのみ)それが巡って自分の幸せにもなるものです。
最後に愛は自分と他者どちらも幸せにならないと意味がないというものです。
これは、能動的に愛するということです。
僕たちが生まれた時は非常に弱い存在でした。
一人では、食事も寝返りすることさえ出来ない状態で生まれてくる。
そんな世界で生き抜くために「弱さ」を武器にします。
赤ちゃんは泣けば大人が何かしら面倒をみてくれますよね。
小さなうちは「愛されること」が重要な価値になります。
ただ、アドラー心理学ではずっと愛されることを求めている人たちを
多くの大人たちもまた、自分の弱さや不幸、傷、不遇なる環境、そしてトラウマを「武器」として、他者をコントロールしようと目論みます。
(中略)
そんな大人たちをアドラーは「甘やかされた子ども」と断じ、そのライフスタイル(世界観)を厳しく批判しました。
引用元:幸せになる勇気
と本書内で語っています。
元々弱い状態で生まれて来て、生き抜くために愛されなければならなかったので本能的には自己中心性があるのは当たり前です。
ただ、ずっとそれではいけないんだとアドラーはこう言っています。
いつまでも、「世界の中心」に君臨することはできない。世界と和解し、自分は世界の一部なのだと了解しなければならない。
(中略)
自立とは、「自己中心性からの脱却」なのです。
引用元:幸せになる勇気
この自己中心性からの脱却するために愛のタスクに挑戦していかなければならないとしています。
まとめ・感想
いや~難しいですね。
正直まとめるのがめちゃめちゃ大変でした。
ただ僕自身、子供を持つ親の立場としては興味深く読めました。
日々の仕事に追われて子供たちの関心事に興味を持てていなかったので胸に刺さる内容でした。
また、褒めるや叱るもついついやっちゃうんですよね。
振り返るとやっぱり一番手っ取り早いからこのコミュニケーション手段に頼ってしまっていたなと思います。
本書に書かれている内容を実践するのは非常に難しく心の余裕を持たないとなと感じました。
ただ、全部とは言わなくても少しでも取り入れていけばこれからの人生に役に立つだろうなと思いました。
そのためには、繰り返し読み返しきちんと内容を咀嚼して消化しないと実践は出来ないですね。