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性暴力の傍観者から「行動できる第三者」へ。アクティブバイスタンダーはなぜ重要なのか?

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「目の前で痴漢に遭っているかもしれない人がいる」「しつこく声をかけられ、嫌がっている人がいる...」あなたはどうしますか?性暴力における「行動できる第三者(アクティブバイスタンダー」がなぜ重要なのか、そして行動する上で気をつけるべきことをSafe Campusさんに伺いました。

写真=アクティブバイスタンダーバッジ、Safe Campus提供                                                                      

「目の前で痴漢にあっている人がいる」「友達が飲みの場でのセクハラ発言をされた」

目の前で性被害に遭っている人がいたら、あなたはどうしますか?

性暴力の場面に居合わせた第三者(バイスタンダー)の重要性を訴えている学生団体がある。慶應義塾大学未公認学生団体・Safe Campus(旧名:Safe Campus Keio)だ。

バイスタンダー」という単語は、本来は医療用語として使われる、緊急の場面に居合わせた第三者を指す言葉だ。第三者として居合わせた状況で行動を起こす人を「アクティブバイスタンダー」と呼ぶ

性暴力や性差別をなくす取り組みをしているSafe Campusでは、活動の一つとして「アクティブバイスタンダーの認知向上」を目的としたピンバッジコンテストの主催や、アクティブバイスタンダーとして行動できるようになるためのワークショップを開催している。

Safe Campusのメンバーである佐保田美和さんと中村彩夏さんに、なぜアクティブバイスタンダーが重要なのかを伺った。

性暴力を許さない社会

ーー性暴力の場面におけるアクティブバイスタンダーはなぜ重要なのでしょうか?

佐保田さん
:アクティブバイスタンダーとは、「性暴力の加害者と被害者に介入することにより、被害を未然に防ぐ・性暴力がエスカレートすることを防ぐ人」とわたしたちは考えています。福岡県警が実施したアンケートでは痴漢被害に遭った9割の被害者が警察に被害届を出さないという結果が出たように、性暴力は被害者が声をあげにくい・相談しにくいという課題があります。この理由として「性暴力=過激、喋ってはいけないトピック」として捉えられてしまう等の社会的な要因が挙げられます。また、現在の刑法176条から178条にわたる性暴力の規定では、強制わいせつおよび強制性交等罪において「暴行・脅迫を用いて」や「心身喪失・抗拒不能に乗じて」などの要件が存在します。この要件の存在は、不同意というだけでは処罰されないことになり、加害者を訴えることや被害者が声を上げることへのハードルを上げている要因の一つとなっていると考えられます。

また、性暴力の被害者が、加害者に対して、抵抗することも非常にハードルが高い行為です。そのように声をあげること、抵抗することが難しい性暴力においてその場面に居合わせた第三者の存在は重要です。第三者が加害者に対して「NO」や「性暴力はダメなことだ」と示すこと、そして被害者に対しては「自分たちはあなたの味方だ」と示すことで、性被害を防いだり、悪化を防止したりすることに繋がり、性被害についてより相談しやすい社会を作って行くことになると思います。学術的にもこれは立証されていて、アクティブバイスタンダーが性暴力に介入することにより被害を防げるという研究結果注1も出ています。

中村さん:アクティブバイスタンダーとして「性暴力は許さない」という姿勢を周囲に伝えることは、自分が所属しているコミュニティー内で起きている・起きるかもしれない性暴力に対する抑止力にもなりうるとも思います。それが結果的には「性暴力を許さない社会」にも繋がるのではないでしょうか。

(Safe Campusのメンバー、Safe Campus提供)                                                                                     

行動する時の大切な「5D」

ーーアクティブバイスタンダーとして行動するためにはどうすれば良いのでしょうか?

中村さん:Safe Campusが考えたわけではないのですが、アクティブバイスタンダーとして行動する上の介入方法として使える「5つのD」というフレームワークがあります。

Distract(注意を逸らす):ハラスメントとは関係のない話をするなど、加害者の邪魔をすることで被害・被害の拡大を阻止します。
例:
・ 飲み会の場でセクハラ発言をする人に水をかけたり、関係のない話をすることで加害者や周りの人の注意を逸らす。

 ・嫌がらせを受けている人の知人のふりをして「あ!〇〇さん、探していました!」などと声をかける。

Delegate(第三者に助けを求める):自分で介入することが難しいと判断した時は、周囲にいる人や第三者に助けを求めてください。
例:
・店の責任者、バスの運転手、駅員、先生を見つけて介入してもらう。
・周囲にいる人に声をかけて、一緒に声をかけに行ってもらう。

注意:通報という手段をとる場合は、被害者に通報したい意思があるかどうかをできる限り確認してから行うのが望ましいです。被害者に近づけない状況にあるなど、意思を確認するのが難しい場合は被害状況等に応じて臨機応変に判断してください。

Document(証拠を残す):映像などで被害の証拠を残すことは被害者の助けになることがあります。ビデオを撮る際のポイント:

① 安全な距離を保つ

② 場所を特定するために周囲の看板や建物を写す

③ 日付と時間を言う

注意:証拠をどう使いたいかの決定権は被害者にあります。証拠を撮った自分の携帯や端末から破棄して欲しいかを必ず確認し、許可なく使用(SNSに上げる等)しないようにしましょう。

Delay(後で対応する):被害が起きたその場面で行動できなかったり、その場にいなかった場合でも後で対応することができます。
例:
・被害者に大丈夫かどうかを尋ねる 
・あなたが被害者をサポートできる方法があるか尋ねる 
・被害者の目的地まで同行したり、しばらく一緒にいることを申し出る 
・必要な場合、警察への事件の報告を補助する 
・事件の証拠がある場合、被害者がその資料を必要としているかどうかを尋ねる

Direct(直接介入する):被害が起きている現場に直接介入するという方法。介入が直接的であればあるほど、加害者があなたに危害を加え、状況が悪化するリスクが大いに高まります。そのため、直接介入する前には必ず以下の点を確認してください:

① あなたと嫌がらせを受けている方の安全が確保されていること
② 状況が悪化する可能性が低いこと
③ 嫌がらせを受けている方が助けを求めていること

加害者とのやりとりは「それは不適切ではないでしょうか?」「放って置いたらどうですか?」「それセクハラだよ」など簡潔に留め、状況がエスカレートする危険性があるので加害者と対話・討論・議論しようとしないでください。

介入する時の注意点

ーー介入方法はケースバイケースになると思いますが、その場面において「5つのD」のどれが適切なのかを判断するためには、どうすれば良いと思いますか?

佐保田さん:一番大事なことはご自身の身を守りつつ、相手のことも助けることだと思います。例えば、ストリートハラスメントの現場に居合わせて被害者が明らかに嫌がっている場合に「(加害者に対して)おかしいんじゃないの!」と直接介入(Direct)して、加害者から攻撃をされる可能性もあります。どのように介入するかは、一番自分がやりやすいものでも良いと思っています。また、介入する上で「このような場面に居合わせたらこの介入をする」というアイディアを事前に持っておくことが重要だと思います。わたしは電車内で痴漢に居合わせることが多いので、「痴漢に居合わせたらYoutubeを大音量」で流すという具体的な行動をするつもりです。


ーー他にもアクティブバイスタンダーとして介入する上で注意すべき点はありますか?

佐保田さん:被害者の方への声のかけ方にも気をつけて欲しいと思います。介入する際に焦ってしまって、性被害に遭った被害者に「そんな格好していたからだよ」などの発言をしてしまうかもしれません。しかし、そのような発言は被害者の方が自分を責めることに繋がりますし、セカンドレイプ にもなってしまいます。自分がどれだけ動揺していても被害者を責めるような発言をしない、もし言ってしまった場合は発言が誤りであったとしっかり声をかけて下さい。

また、性暴力の場面に居合わせなくてもアクティブバイスタンダーとして行動することはできます。普段からご自身のツイッターやインスタグラムで性暴力の問題に関する情報をリポストするなどの姿勢を示すだけでも「この人は性暴力を許さないんだ」と周りの人が知ることができます。数字で出せないところではありますが、そのような姿勢を見せていくことで行動を控える人も増えると思うので、コミュニティーの中で少しでもアンテナを張って意思表示をすることも重要な一歩だと思います。

中村さん:アクティブバイスタンダーとして自分自身の行動に責任を持つためにも、まずは性暴力がそもそも何かということを知ることも大切だと思います。性暴力という言葉はレイプだけではなく、痴漢やセクハラなども含みます。あとは性暴力の被害者がどのような心理的被害を負ってしまうか、セカンドレイプとは何なのかなど、できる限り性暴力に関して知識を蓄えていただけると良いかなと思います。このような情報に関しては一般社団法人「Voice Up Japan」慶應支部とSafe Campusが共同で作成した性的同意ハンドブック(PC版携帯版)にも詳しく書かれてあるので、ぜひ参照してもらうと手軽に確認して頂ければと思います。

(性的ハンドブック、Safe Campus提供)                                                                                                

注1:                                                      
Evaluation of Green Dot: An Active Bystander Intervention to Reduce Sexual Violence on College Campuses
Multi-College Bystander Intervention Evaluation for Violence Prevention 


執筆者:原野百々恵/Momoe Harano
編集者:清水和華子/Wakako Shimizu

インタビューを受けてくれた人
佐保田美和:慶應義塾大学理工学部4年生、2022年4月からは社会人。性暴力被害をネタにするような風潮に問題意識を持つようになり、元慶應大学の先輩と共にSafe Campusを立ち上げる。

中村彩夏:慶応義塾大学総合政策学部2年。高校生の頃からジェンダー、フェミニズムに興味を持つ。直接社会に働きかけたいという思いを持ち、Safe Campusに参加。

                   


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