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アクセルとブレーキ
「千マイルブルース」収録作品
SAで出会った、元バイク乗りの車イスの男は……。
アクセルとブレーキ
旅が、面白くない。
なぜなのかはわからない。おそらく、楽しさを見失っているのだろう。
高速に乗り、飛ばす。走り疲れたら休み、また飛ばす。多くは目的地など決めない。絡んでくる四輪と戯れ、最高速にトライし、区間タイムに喜ぶ。
じつに捻くれた旅のスタイルだが、以前はこれで充分旅心を満たせたのだ。それが……。
「旅かい?」
東名のSAで考え込んでいた俺に、後ろから声がかかった。振り返ると、初老の男が車イスの上からほほ笑んでいる。
「そう言えるかどうか……」
本音である。
「でも、ワシと同じ、旅のニオイがするぞ」
そう言って男は、自分の衣服と俺を交互に嗅ぐ振りをして笑った。
「ワシも昔、BMWのR100に乗っていてな。ずいぶんと走りまわったもんだ……」
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