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神影鎧装レツオウガ

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#長編小説

神影鎧装レツオウガ 第百三話

神影鎧装レツオウガ 第百三話

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ChapterXX 虚空 05
 対竜鱗徹甲弾――Anti Dragon Penetrator。
 略称ADP弾。竜を討つ名を冠せられたこの対大鎧装用特殊弾は、そもそもの組成からして通常弾とは大きく異なっている。
 弾丸の主素材は、霊力伝導性をより高める特殊加工を施されたハイブリッド・ミスリル。表面には微細な術式がレーザー加工によって精密に刻み込まれてお

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神影鎧装レツオウガ 第六十六話

神影鎧装レツオウガ 第六十六話

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Chapter09 楽園 03
「ふう。ごちそうさまでした」
 手を合わせるサラ。可愛らしい、慎ましやかな居住まい。だが彼女の座るテーブル上には、空の紙皿が山積みになっている。焼肉の抜け殻だ。
「お粗末。ほれぼれする食いっぷりじゃったぞ」
 トングを拭きながら破顔する焼肉奉行、もとい雷蔵。その眼差しは、サラの全身を不思議そうに見据えている。
「しかしまぁ、その

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神影鎧装レツオウガ 第六十五話

神影鎧装レツオウガ 第六十五話

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Chapter09 楽園 02◇ ◇ ◇

 何も無い、まっくらな闇。
 あるのは自分自身と、頭上から注ぐ固い光だけ。
 見上げる。
 鍵穴のような紋様を描く術式陣が、虚空に浮かんでいた。
『……蓋』
 知らず、風葉はつぶやいていた。
 何故か、そんな印象を受けたからだ。
 でも、なんで?
 自問する風葉。その瞼を、強烈な光がノックする。起きろ、と。

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神影鎧装レツオウガ 第六十四話

神影鎧装レツオウガ 第六十四話

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Chapter09 楽園 01
◇ ◇ ◇

 揮発していく霊力光、剥き出しになるコクピット。かくしてレツオウガは、二人のパイロットを外気へさらけ出した。
 しかもそれは、以前のオーディン・シャドー戦のような激闘の結果ではない。
 たった一発の銃弾が、それをなしてしまったのだ。
『      !』
 コクピット中央。コンソールに左腕を固定するメインパイロ

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神影鎧装レツオウガ 第四十八話

神影鎧装レツオウガ 第四十八話

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Chapter06 冥王 12
「こ、お、の、野ァ郎ォォォォッ!」
 一、二、三、四、五、六――十四。嵐のように放たれるグレンの連撃が、地獄の火洞窟の空気をかき乱す。
 裏拳、肘打ち、膝蹴り、回し蹴り、踵落とし、正拳突き。荒々しい、しかし確かな技術にも裏打ちされた打撃の奔流。
「ふふ」
 その奔流に晒されながら、しかし冥《メイ》の微笑は崩れない。
 拳撃

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神影鎧装レツオウガ 第四十七話

神影鎧装レツオウガ 第四十七話

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Chapter06 冥王 11
 地獄の火洞窟大ホール。
 あれだけの事があったにも関わらず、冥《メイ》はまだここに居座っていた。
 さもあらん。一連の中核ながら諸々の喧噪からかけ離れたこの洞窟は、観戦するには持って来いの場所だからだ。
 未だ輝き続ける数々の術式。ウェストミンスター区を様々な角度から映す立体映像モニタ群。見所はいくつもある。
 だが今現

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神影鎧装レツオウガ 第四十六話

神影鎧装レツオウガ 第四十六話

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Chapter06 冥王 10
 フレームローダーが転移術式を潜ったのと、ほぼ同時刻。
『Rフィールドが、発動しただと……!?』
 月面の巌は、フェイスシールドの下で絶句した。
 概算とはいえ、起動に必要な霊力はもう確保出来ないはず。だが、ならば、どうやって?
 渦巻きかけた疑問を、しかし巌はすぐさま閉め出す。
 仮説。検討。検分。検証。そんなものは後でいくら

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神影鎧装レツオウガ 第四十五話

神影鎧装レツオウガ 第四十五話

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Chapter06 冥王 09
「霊力の、確保、ですって?」
 一語一句を区切りながら、サトウは怪盗魔術師の言葉を繰り返す。
「そんなものを、いつ、どうやって……」
 と、そこでサトウは気付いた。怪盗魔術師の輪郭が、陽炎のように揺らいでいる。立体映像モニタの不調、ではない。
 では理由は何か。疑問符と同時に、鳴り響く携帯端末。取り出す。画面に表示された名前は、

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神影鎧装レツオウガ 第四十四話

神影鎧装レツオウガ 第四十四話

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Chapter06 冥王 08
 時間はまたもやさかのぼり、雷蔵がレギオンと戦い始めた頃。
 ウェストミンスター寺院の隣、浮遊している術式陣の中央。
 そこに、怪盗魔術師エルド・ハロルド・マクワイルドは佇んでいた。
 表情は無い。今し方までの爆笑が嘘のような無表情。その双眸は、ウェストミンスター区の有様をじっと見据えている。
 未だ大量の、しかし少しずつ

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神影鎧装レツオウガ 第四十三話

神影鎧装レツオウガ 第四十三話

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Chapter06 冥王 07
 轟。
 凄まじい光と音が、奔流となって迸る。
 クリムゾン・カノンから発射された膨大な霊力は、正面の巨大転移術式陣へ直撃。そのまま地球のウェストミンスター区へと転送されていく。
 直径ギリギリの霊力砲撃をねじ込まれ、悲鳴じみた火花を上げる術式陣と周囲機材一式。
 更にその悲鳴を代弁するかの如く、立体映像モニタの向こうで狂

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神影鎧装レツオウガ 第四十一話

神影鎧装レツオウガ 第四十一話

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Chapter06 冥王 05
 ごうどうと。どうどうと。
 瀑布じみて噴出する霊力が、ウェストミンスター区中へ凄まじい勢いで広がっていく。建物等への被害こそ無いが、その様はもはや水害のそれだ。
 水面の高さは三~四メートルくらいだろうか。その密度と流れる勢いだけで、全ての大鎧装が足を取られてしまっている。
  歩兵部隊も沈んでいるが、皆フェイスシールド

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神影鎧装レツオウガ 第四十話

神影鎧装レツオウガ 第四十話

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Chapter06 冥王 04
 ずしん。
 重く巨大な音が、イーストエンドに響く。
 足音だ。ホバーモードを解除したディスカバリーⅢ小隊が、一斉に地面を踏みしめたのである。
 数は三、後続無し。随分控えめな数だが、ウェストミンスター区では未だキクロプス達との戦闘が継続しているのだ。仕方あるまい。
 無表情なモノアイと銃口が、油断無いチームワークで立体駐

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神影鎧装レツオウガ 第三十九話

神影鎧装レツオウガ 第三十九話

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Chapter06 冥王 03
 時間は少々さかのぼって、冥が地獄の火《ヘルファイア》洞窟へ乗り込んだ頃。
 ランベス橋から北東、直線距離で約六キロ。そこには、高い尖塔が印象的な一軒の教会がある。
 クライストチャーチ・スピタルフィールズ。十八世紀初頭に建築された、この区画のシンボルだ。
 馬上槍めいて青空を突き刺す尖塔は、二十一世紀の今日においてもなお

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神影鎧装レツオウガ 第三十八話

神影鎧装レツオウガ 第三十八話

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Chapter06 冥王 02
 何気ない足取りで、冥は紫色の転移術式を潜る。
 目的地はとある洞窟の内部。BBB《ビースリー》からの提供資料で構造自体は理解していたが、座標設定自体は適当だ。
 ただまぁ、大がかりな出し物をするならここだろう、と。
 冥は洞窟の深部――かつてここを根城にしていた連中が、大ホールと呼んでいた場所に転移先を指定した。
「おや

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