最近のスポーツ新聞に思う①
紙の新聞全体に言える事ですが、スポーツ新聞も部数減が止まりません。新型コロナ禍後にも北海道新聞社が発行していた「道新スポーツ」、西日本新聞社が発行していた「西日本スポーツ」が休刊したのに続き、中日新聞東京本社が発行してる「東京中日スポーツ」が2025年1月末をもって紙の新聞発行を休刊する事が発表されました。
また、大都市圏の印刷所から距離が離れている一部の地域では配送を取りやめたスポーツ新聞が出てきました。北陸では従来福井県と石川県内では市中コンビニで即売されていて容易に入手可能だった「デイリースポーツ」(大阪版)が2023年11月頃から大阪から北陸への配送を取り止めたらしく入手出来なくなった他、2024年9月末をもって大阪から配送していた「サンケイスポーツ」が富山県内での販売を取り止めました。
そのような逆風の中で個人的にスポーツ新聞の生き残りの道を考えてみました。
地方によって違うスポーツ新聞紙面
2000年代以前のスポーツ新聞と言えばまずプロ野球が前面に出ていて、東京版では読売巨人軍贔屓の紙面が、大阪版では阪神タイガース贔屓の紙面が、西部(福岡)版ではソフトバンクホークス(旧ダイエーホークス)贔屓の紙面が多く見られていました。更に名古屋の「中日スポーツ」はご当地の中日ドラゴンズ贔屓の紙面で読者もそれを望んいる節がありました。
上の画像の通り、同じスポーツ新聞でも地域により1面を変えています。広島はどのスポーツ新聞社も大阪本社管内ですが、広島カープと言う地元で熱狂的に支持されているキラーコンテンツがある事から「スポーツニッポン」「日刊スポーツ」「デイリースポーツ」は広島向けの独自紙面にしています。東京では「阪神タイガース推し」として認知されている「デイリースポーツ」は広島では地元紙である中国新聞社で印刷している事もあり、東京版や大阪版での「勝っても負けても阪神が1面」に迫る位の「広島カープ推し」の紙面になっています。
地方面の更なる深化を
このようにプロ野球を1面に押し出してきたきらいのあるスポーツ新聞ですが、現在はプロ野球球団も日本ハムファイターズの札幌移転、仙台を拠点にした楽天イーグルスの新規参入など地方分散が進んできています。
この為か最近は北海道版のスポーツ新聞は従来の東京版紙面から北海道日本ハムファイターズ推しの独自紙面にする事が多くなり、東北でも一部で楽天イーグルス推しの紙面にする事が多くなりました。
地方のみならず、首都圏に拠点を置く西武ライオンズは「埼玉西武ライオンズ」、ロッテオリオンズは「千葉ロッテマリーンズ」となり地域色をより強く打ち出すようになりました。
高校野球は地元民注目のコンテンツ
各都道府県の代表として甲子園で争う高校野球も人気です。
富山県と石川県では新型コロナ禍までは富山市で現地印刷している「スポーツ報知」が「とやま・いしかわ報知」欄を設けて紙面に取り上げられており、定番の筈の巨人ネタをも押しのけて地元の高校野球を1面にしていました。特に2019年に石川県代表の星稜高校が決勝戦まで追い上げた時は決勝で大阪府代表の履正社高校に敗れたものの連日富山県と石川県で出回る「スポーツ報知」は地元紙以上に1面から目が離せませんでした。
新型コロナ禍で一旦高校野球は春のセンバツ、夏の甲子園共に中止になってしまったものの再開した現在は地元選出のチームが全国規模で活躍する様はプロ野球以上に地元の注目を集めている事でしょう。
上の画像の紙面は2023年春の選抜高校野球選手権の結果を報じた山梨県限定の紙面です。人口80万人弱でクルマ社会なので即売主体のスポーツ新聞にとっては決して大きくない市場でしたがこの紙面を出すことによって他紙との差別化が図られて優先的に読者の手が伸びた事は容易に想像出来ます。
プロ野球以上に注目されるJリーグ
野球にとどまらずサッカーもJリーグの創設により各地にプロサッカーチームが誕生し、北陸でさえ現在はJ3ですが金沢と富山にチームがあり、それぞれの地元で人気を集めています。
上の画像はサッカーJリーグ開幕戦を報じた「スポーツニッポン」です。同じ新聞ですが長野県向けと新潟県向けで全く違う1面になっています。
プロ野球の本拠地から離れていますが各県毎のプロ・アマを問わずスポーツをより大きく取り上げてくれると毎日通勤途中で寄るコンビニでも目を引き、手が伸びてしまうものです。
尚、発行元のスポーツニッポン新聞社は2024年3月末を以て長野支局を廃止し長野県内での取材拠点を閉鎖しましたが、それでも親会社の毎日新聞や通信社の取材網を駆使して地元スポーツに焦点を当て続けて欲しいものです。
バックナンバー販売の充実を
このような紙面を出しても地元から離れていたりコンビニに寄れず見逃してしまう読者も少なからず存在していると思います。又、地元民ではなくてもその紙面に注目している人も少なからず存在しているかと思います。
そのような方の為にもバックナンバーを通販でいいので入手の機会を設けて欲しいものです。
現在各新聞社はインターネット上でのバックナンバー販売をしていますが、それでも網羅し切れていない紙面も結構多くあります。上述の長野県と新潟県限定の紙面も新聞社公式X(旧ツイッター)などでの言及はなく、現地に行かないと気が付かなかったものです。
これらの紙面は必ずしも東京や大阪の本社で印刷したものではなく、在庫管理が大変だとは思いますが販売のラインナップに加えて欲しいものです。
機会損失を抑え、マネタイズを
バックナンバーは「古新聞」かもしれませんが、それを欲している人は確実に存在します。
販売不振とされている新聞社にとってはその「古新聞」でさえ価値を持つものです。是非とも通販のラインナップを充実させ、僅かかもしれませんが収益化を試みて欲しいものです。