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あの頃のように、水中でただ漂っていれば良かった波に身を任せ、右へ左へゆ〜るりゆ〜るり浮か…
あの時、空にはまだ星が残っていた。 早朝、気が向いた時だけ散歩をする私は、この日ある光景…
「ベネツィアが舞台の映画、観に行ったじゃない?」「前にも云ったけど、わたしは行ってないの…
貴方と暮らし始めて半年が経つ。私が仕事から帰ると、貴方はいつもテーブルでパソコンと向き合…
ねぇ秀夫、私にウォータークラウンを プレゼントして欲しい。 子供の頃からずっと夢見てる…
「おはよう、知輝」「おはよう、姉貴、あれ、もうシャワー浴びてきたんだ。さてはデートだな」…
海が近い街に住みたい。そう云ったのは私の方だ。家から海は見えないが、ほんのりと潮の香りがする。家は小高いところにある。坂が急なので、私は下の街、もっと海の近くがいい。そう云った。が、夫の洋に大反対された。 「水穂は『塩害』の怖さを分かってないから、そんな呑気なことを云えるんだよ」「知ってるわよ。潮で物が錆びやすいんでしょう?だから、そこまで近くなくてもいいよ」「なら、どれくらい距離?」「距離?え〜と、海から1kmくらい、かな」 洋はため息をついた。「やっぱり分かってないよ
私がまだ、小さかった頃、夏になると必ず、父の田舎に行った。周りの家も、みんなそうで、都会…
「おっちゃん、がんもとコンニャク」「はいよ」「あ、あと卵な」「卵ね」 この店に通うよう…
その日、小学校で担任と俺と母親の3人での、面談があった。内容は進路についてだったが、担任…
僕と砂羽は駅のホームから大海原が迫るように見える町を、目的もなく、ただ歩いていた。 大都…
私の高校に今日から新しい教師が来る。かなりのイケメンで、尚且つ独身だという事で、女子校で…
「えっ、初恋の人?玲子の?」「うん……」「守山先生が……そうなんだ」 窓から5月の風が…
同僚に、無理矢理マージャンに誘われて、気がつけば終電を逃してしまった俺は、仕方なくタクシー乗り場へ向かっていた。「真夜中の路地裏を歩くのは気分のいいものじゃないな。タクシー乗り場までの近道だから、仕方なく通るが」 しかし、どうしてこうも殺伐としてるんだろうか。昼の顔と夜中の顔が全然違うのが、容易に想像がつくのが路地裏なんだろう。 カタ…… ん?いま何か音がしたよな。俺は脚を止めて、振り返った。誰もいない。まぁいい、早くタクシーに乗って帰ろう。 俺はまた歩き始めた。