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紗希の超短編集 1

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今が2020年なので、私が小説を書き始めて2年を過ぎました。私は家族、家庭としては壊れている家に生まれ育ちました。 初期の作品は、どれも子供の頃の私の気持ちが反映されていて、かな…
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記事一覧

向日葵や桜や

公園の樹々があちこちで、芽吹いてきた。今日は北風で寒い日だったけど、今年も春は、耳を澄ま…

紗希
2年前
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乗り越える時まで

学校に通っていた。 簿記を習うために。社会人1年目の私は、会社の仕事が、右も左も判らない。…

紗希
3か月前
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【詩】 ただ漂っていれば良かった

あの頃のように、水中でただ漂っていれば良かった波に身を任せ、右へ左へゆ〜るりゆ〜るり浮か…

紗希
4年前
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悲しくて尊い時間

あの時、空にはまだ星が残っていた。 早朝、気が向いた時だけ散歩をする私は、この日ある光景…

紗希
1年前
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いま行くからね

僕の姉は子供の頃から大の動物好きだった。残念ながら獣医になるには偏差値が足りなかったよう…

紗希
1年前
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氷花

このところ、雨の降る音が聴こえない日はない。雨音は、ぐっすりと眠らせてくれた。以前はーー…

紗希
2年前
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傘が全く役に立たない。それどころか自分が飛ばされそうな強風。雨は横なぐりに降るから目を開けるのも大変だ。電線が、命を得たのを喜ぶかのように、大きく自由に跳ね回る。「早く建物に避難しないと」 飛んでくる看板や幟を避けながら、ようやくビルの中に入れた。全身びしょ濡れだ。髪もシャンプーしたあとのようになっている。顔をいくつもの雫が伝う。「涙のようで、嫌だな」 着替えたい。このままじゃ風邪を引きそうだ。初めて入ったビル。見るとわたし同様に避難したらしい人たちがコーヒー店で休んでい

青い欠片(かけら)

「十番館パフェやっぱり美味しい」私がそう云うと、向かいに座っている香奈は、ある物をヒラヒ…

紗希
3年前
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サンクチュアリ・聖域

朝5時僕は日課のウォーキングに出発する。妻の純子はまだ夢の中だ。祖父母の残した古い平屋の…

紗希
2年前
24

 幽捨 (ゆうしゃ)

朝おきて直ぐにテレビをつける。ニュースを見るためだ。「まただ」このところ、毎朝どこかの電…

紗希
4年前
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#影 帽 子

生まれて最初に住んだ家は、あちこちから廃材を集めて、祖父が建てたと訊いている。プロの大工…

紗希
4年前
22

【詩】  弓矢

色々な『想い』が、あちこちに散らばっている。『喜び』は、あっち『恐れ』は、そっち『嬉しさ…

紗希
4年前
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エッセイ 《自動車免許証》

今回、私は自動車の免許証を、更新しませんでした。まだ、返納するほどの歳ではないと思います…

紗希
4年前
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#【優しく微笑みたい】

その青年は、道端に落ちているゴミが気になるらしく、どんなに小さなゴミも見落としはしない。 一日中、歩き回り、拾っている。相当な距離を歩いているためか、かなり痩せている。 “青年“と、云ったが、帽子を目深に被っているので年齢の見当が難しい。 町内では有名なので、彼がゴミを拾いながら歩いていても、ジロジロと見る人はいない。 真夏の炎天下でも、凍えそうな真冬の日でも、彼は歩いて周る。正直、私は彼を見かける度に、痛々しく感じてしまう。 精神的な病いだというのは、一目で分かる