【詩】 弓矢
色々な『想い』が、あちこちに散らばっている。
『喜び』は、あっち
『恐れ』は、そっち
『嬉しさ』は、そこ
その考えは、あながち間違いではない、そう思っていた。
木枯らしが、路面に散らばる枯れ葉を、くるくる回転させながら、一つにまとめる。
あぁ、そうなんだ。
散乱していると思っていた『想い』は、本当は一つなのだと気付く。
それならば、一つにまとまった想いは、光の矢になって、貴方に放つことも、できるかもしれない。
もっとハッキリ云おう。
光の矢は、貴方を射抜くことが、できるだろう。
最近、貴方は睨むような目で私を見る。
私はずっと、貴方のことが、どうしようもなく怖くて仕方なかった。
貴方の、その怖さが、これまでいったい、どれだけ私の心を痛め付けてきたか。
貴方は知る由もない。
《私は貴方が嫌いだ》
だけど、心底嫌いにはなってないのだ。
嫌いなのに。何故なんだろう。
本当に嫌いなのに。
もう離れたい……のに。
🏹🏹
2年前、私は好きなことを見つけた。
病気で外に出ることがあまり出来ない私でも、家に居ながら出来る好きなこと。
私は熱中した。楽しくて仕方がなくて。
そんな私を、彼はよく思わなかった。
『睡眠時間を削るまでやることか?』
『キミの具合が悪くなったら、俺の世話が出来なくなるのが嫌だ』
その言葉には私を思いやることなど、何もなかった。
全部、自分のことだけで。
それでも辞めない私を見て、彼は苦々しい顔で私を見た。
今もそうだが、私は一人で電車に乗ることができない。
よほど近ければ別だが。
貴方と出会った頃の私は、今よりずっと
症状が重い時期だ。
それでも、今と違って私は貴方が好きだったから、2人であちこちに出かけた。
貴方は本当に優しかったね。
プロポーズしてくれた時、私はこう云った。
「私はかなり、病気が重いから、家事は出来ない、この先もずっと。寝込むことも多いと思う」
貴方は云った。
「キミが病気が治らなくても、構わない。
家事は俺がする。気にしなくていい」
貴方のお給料が、かなり少なかったから、籍を入れることは、しなかった。
指輪もなかった。
それでも私は構わないと思い、貴方と一生、やっていくのだと自分に誓った。
この頃から既に、貴方の『短気』が、チラホラと見え隠れしていた。
辞めておけば良かったのだ。
初めて会った時の、直感を信じれば
良かったのだ。
貴方とやっていくことを。
結局、家事は私の高齢の母がやってくれることになった。
貴方は、『音楽』という、趣味を超えるほどに熱中するものを持っていた。
私など、必要なかったのだ。音楽さえあれば。
🏹🏹
少し疲れた。
最近は日が伸びて来た。
来月は桜の月。
あの、冬の木枯らしの時のように、 桜の花びらは、くるくる回転して一つの小さな山をつくるのだろか。
その頃には、心底、貴方のことを嫌いになっていたい。
人を嫌いになることを願うだなんて、おかしな人間だと思うだろう。
私がここまでになるには、それなりの理由がある。
貴方の中の、短気の種は、どんどん成長して、地元だろうが関係なく、気に入らない店の店長さんを呼びつけて、周りに人が居ようがお構いなしの勢いで、大声で罵声をあびせる。
そう……。
最近ではその罵声を私に浴びせるようになった。
私は壊れ始めている。
逃げなければ!
本当に立ち上がれなくなる。
お願いだ、貴方を心の底から嫌いにさせて!
誰か、この人のことを、矢で射抜いて!
二度と、私に『優しい言葉を』掛けられないように。
桜舞い散る。
そして
暑い夏が来る。
(完)
☆☆この記事は削除する予定でしたが、残すことに致しました。こんな内容の記事に、たくさんのスキをありがとうございます🙇♀️✨✨☆☆
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