【詩】 ただ漂っていれば良かった
あの頃のように、水中でただ漂っていれば良かった
波に身を任せ、右へ左へ
ゆ〜るりゆ〜るり浮かんでいるだけで良かったね、あなたとわたし。
くっついたり、離れたり、時にはかなり流されて驚いたこともあったっけ。
それでもまた、いつの間にか一緒になっていた。
目に映るあなたが、真実だと思ってた、それがわたしの誤ちだと、ずっと後になってから気がついたの。
きっとあなたも同じだったんだ。
あなたの目に映るわたしが、わたしの全てだと思ってたでしょう?
『大事なものは目には見えない』
星の王子様に学んだはずなのに、ちっとも活かせてなかったよ。
胸が痛い。さっきからずっと。
傷付けるつもりなど、まるで無かった。
でも、現実に私が傷付けた人がいる。
好きな人だったから、余計に悲しい。
だって、自分が何をしたのかが、分からなくて。
これって……サイテイ。
いつも一番大切なものを、見ていないんだ、わたしは。
『失ってから気付く』
嘘
だって未だに気付けないでいる人間が、
わたしだから。
ゆ〜るり ゆ〜るり
水の中
波任せ 風任せ
悪気がなくったって、チクンと針で刺された方は痛い。
《刺すつもりじゃなかったんだよ。》
分かってる。でも、やっぱり痛い。
体中、悪気の無い針の痕がある。
その一つ一つが何だったのか、わたしは忘れられずにいる。
もっと大切なことは、直ぐに忘れるのに、
忘れていいこと、忘れたほうがいいこと
そんなのばかり、身体に溜まっていく。
あなたは今も、誰かのことを、悪気の無い針で刺している?
あなたを責めたわたしも同じだったよ。
悪気の無い針
わたしの体から離れて、遠く遠く、水平線の、その先まで流れていけばいい。
わたしは、死ぬその日まで、針の無くなった体で、ただ漂っていたい。
もう、誰も傷付けたくは……ない。
了
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