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僕らのいくどん

僕の故郷は東京の西の最果てにある「町田」という街だ。町だ。およそ10年前に新天地での生活を始めるまでずっと住んでいた、切っても切れない縁の深い街だ。

「西の歌舞伎町」だとか「西の渋谷」だとか、妙な2つ名があったりするのだが、天下の大歓楽街の名を語るにはちょっと生活感がありすぎる気がするし、流行最先端の「若者の街」というより「学生と飲兵衛の街」だと僕は思う。
(あと、LUNA SEA。)

神奈川県にニュッと食い込むようなポジショニングをしているため、23区内の方々からは「東京だったのね」と言われる。そもそも東京に「市」ってあったのね。まで言われたこともある。大いなる憤慨。

また20年前当時は、
絶滅危惧種に指定される「暴走族」が活動しており、相対的に不良が多かった。中学生(カモ)にとってゲームセンターなどまさに命懸け。不良(ハンター)と目が合えばジ・エンド。所持金と左頬を差し出す羽目になる。

そんな恐ろしい捕食者たちが徘徊するサバンナ町田生活のおかげで僕は「しろ目」で人を見ることができるようになった。このスキルを習得すれば「何見てんだコラァ。」を回避することができる。

そこまでしてゲーセン行かなくてもいいじゃないの、という意見は至極ごもっともだが、我々はビーマニがやりたくて仕方がなかった。ユーロビートをクリアしたかった。成し遂げたい夢のドリームがあったのだ。

話を少し戻そう。
だいたいね、「西の〇〇」「西の〇〇」って虎の威を借る狐じゃないんだからさ。あんた。自分を持ちなさいよ。ええ、109も退散しちゃったしさ。何かないのかい町田さんよ。と。

これがあるんですね。
町田アイデンティティの結晶みたいな店が。

それが僕らの「いくどん」なのである。

小田急線町田駅の東口から徒歩3分。カリヨン広場(謎のネーミングセンスだ)から路地を渡った先に昼間っからモクモク煙を吐き出す、おしゃれと無縁の古民家風大衆ホルモン焼き店。

創業から40年スープ、キャベツ、ウーロン茶無料。開店11時からモクモクの店内で新鮮なホルモンをガツガツいただける、まさに庶民の味方。最後の砦。(数年前まで金・土は24時間営業だった。狂。)

僕は子供の頃からいくどんに連れて行ってもらうのが楽しみだった。

ここで、いくどん歴30年オーバーの私からいくどんを楽しむ心得を3つお伝えしよう。

一、キャベツは生で食べるべし
(焼いてタレつけても旨いけど生で食べると胃もたれ予防になる。)

二、スープはほどほどに
(やたらに喉が乾くため、お酒が進みすぎ泥酔してしまうため。)

三、シロとカシラを中辛で
(メニューにないけど自信を持って伝えよう。卓上のたれも2種混ぜると大変良い塩梅。)

ああ、隠れた名品「牛ハラミロース」も捨て難い。
とか、語りだすと止めどがないためこの辺りで筆を置くことにする。

近隣に御用の際はぜひお立ち寄りいただきたい銘店である。

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