見出し画像

応募0の営業事務求人をブランドマネージャー募集としたら、即、首都圏から応募が来た話

これまでも、私のnoteで、キャリア女性雇用というテーマを書いてきました。

また、この記事が取り上げられている記事で、日南市の成功事例が取り上げられています

そこで、参考になるのは、日南市の企業誘致。

日南市の企業誘致をしている田鹿さんに狂犬ゼミ出てもらったときも「調査をしたら、事務職、つまりはオフィスワーク希望の女性が多いのに、地元の求人は工場勤務や庶務みたいな仕事ばかり」ということで、事務職雇用を東京からのサテライトオフィスを誘致することで実現。

フリーアドレスのオフィスで、ラップトップを支給されて、当然私服で働く。テレワークも組み合わされて、子供を預けて働くスタイルにも配慮。ネット使って東京のオフィスともやり取りしながら仕事をする。

ま、普通の仕事なんですが、そういうものが地方にいながら実現される職場がなかったというわけなのです。そうしたら、進出したオンラインメディア企業は進出した翌年には地元高校生向けの就職したい企業ランキング調査で、第二位になった


今日は、その実践例ではないですが、愛知県豊橋市での、当社の経験を書いてみます。


当社の事情として、あま酒などの小売り事業の業務ボリュームが増えてくるタイミングで事務に1名欠員が出ることになり、営業事務募集をかけることになりました。

当初の当社求人がこちらです

【営業事務】
■営業担当のサポート全般
・営業補佐全般(営業同行サポート、商談会の会場準備など)
・提案資料、見積書、集計資料などの書類作成
・顧客様への架電業務や窓口にて受注処理
・販促物、ダイレクトメールなどの作成送付
・受注処理、ネットショップ管理
・事務所来客対応

※PCスキルのある方歓迎

まあ、なんていうか、我ながら「ザ・営業事務」だと思います。「事務職の何でも屋募集」って雰囲気満点ですね。最初は職安に出したりしてました。そして、コロナ前の売り手市場だったタイミングもあり、ものの見事に当初の応募は芳しいものではありませんでした。

というか0です。

ですが、仕事の内容を見ていったとき、営業補佐というものの、結局はお客様のファーストタッチになるという要素に気づきます。また、販促物、ダイレクトメールなどの作成って、大企業だったら当然ながら「広報部」が担当するような、本来クリエイティブな仕事。ネットショップの管理運営も、マーケティングのノウハウが必要なわけです。また、海外からの問合せもチラホラと増えてきました。

そもそも論、あま酒など麹を使った食品の小売り事業の拡充が募集動機だったわけです。

そこで、求人票を以下の通りに変えました。給与待遇などは変えずに、仕事の職種の書き方だけを変えました。その過程で「ここまでのことを任せられるんじゃないか?」と職種を変えずに幅を広げる書き方にしました。

下記はある媒体に出したものですが、概ね他の媒体も字数や形式の範囲で同じ内容です。

実際の変更点

まず、タイトルを営業事務→ブランドマネジメントサポート職としました。

【ブランドマネジメントサポート職募集】
老舗企業の新規ブランド立ち上げを加速する人財を募集。老舗企業が3年前に着手した小売り事業に関する業務全般主担当を担っていただきます。

募集概要と背景も仕事の背景が分るようにしました。また女性も求められていると言うことが分るような書き方にしています。

【募集概要】
創業室町時代、株式会社糀屋三左衛門を母体とする株式会社ビオックの営業企画・マーケティング職を募集します。法人対象のBtoB分野から一般消費者BtoC分野への進出に伴い、既存のBtoB分野についての業務を行いつつ、小売り事業の立ち上げから離陸段階入ったBtoC分野について、離陸を加速できる人材を広く募集します。

【募集背景】
「麹」ブームの高まりにより、あま酒、麹などについて、伝統技術を活かした高級志向の新ブランドを「糀屋三左衛門」にて立ち上げました。こちらは、既存のBtoB分野にないマーケティングが必要になり、特に将来的にこの部分をブランドマネージャーとして担当できる人財を募集しています。

★糀屋三左衛門の一般向け商品は、発酵食品に関心のある女性向け商品となるため、細やかなセンスや企画提案が活きる内容です。新規事業のため、進んで仕事を見つけられる方の力が活かせます。
★株式会社ビオックの商品は食品の根幹となるため、コツコツと取り組む確実性や正確性が求められます。

そして、業務内容の説明において「クリエイティブが活かせる部分」に焦点を当てた書きぶりにしました。

【主業務:ブランドマネジメント業務】
外部コンサルタント、デザイナーなどと協働しながら、糀屋三左衛門のブランド構築事業全般を経営者直下案件として担っていただきます。ブランドの社内外への浸透を図っていただく業務となります。

・付随する業務
●営業・出張同行業務
→ブランドコンセプトに沿った取引先に向けて企画提案をする営業職業務を行っていただきます。営業に同行しサポート業務を行っていただきます。

●広報、広告、パンフレット、販促物のディレクション
→当社における広報業務全般を行っていただきます。また、カタログやパンフレットについては、外部のデザイナーや業者と協力して、当社の商品の魅力が伝わるようなセンスを活かした広告やカタログを企画し、作成、発注、部数管理までを行っていただきます。(簡単なIllustratorスキル、使用経験のある方歓迎します)

●ホームページ管理運営
→外部業者と協力し当社のホームページ、ネットショップ、SNS等について受発注受付からデザイン面、コンテンツ内容の企画や情報の発信、アカウントの運用を行っていただきます。

●商談会展示会ブース運営
→消費者向け展示会や試食会などにおいては来場者接客から、ブースの設営、撤収まで、運営全体をプロデュースするなど、運営総合業務を行っていただきます。

●海外取引先対応業務
→海外取引の増加に伴い、海外のお客様からの問合せへの対応、仲介業者との受注伝票や資料のやりとり(簡単で定型的な英文メールのやりとりです。一般大卒程度の英語力で対応可能です。)

●営業データ分析・資料作成補助
⇒営業員が使用する為の提案資料や、お客様から依頼された資料の作成、日々のデータ作成、入力と出力されたデータによる分析を行い、業務が円滑に進められるようサポートをおこなっていただきます。(Word Excel PowerPoint スキル必須となります)

●電話、窓口応対業務
→電話、あるいは当社来訪のお客様に対して、電話口や窓口にて直に発注を受けたり、問い合わせにお答えしたりするなどの、内勤対応を行っていただきます。

●一般事務・庶務業務
→電話、ファックス、メールからの受注内容を適切に把握し、受注数量、納期を社内データーベースに入力、伝票を起案し出荷担当者が出荷できるようにする業務、その他、付随する業務を行っていただきます。

求人を出した結果

ほぼ即日でいきなり8名の応募がありました。うち2名は、なんと首都圏からの応募でした。個人情報に配慮する範囲で記載すると、大手百貨店健康/スポーツ売場勤務の方、大手化粧品メーカーの営業の方でした。

その他にも名古屋から(愛知と言っても広いので、豊橋の企業に名古屋から応募があるというのは結構凄いことなのです)、ホテルの会員制ラウンジでのコンシェルジュや、富裕層向け旅行代理店で旅行の企画、などをしていた人からの応募がありました。

多数の選考の結果、大変優秀な人財を採用することが出来、現在も大きく活躍をして、営業に広報にブランディングに、幅広い業務をしてもらっています。

仕事の魅力と可能性を経営者が感じて言語化すること

私のこの経験で、地方に女性が好む雇用がないというのは、「好むであろうポイント、クリエイティブさ」に、経営者層が気がついていないということもあるのかと思いました。

もっといえば、特にものづくりの会社にはおいては、工場とかまさに「技術」、手を動かすところこそが「製品」を生み「価値」を生み「売上・利益」に繋がる、というのはイメージがしやすいのですが、マーケティング/ブランディングの部分は、販促作成とか、営業事務とか、という、手垢のついた言葉の中に、「目に見えないものをクリエイティブしていく創造的な側面があること」が、紛れ込んでしまいがち、ということではないでしょうか。

そして、紛れ込んでしまうと言うことは、結局のところ、「目に見えないものをクリエイティブしていく創造的な側面」を軽視してるから、社内でクリエイティブ部分に着目し、職種として切り出して募集をかける、という発想が出てこない。というと言い方がきついでしょうか?

ぶっちゃけ、「工場現場で働く製造」「直接お客さんと話す営業」以外の仕事は、全部「事務職」だと雑にひっくるめてはいませんか?そして、その雑さ、「クリエイティブは補助職」という無意識の感覚は、結局、色んなところに滲み出ます。

農業も工業も、「ものつくり」って、本来、クリエイティブに溢れまくっていると思うのです。ただ、その「ものつくり」が「形ある有形物体を生み出すこと」のイメージに、偏りすぎている。それが故に、良いモノを作ることには関心が高いが、良いモノとして売れるためにどうするかには関心が薄い。そんな傾向があるように思います。

でも、「ものつくり」って、単に製品を作るってことでなくて、ユーザー観察、市場の設計、デザイン、マーケティング戦略、ブランディング、値付け、パッケージデザイン、、、その全てをひっくるんでこその概念ではないかとも思うのです。

募集する以上は

そのうえで、これは口を酸っぱくしてお伝えしたいのですが、「募集要項だけ取り繕うのが一番ダメ」です。単に応募者が来れば良い、と言う話ではなくて、クリエイティブ方面に会社として力を入れたいと、会社の方針、組織自体が本気にならないと、入ってみて実態と違う、ということになります。

特に、女性を採用するのであれば、なおのこと、就業規則などをはじめ、組織体系、勤務実態を整備しなければいけないですし、実のところ、規則に載るまででもないところの職場慣行の部分が一番肝だったりします。

それらは、相互に連携していますが、何より重要なのは経営者が、クリエイティブを、仕事の中の創造性、社員の企画力を尊重していく一貫した姿勢を方針として、経営者が腹をくくること

これが一番大事です。その一貫の中に求人があること。求人票の書き方だけ変えれて人を集めれば良いっていうお手軽な話ではないというのは、お伝えをしておきたいと思います。

会社として、社員の創造力、クリエイティビティ、企画力を尊重していく風土が生まれれば、自然と男女問わずそういう人財が集まるなかで、男性にも女性にも働きがいのある職場になっていくのではないでしょうか。

最後に

でも、しっかりした「ものつくり」も大事です。むしろ、しっかりした「もの」があってこそ、周辺のクリエイティブが発揮できるのです。

ものつくり側、生産職の当社の新卒募集課題へのリンクを張っておきます。

今日の話はここまで。

最後までご覧いただきありがとうございました。 私のプロフィールについては、詳しくはこちらをご覧ください。 https://note.com/ymurai_koji/n/nc5a926632683