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『発酵的アプローチ』と、『ダイバーシティー組織運営』

 実は、こう見えて、一応専攻が経営学だったので、今日は『発酵×組織運営』の話です。

『並行複発酵』の回で、日本の発酵食品は、まさに、その発酵の過程において、食品の中で複数の微生物たちによる小さな生態系をつくっている。と、書きました。つまりは、日本の発酵のアプローチは『生態系・エコシステムづくり』といって、過言ではないと思います。


私たちが、微生物に命令するわけにはいきません。むしろ、微生物は勝手気ままに動いていて、その結果を私たちは受け取っています。微生物が「さあ、僕は今からデンプンを溶かして糖をつくるぞ!」とか「今から糖をアルコールにしてお酒にするぞ!」とか、考えてはいないです。彼(性別?)らが自分で必要だと思ったからこそ、自分のために動いているわけです。

さて、現代の組織ではいわゆる上意下達型のリーダーシップが否定され、「多様性」の時代、「個性」の時代ということで、組織のメンバーの多様な個性をどうマネジメントするのか?がリーダーシップの要諦とされてきています。

そう、今後、組織のリーダーは『命令/指示』で動かすのでなく、メンバーの自発性を発揮させ、メンバーの個性をどう発揮させるかということが重要になってきます。

そして、現代はVUCAとも言われる不確実な時代。『社会全体として望ましい方向が決まっているので、あとは、その正解に向かって一直線に突き進むために、組織の方針から末端の命令まで如何に早く正確に指示命令が行き渡り遂行されるか』という体制よりも、『環境の変化に応じて、個性の集合とネットワークが柔軟に変化し、生成物を変えながらも、望ましいところに着地する』という、まさに発酵タンクのようなアプローチこそが望ましいのではないでしょうか。

一方で、多様性を発揮し、個性を発揮させていたら、組織がバラバラになる。特に、組織としての方針があり、細かな指示命令で動いていく組織に慣れた人にとっては、『個性の発揮=ワガママ』という捉え方をしがちかもしれません。組織としての目標が達成できないと感じるかもしれません。

ここで、重要なのが、『環境を整えて個性を発揮させながらも、複数の個性が連携をしあって、結果として目的の成果物になるよう誘導する』という『発酵アプローチ』だと思います。

実際に、麹菌、酵母菌、乳酸菌が勝手に活動していても、それぞれの醸造メーカーごとに個性の違う商品が販売されていますし、醸造メーカーごとの個性というのは確実に存在します。つまり、『蔵として望む成果』にむかって、ちゃんと微生物たちの働きを誘導し、統合しているわけです。

「環境を整えて、個性を発揮させ、複数の個性を統合し、望ましい結果に誘導する」という発酵アプローチ。指示や命令による組織運営ではなく、環境を操作して成果を統合する感覚は、ダイバーシティーマネジメントとして、ビジネスリーダーとしても、役に立つ感覚なのではないでしょうか。

是非、ビジネスマンの方も、麹を造って、味噌や醤油を自宅で造ってみていただいて、この感覚を養っていただくのも良いのかなと思います。

今日の話はここまで。

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