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企画を具体化できる力と、曖昧になった制作ディレクション / #nanocolor週報

依頼主は誰もが知っている超大手企業。先日の金曜日に、今月最後の撮影がありました。Webの販売ページ(LP制作)に使用するスキンケア商品の素材撮り。販促戦略の提案・制作・撮影・運用を合わせ、全体の発注額がかなり大きい。やると決めた瞬間からプロなので、失敗は許されないのだ。

結果的に撮影は無事に成功はした。
でも、現場での心境はもうそれはだった。

万全に準備したはずなのに全然至ってなかった点。途中参加の川端さんをはじめプロに助けられなければ、今ごろカーネルサンダースのように道頓堀へ流されていたかもしれなかったのです。

・プロのカメラマン2名+アシスタント・マネージャー3名
・プロのスタイリストさん1名
・クライアント企業担当者2名
・パーツモデル1名
・撮影ディレクター弊社3名+アシスタント2名

当初はこれだけ大勢の人数が集まることを想定していなかった、という言い訳の上で、どんどん領域を広げていって手に負えなくなったディレクターの学び話です。

初めに意図を伝えろ

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イメージカットのすり合わせは事前にクライアントさんにしたつもりになっていたが、実際に撮ったカットを一緒に見ていると、どうも70%くらいしかしっくり来ていなそうな反応。んーなぜだ。120%満足してもらいたいのに、残りの50%どこにいった。何が欠けている?探す、探す。

「このイメージを見たユーザーに何を伝えたいのか?」

ああ、来てしまったこの質問。こんな質問にはロジックじゃ説明できない。論点がずれてしまっている原因はなんだ。こうなってしまったら、感覚値の域を出ないんじゃないのか。感覚値は感覚値で良いんだけど、その前提が空っぽなんじゃないのか?
となると、この領域でジャストな感覚値回答は無いんじゃないの。みずみずしく、すごそうにみえる、と答えたとしても求められている気はしないし、それは自分自身の感覚値
水の深さか?商品の角度か?波の高さか?でも波の高さを出すとひとつの波の塊が大きくなって、波同士がぶつかって商品がびちゃびちゃになるんじゃないの?それほどコントロールできる波なのか?…

と、「負の具体的ループ」に陥る。

あれ、この光景は先週見たことあるぞ…

完全にこの状況やないか!と思い出しました。

欠けていたのは、事前に撮影の意図を具体的に伝えること。

原点立ち返り。今回は、ブランドとも切り離した「完全に販促に振ったデザイン」が必要で。そのためには購入素材じゃ表現できないから撮影をして、サイトのデザインの素材にするわけです。軸はハッキリしているので、あとは文字をどの位置に配置することがを理解した上で、必要なポイントを伝えておけば良いのです。

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◆LPに使用する素材のイメージカットを再現したいときの「意図」
【なぜ撮るの?】Webで使用するための素材作り。
【どうやって撮るの?】スマホユーザーがメインのページだから、縦撮影
【何を撮るの?】
・水は下。商品を真ん中に固定。波の影は下部。
・上部はコピーを入れるから空けておく。左右は、上部のコピーが収まる幅に。引きだったらトリミングが後でできる。
・商品近くに波を立てる。「浮いてる感」はそれだけでOK。


プロにこれを伝え、お任せするだけで一瞬で撮れました。で、クライアント担当者に見てもらって一瞬でOK。あれ、さっきの波の高さの話はなんやったんや…

カメラマンやクライアントを巻き込んで「そうやってエモな表現にするのか?」という終わらないエモーションの追及を現場という限られた時間と場所でやってしまうとは、いったいなにごとだ。

その意図は、「誰にとっての100%」なのか?


これって普通に会話してても起こる問題だと思います。例えば、デザイン。ニシザワさん(弊社先輩デザイナー)との日常で欠かせないのが、依頼主へのラフ提出前確認。

デザインを見せてもらって、「何%くらいか」ってやりとりをよくしています。完成が100%だとして、メンバー同士での進捗把握のため。で、気を付けなきゃいけないのは「依頼主にとって何%と見えるのか」という視点。
社内同士で確認しても、依頼主へ目標獲得数から逆算したデザイン設計とその意図が伝わっていないと、デザイナー・ディレクターの主観の域を出ない。

「FVが変わっているようですが、これは事前に山下さんと共有されているのですか?」

ある日、ニシザワさんがこんな質問を受ける。時間的・効能的な便益性を第一に求める仮説ユーザーに売る商品のLPデザイン。背景には、事前に提出したラフFVを変えて、LPに流入するターゲットが求めている期待値を最大化するクリエイティブ・コピーを試行錯誤していた。ぼくはそれを知っていた。でも、依頼主への共有を人に任せてしまっていたのだ。結果、急に変わったデザインが出てきたらそりゃ驚くよねと。

意図が一言漏れているだけで「こちらが勝手にアクセルを踏んだ状況」になりかねない。めちゃくちゃ怖い。レースに勝つためにしても、貸した車で、しかも公道で許可なく超加速度を出したら事故が起こるかもしれないし、助手席に乗っている依頼主はハラハラしてしまう。ぼくらはハラハラで飯を食べているわけじゃない。

理解度や完成度の「70%」って、何との比較?

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(C)日本橋ヨヲコ/イブニングコミックス

自分にとって「完全に納得した!」状態でも、作業に落とし込むと色々な可能性を無意識に広げてしまう。で、自分の中でぐるぐると迷子になってしまうことがよくあります。

だから、10秒悩んで分からないものは、結局自分の中に答えはない。割り切ってしまえ。創作活動じゃなくビジネスなんだから、この時間にもお金は発生。比較対象を自分じゃなく、市場、依頼主やメンバーにしてみる。主語が変われば、言葉が変わる。

nanocolorで語り継ぎたいこと
・プロに囲まれて圧倒的な差を感じる痛みは、文書化して語り継ぐ。
・自分の不足を認めてあげること。認めた人しか差が具体化できない。


人が環境を作るんだなぁといつも考えてます。
環境は、システムにして次に活かせる。この気付きはひとりじゃできないので、習慣に助けてもらう。習慣が続くと、文化に。
理想は、文化が価値を作る。ぼくらのルーツにしておきたい。

nanocolorの日常では、川端さんやぼくがこういった話を毎日しています。そして実は、考え方や取り組みを、ライターの柴田佐世子さんに取材をいただくことになりました。

取材は初めてなので、大変緊張しています。。。でも、もう少しやわらかい言葉で有益なお話ができればと思ってます。


今週の週報はあっさりで行く予定だったのに、おかげさまで毎週コッテリといろいろなことがあり、この有様です。溜まっているといろいろ書いてしまいますね…

感情を小出しにするために、 個人的に #nanocolor日報 もはじめました。


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