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ヤマギシの軌跡

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中の人、山岸のすべてがここに。
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2018年2月の記事一覧

おもいで-中学受験 第1話

おもいで-中学受験 第1話

プールの授業後。

電気が消されたままの教室は、緑色のカーテンから漏れるやわらかい光で満たされている。

そんな優しい空気につつまれながら過ごす休み時間。

こどもたちはみな、次の授業に備えてせかせかと着替えている。

そんななかおれは、フルチンで教卓の上に立ち「粉雪」を熱唱していた。

「こなぁあああぁあああああゆきぃぃぃいいいぃいい」

「ちょっと!カナタくん!」

「ここぉろまぁでしぃいろく

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おもいで-オトナって

おもいで-オトナって

「カナタくん!よしなさい!」

「なんで!なんで見れないんだよ先生!」

「いいからよしなさい!」

その言葉が何を意味するのか、当時は知る術もなかったのだ。

30分前。

小学生のぼくは、パソコン室にいた。

「インターネットを活用して調べ物をしよう!」という授業があったのだ。

自分で決めたテーマについて、パソコンを使って調べる。

そしてそれをレポートにかいてまとめる、といったものだった。

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トレーディングカードゲーム・ケシバト

トレーディングカードゲーム・ケシバト

小学校のとき、とりわけ夢中になった遊びがある。

言わずと知れた王道ゲーム、ケシバト。

「いや、しらねーよ!」というエイリアンのためにざっくりと説明しよう。

用意するのは、消しゴムだけ。あとは、机などの面が限られた空間(これを、フィールドと呼ぶ、なんかイケてるから)さえあれば遊ぶことができる。

ルールは至って簡単、ひとりずつ交互に自分の消しゴムをはじき、相手の消しゴムにぶつける。

相手をフ

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おもいで-踊り場事件 最終話

おもいで-踊り場事件 最終話

「ちがっ」

「とうさんっ」

束の間の出来事だった。

むなぐらを掴んだ左手は、僕を離そうとはしなかった。

「友達を家にあげるなとは散々言っていたはずだ」

「ちがうんだっ、そういうイミじゃないっ」

錯乱状態の中、ぼくはただ、いたずらに声を発することしかできなかった。

「あれはチガウんだっ」

「何が違うのか説明してみろ」

「あれはっ...あれは友達じゃないッ(ヤケクソ)」

もう何をし

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おもいで-踊り場事件 第二話

おもいで-踊り場事件 第二話

午後3時。

少年たちは、二階の一室にいた。

親のいない家。

誰にも指図されることのない閉空間。

むしろ絶好のたまり場なのだ。

たしかあの日は、友達7人くらいを家に呼んで、プレステ2の太鼓の達人に夢中になっていた。

曲をえらぶドン!

今日は”テイレイケン”というオトナたちのイベントがあるらしい。まったく無縁の子供たちにとって、いつもより早く帰って遊べる日でしかなかった。

笑い声が聞こ

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おもいで-踊り場事件 第一話

おもいで-踊り場事件 第一話

我が家には様々なルールがあった。一部、ざっくりと紹介しよう。

「門限は5時!」

父「一分でも遅れたら、締め出すからな」

家から二分の公園で遊んでいて、気づくと5時になっていたことがあり、「あっ!やべ!」と思い家に帰る。

5時2分。まさかとは思ったが、

開かない

「お小遣いの範囲で生活しろ!」

父「月々のお小遣いは、一年生は100円、二年生は200円。六年生で600円だ。

いいか。俺

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おもいで-父・マサト

おもいで-父・マサト

遊戯王というアニメが嫌いだった。というか、怖かった。

なんこれ。髪の毛とかどーなってんの。おまえポケモンかよ

マガマガしい作風といいビジュアルのキモさといい、なんでみんなあれに夢中になるのか、さっぱりだった。

しかし、理由はそれだけではない。そこには、父の存在があった。

小学校低学年のころ、両親が共働きだったため「学童保育クラブ」なるものに収監されていた。

毎週水曜、午後六時。みんなが遊

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おもいで-小学校時代

おもいで-小学校時代

小学生の時は楽しかった。もう楽しかったとしか言いようがない。

というのも、ほとんどなにも覚えていないのだ。

なにをしていたのか、どんなことでホメられて、怒られていたのか。

断片的にしか覚えていないのに、「楽しかった」という後味だけが残る。

そう、それはまさに夢のような感覚。

「どんな夢をみてたんだっけ。ワケもわからず高まるバイブス卍」

こんな感覚、後にも先にも、もう味わえないんじゃない

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