おもいで-父・マサト
遊戯王というアニメが嫌いだった。というか、怖かった。
なんこれ。髪の毛とかどーなってんの。おまえポケモンかよ
マガマガしい作風といいビジュアルのキモさといい、なんでみんなあれに夢中になるのか、さっぱりだった。
しかし、理由はそれだけではない。そこには、父の存在があった。
小学校低学年のころ、両親が共働きだったため「学童保育クラブ」なるものに収監されていた。
毎週水曜、午後六時。みんなが遊戯王にくぎ付けになっているとき、おれは気が気でなかった。
お父さんが迎えにくる。
一週間のうちこの日だけ、父が学童に迎えに来る。
もうそれだけで一日ナーバスなのだ。給食がカレーだろうと揚げパンだろうと関係ない。
それなのに、遊戯王なんてマガマガしさの象徴でしかない。
一体何をそんなに恐れていたか、想像もつかないことだろう。
以下、その恐ろしさに迫る。
すぐおこる
「今まで何をしていた!」
「我が家の門限は5時だ!」
「ソファーのへりに座るな!」
「まっすぐ歩け!」
たたみかけるような低音ヴォイス。怒っているときは、通常の2オクターブ低いので「あっ、お父さんまた怒ってる」とすぐわかる。こわい。
すぐなぐる
得意技はひらてうち。
あの人力加減を知らないからなんかすごいことになる。あと、たまに高いところからなげられる。
いたい。
いちいち言ってることがムズイ
神経質すぎる説教、無慈悲な暴力を差し置いて、なによりヤマギシ少年を苦しめたのがこれ。
反省しようにも、何を言っているのかわからない。
うるせえ
でんじゃらすじーさんとかいけつゾロリしかまともに読んでいなかった少年には、言っていることの意味が理解できない。
そもそもこのセリフは、最近似たようなことを言っていたので記憶している。
小学生に到底通用する理論じゃない。
「だって...クラスのともだちみんなもってるんだ」
「お前の言う、みんなって誰だ」
「えっと...ヤコくんと、ヤマダくんと...」
「結局お前の出席番号両隣の二人だけじゃないか!!」
理不尽にも程がある。
ようするに父の怖さのゆえん、説教の大まかな流れはこうだ。
① キレる
② 呪文を唱える
③ なぐる
もう、頭でも体でも理解できない。
そして何を反省すればいいかわからず、同じことを繰り返してしまう。終わることのない負のスパイラル。
最近は海外に単身赴任しているおかげで、滅多に会うこともなくなった。
とうさん。ぼくはこんなに大きくなりました。(昨日会った)
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