ええで！と言い切れない

今朝のNHK「あさイチ」では「移住」をテーマに特集していた。埼玉県小川町への移住例や都内と群馬県みなかみ町での２拠点移住、「ワーケーション」「デュアルスクール」などコロナ禍で多様化する移住スタイルの良さを紹介していた。この記事をご覧の方でも今移住を考えている人がいるのかもしれない。ただ、あまり考えず移住した結果、カルチャーショックに陥る人も珍しくない。放送中で紹介された視聴者のメールでも「良いとこばっか紹介し過ぎじゃないの？」などと厳しい意見が散見され、MCの大吉先生は「いつか、そういう面もやらないとね」と〆括りのコメントしたほど。たしかに、それは僕も激しく共感したし、母もそう陥ってしまったエピソードがあった。そんな僕の地元滋賀県長浜市高月町を例に、考え得る不便さやメリットを綴っていく。是非とも移住の参考材料にしていただけたら幸いである。

交通面

高月町に引っ越した当時、電車は１時間に１本、バスは更に運転間隔が広いからクルマの方が良いし、マストアイテムだ。故に「ペーパードライバー」だった母は移住を機に講習し直し、父親ほどではないが、それなりに運転できるようにはなり、買い物、送迎などで習慣もついた。2006年に新快速が念願の乗り入れを果たして以降は増発や行き来のしやすさが高まって改善した面もあるが、バスは現状維持。増発も一部元に戻された。けれども京阪神に直通する新快速があるし、朝の米原方面と夜の木之本方面は増えるだけまだマシなように思うし、僕の父始め遠距離通勤する人は珍しくない。引っ越した当時よりかは、交通環境はちょっと良くなった。

生き物

田んぼには何種類ものトンボがたくさん飛び、夜になればカエルの大合唱、見たことはないが、田んぼにはタニシがいて、僕のじいちゃんが食べてたとかなかったとか。それぐらい生き物に恵まれている。その一方で、スズメバチはしょっちゅうで車庫に巣を作っていたこともあったし、小学校ではシロアリが出て廊下の一部が封鎖されたこともあるなど、ネガティブ面もある。嫌な人は嫌だし、カエルの大合唱を「騒音だ！」と裁判所に訴える人もいるほど。それでも、こういう環境は子どものうちに生き物の多様性や生態系のバランスを学ぶ上では大事なことなのだとも思う。

除雪

そして、地元や日本海側、北日本ならではのこととして、除雪の手間がある。京阪神だと１年に１回、首都圏だと１年に１度降るか降らないかというぐらい雪が少ない地域だと、数㎝積雪で列車のダイヤが大幅に乱れたり、ノーマルタイヤでスリップするなど交通障害が頻発する。その何倍の雪が地元では降って、除雪をしないとクルマが出せないなど、何にもできない。我が家ではシャベルは普通のやつ、幅広のやつ、子供用など何種類も用意している。
クルマもチェーンをつけるよりもスタッドレスのほうが安定するから例年11月ぐらいにみんな履き替える。たしかに、米原のスキー場に行く道中で先を走るチェーンをつけたクルマはガタガタでスピードが出にくかったのもあるし。
雪景色はええもんではあるし、ウィンタースポーツも。ただ、雪国に住むとなったら現実はそんな甘ったるいもんではないし、重労働も伴う。特に長浜市は関西唯一の「特別豪雪地帯」の指定を受けるほどで山合いの余呉町柳ヶ瀬では100㎝積もるのは冬の日常。これらの点は慣れるまでには時間がかかるだろう。

濃い〜コミニュティ

「隣は何をする人ぞ」。母は都会のコミュニティ事情をこう表現していた。それほど、ご近所付き合いが希薄だ。その真逆である田舎の字（あざ）や自治会のコミュニティは非常に濃い。噂とかも伝わりやすいし、僕が幼い頃はいろんなおっちゃん、おばちゃんから可愛がられていたのを覚えている。さらに、成人式の２次会で同じ字で非常に近所の女の子喋っていると、僕の母と付き合いが割と濃いらしく、僕や妹の近況を割とよく知っていた。それほど濃いのが田舎のコミュニティってもんなのかと感じる。中には濃いコミュニティがしんどいという人もいるが、防犯や減災につなげられるというメリットもあるため、必ずしも悪いとも言えない事情もある。

「密」な都会を離れて、田舎で「Ｉターン」「Uターン」「Ｊターン」をする人が増えて注目されているが、必ずしも良いとは言い切れない。中には都会が落ち着くって人もいるし、田舎の良さに魅了されて住み着く人もいて非常に好き嫌い分かれやすいのかも。僕自身は後者であるし、今住んでいる宇治市は鉄道、高速道路など交通が充実していながら、近鉄電車の西側から久御山町の巨椋池（おぐらいけ）を干拓した田畑には多様な生き物がいるから、それなりに住み良くて、５年もいる。「ゲコゲコ」大合唱してるのは「ASMR」みたいなもんで久しく聴いてないと寂しくもなる。
ネガティブ優勢で綴りはしたが、その裏でいい面もあったりするし、雪の日にカマクラ作って、ミスドのグラタンパイ食べたなど良い思い出があるほど。引っ越してから地元に貢献したい思いが強まって、いつか「Uターン」or「Ｊターン」したいと考えている。

とはいえ、移住は考えもんですし、JR西日本の減便は移住する上で影響を与えかねないこともあります。あくまで、僕の地元のことなので、他の記事も参考にして熟考してはいかがでしょうか。