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苦肉の減便

先日この記事で少し言及した2021年10月に予定されているダイヤ見直し。近畿、北陸、山陽、山陰と管轄するエリアの広い範囲で昼間の列車を中心に削減が行われる。コロナ禍で人出が減っていて、特に深夜帯が-59%、昼間が-39%とこれらの減少は顕著だという。

発表された路線のうち京阪神は特定のエリアが指定された。

・琵琶湖線の米原〜長浜間
・大和路線の奈良〜加茂間
・山陽線の姫路〜上郡(かみごおり)間
・赤穂線の相生(あいおい)〜播州赤穂間
・JR京都線の京都〜高槻間
・JR神戸線の須磨〜西明石間

その他、和歌山県内ではきのくに線と和歌山線、北陸エリアでは小浜線と越美北線(通称九頭竜線)中国地方では山陽線(上郡から西側全て)、瀬戸大橋線、伯備線、因美線、境線、山陰線(京都〜園部間以外)が対象となっている。和歌山を除く関西エリア以外は具体的に公表されていないが、7月以降に追加発表などがあるとのこと。

現状の本数

区間が示された場所の現状の大まかな本数(昼間)は…

琵琶湖線…長浜発着と近江塩津発着の新快速が1時間に1本ずつ。
大和路線…加茂発着の大和路快速が30分おき。
山陽線と赤穂線…姫路〜播州赤穂間の普通電車が30分おき、相生発着で上郡や岡山方面に向かう普通電車が1時間に2本or3本。
JR京都線…米原or野洲〜加古川、姫路方面の普通電車(高槻〜明石間快速)が15分おき
JR神戸線…西明石〜JR東西線、学研都市線方面の普通電車が15分おき+JR京都線と共通の快速電車15分おき

関西の減便対象の区間では、少ないイメージあるいは自分の目で見て本当に少ないという区間もある。

↑大和路快速(上)と新快速(下)
大和路線は8両でこの本数の割に空席が目立っているのを見たことがあって、「奈良で半分切り離したらええんとちゃうの?」とも思う。4両+4両ならまだいいが、使っているうちの8両固定編成の行き場がなくなりそうなのが難点だから、減便する方針なのだろうか。
一方で、琵琶湖線は長浜から北に行く人が昼間の長浜行きでは辿り着けない。それで空席になりやすいだろう。

主要区間にもメス

↑JR京都線、神戸線などの普通電車
JR京都線と神戸線のように人口が比較的多く、政令指定都市や大規模なベッドタウンを擁する主要区間まで減便が実施されるのは少し驚きがある。それでも、生活様式の変化は人口の多い場所も例外では無い。
JR神戸線は快速が入る分昼間でも多く、空席が目立ってたのだろうか。減便となると、姫路方面から京阪神、滋賀方面の快速の各駅停車区間を延長して、学研都市線や宝塚線の『区間快速』のようにするのだろうか?
一方でJR京都線は過去に京都発の普通電車が減便された過去があるからどの辺を減便するのだろうか?しかも、琵琶湖線の京都〜米原間は言及されていないからどうやるのかが想像つかなかったりする。それとも、夜の本数の減便もあり得るから、そこにメスを入れるのかもしれない。今は全体のほんの少しだけしか発表されてないので確かなことはわからない。7月以降の続報を待つとしよう。

観光へのダメージの可能性

減便対象の区間には知名度のある観光地を擁する場所もある。琵琶湖線だと長浜市の黒壁スクエア、ヤンマーミュージアム、豊公園など。赤穂線だと播州赤穂駅擁する兵庫県赤穂市に点在する赤穂浪士ゆかりの場所などがある。近畿以外でも魅力的な観光地を抱えている路線も少なくない。ただでさえ、観光が大打撃なのに、この減便による不便さでさらに足が遠のいてしかねない恐れがあるし、自家用車やバスなどへのシフトが避けられない。加えて、琵琶湖線に至ってはSLの運行が終了したことによるダブルで大きいダメージが避けられないことだろう。

反対の狼煙

やっぱりダメージが大きい故に、反対する沿線自治体も現れている。

このうち、名指しされた小浜線と九頭竜線を擁する福井県では地元選出の国会議員が減便の撤回を要望していることが明らかになった。
北陸新幹線敦賀延伸という大イベントを控えている。呼び寄せたお客を若狭地方や九頭竜線沿線にある「越前大野の城下町」などの魅力的場所に引き込むためにも減便という負のループはあってはならない。こんな風に僕は解釈したのだが、たしかに減便になると余計に自家用車にシフトしていったり、行こうにも本数の少ないストレスが大きい。

故郷の減便と洗礼受けた母

僕の故郷の北陸線では2006年以前は不規則に1時間に1〜2本の普通電車が走っていたが、新快速乗り入れを機に長浜〜近江塩津間の昼間は1時間に新快速と普通電車の2本となった。しかし、普通電車の利用が芳しくなく、2011年に昼間は1時間に1本に見直した。それでも、新快速の利便性は維持され、ラッシュ時の本数も維持された。
ただ、我が家では自家用車を使うことがほとんどで、周りでも早くに免許を取った人が多かった。大阪育ちで自転車ですら馴染み無かった母も長浜にIターンしてきたのを機に「ペーパードライバー脱出」を果たした。それぐらい、クルマの方が非常に楽というのが、我が故郷なのだ。母曰く「クルマがないとここでは生きていけない」と話す。

困らなかった電車通い

電車通いの高校生の頃、昼間に列車を逃すと、1時間は待ちぼうけを食らうことにはなるが、長浜駅だと、駅前のショッピングモール『モンデクール』があるし、豊公園や琵琶湖岸で自然を感じられるし、市街地だからブラブラすることだってできるなど恵まれている方だった。
ただ、隣の虎姫駅には高校やホームセンターの「コメリ」がある以外は本当に何もなくて、虎高生はどうやって暇つぶしていたかが気になる。それでも、県北部では知られた進学校だから、勉強するぐらいなら困らないとは思うけど。

エピソードを交えるなど、余談もありましたが、今回はJR西日本が発表した減便について、個人的経験と仮説など綴ってきました。減らされて、不便をとなるとそれが廃線の序章になったりもするのです。関西はまだしもかもしれませんが、反対の声があったように、元々本数が無いところにさらなる減便はなかなか辛く厳しく、余計に乗りたくなくなるスパイラルを起こしかねません。
現時点では情報が少ないですし、プレスリリースでは小っちゃい文字で『など』と書かれていたのでこれはまだ、序ノ口に過ぎないとも思います。また、続報が出たら、こんな風に綴ることがあるのかもしれません。
JRに限らず、コロナ禍の鉄道はどこも厳しいです。切り詰めていくことが正しいとは言いませんが、それほど追い詰められている象徴なのかもしれません。規模が大きいところだと小さいところから切り捨てられて、なかなか声が届きにくかったりもします。
どの路線も残ってほしいというのが地元の人にとっては本音ですけど、先行き見通せない状況下だとそれが通ずるか分からないことだらけです。それでも、感染対策を万全にして乗りに行って、運営会社や沿線の支援をしていったりした方がいいでしょうし、ステイホームしたければ、グッズなどを買ったり、ふるさと納税やお取り寄せで沿線を支援する手もあります。

鉄道好きの僕にとっては、廃止という最悪の事態は避けてほしいところですが、可能な限り乗ったりして、行きたいところ、乗りたいところは後悔しないようにしたいです。

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。