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あげる側vsもらう側〜お年玉攻防戦〜

「お~い、ここのテーブルはもらえるわよ~!!」

點心を運んできたウエートレスのおばちゃんが、お年玉を渡した途端に、恥ずかしげもなく大声でフロアにいる他の従業員たちに向かって大声で叫ぶと、わっと一斉に私のテーブルの周りに群がってきました。

いやいやいや・・アンタ達仕事は!?(-_-メ)

そしてテーブルに置かれたアツアツの點心を横目に20人近く目の前で列をついて並んでいる従業員に、次から次からとお年玉を渡しました。

旧正月の伝統行事、礼是(ライシー、お年玉)は基本独身男女に渡すものですが、ラッキーマネーという縁起物(金は天下の回り物ですからお金が回ってくるように回すのです)なので、マンションの警備員、更に自分のマンションにあるレストランくらいは結構皆配ったりします。

お金を外に回す事が、自分の運気を上昇気流に上げてくれるハズだと私も頭ではわかっています。

でも、例え10~20$(約140円~280円)であっても、親類でもボスでもない赤の他人からお金をもらうのに最低限の礼儀はあって然るべきかと。

(アンタ達、普段から私達がレストラン行っても愛想の一ついう訳じゃなし、私達の顔や名前を覚えようという気もなしのクセに良く図々しく寄って来れるわね。)

何てったって大人なんだし!"(-""-)"


とは言え、この時期のレストランはどこも似たり寄ったりですが。

こっちだって毎年、結構大変な思いをして事前準備をするわけですよ。金額ごとに一つ一つ手作業で袋詰めするわけですから。

やっぱり大事な事はもらう側だけでなくあげる側もいい気持ちであげたいと思うわけです。


気は心

伝統では旧正月15日まで(今年で言えば2月26日まで)がお年玉期間なわけですが、普段から働き者の警備員さんとかに限って、この時期に休暇をとったりして不在なのです。もちろん、そういう誰の目からもよくやっていると思われている人は期間を過ぎてから仕事に戻っても、みんな探して追いかけ回してお年玉を渡します。たかが130円、とかいう話じゃないのです。

誰もケチりたいわけではなくて、ラッキーマネーの習慣にかこつけて普段のお礼がしたいという気持ちもあるのです。

一方その逆もあります。

マンションにはごみ収集をしてくれる人がいるのですが、私の棟のごみ担当のオバちゃんは、普段から怠け者で仕事も適当。

極めつけは毎晩ゴミ収集を夜中の3時に各フロアから回収するのに、回収した大きなゴミコンテナをエレベーターで下ろしながら、エレベーターの中でゴミ袋を開けては中身をかき回して見ると言うのです。

(昼夜逆転の生活をし、エレベーターと入り口に設置されたモニターカメラをテレビで見れるのですが、それを延々見ている義兄から聞きました)

更に、私達のマンションには古着回収ボックスというのが設置されているのですが、ある時服を持って降りると、いつも玄関でサボっているゴミオバちゃんが走り寄って来て「それ要らないなら私がもらってあげる」と言うのです。

「結構です」と言いながら何回かスルーすると、顔を合わせても私には挨拶してこなくなりました。

それなのに、毎年旧正月になると待ち伏せするかのように棟の入り口で、警備員の隣に椅子を置きそこに座って楽しながら、下りてくる人入って来る人を見かけると駆け寄って行く手を阻むように両手を広げて真正面に立ちはだかってとびきりの笑顔で大きな声で爽やかに新年の挨拶をするのです。

・・・いくら何でも露骨すぎる・・・両手を広げてって・・・

もう見ている方が恥ずかしくなるようなゴミおばちゃんのなりふり構わずの姿に、地上入り口(L1階)を通らなくても外に出る事ができるL2階から出入りする人がどんどん増えました。他の警備員はとんだとばっちりです。

私達もそれでもお正月くらいは、と言いながらあげ続けましたが、旧正月以外は挨拶もしないどころかどんどん横柄になり、古紙回収分の紙ごみは他の生ごみ同様、自分達のフロアに出せばよかったものを自分の労力を減らす為、一階に大きなクリアケースを置いて、そこに紙ごみだけを入れるようにと住民に促しました。

ゴミおばちゃんの為に住民がわざわざ紙ごみを一階に下ろす手間をかける、そんな事がまかり通っていました。

そんなゴミおばちゃんも一昨年とうとうクビになりました。

人と人の繋がりというのは、地道に真面目に頑張る人、愛想だけよくて表面上うまく立ち回っているつもりの人、周りの人は見ていないようでちゃんと見ているもので、その差がこの旧正月には歴然と出るのです。

あげる側にも貰う側にも心があって、やり取りするのはお金の形をした感謝の思いなのでしょう。






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