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政府の病院命がけ! 香港の医療事情②

これは昨日の記事の続きです。

私立病院の100%自己負担の、日本では見慣れない高額な医療費。

それに対して、政府が管轄する24時間対応の公立の病院、通称「政府病院」は香港IDさえあれば、政府の資金援助がある為格安で診察を受ける事ができます。

このように資格に符合している人(香港IDがある人)というのは、普通診察一律50香港ドル(約680円)で診察が受けられ、科別の専門医の診察も一律135香港ドル(約1800円)で受けられます。入院も一日120香港ドル(約1600円)の安さ。

なぁんだ、じゃあ政府病院にかかれば日本で保険適用して診てもらうのと同等もしくはそれ以上にお得じゃん、って話かと思うじゃないですか。

(*ちなみに、病院の衛生状況や診察環境は、香港の私立病院が日本のソレに匹敵します。政府病院は格安で建物や設備、備品も年季が入っていて日本人感覚で見ると粗悪な感じです。)

そこに実は香港医療が抱える大きな問題があるのです。

(以下閲覧注意!!汚い表現が含まれますので見たくない人はここで引き返してください。)

 それは、ある時私がダム放水のような原因不明の激しい鼻血に見舞われて、近所にある政府病院に行った時のこと。

当時私は何故か毎日のように突然始まる水道の蛇口を全開にしたようなドド~っと出る大量の鼻血に苦しんでおりました。ホントに毎日ドド~っという感じで出る為、このままいけば貧血で死ぬんじゃないかと思っていました。

その日も鼻から出血する勢いが激し過ぎて、目口からも出血し、鼓膜があるので流れ出ては来ませんが、耳からも血が滲んでいました。

政府病院は色んな症状の患者さんが来ていますので、受付をするとすぐに症状の重さによって診察の優先順位が決められ、色別の順番札が渡されます。

鼻を両方押さえているのに止まらない鼻血で、目から涙のように血が流れ、口にまで逆流して、穴と言う穴から出血している私の順番は比較的早く回ってきました。

私は旦那Kに付き添われながら案内された診察室へ。
時間は夜の22時を回っており、いかにも新人っぽい救急の担当医が、目鼻口から血を流しているワタシを見て途端に嫌な顔をしました。
そして、まずは止血を、と思ったのかおもむろに拡張用の細長いゴムのバルーンを取り出しました。

Σ( ゜Д゜)いやいやいやいや、傷口を拡張してどうする?!💢

それを何の説明もなく「ちょっと痛いですけど」と言い終わらないうちに挿入され、私の鼻の中で、どんどん膨らんでいく黒くて硬いバルーン。


痛過ぎる!!!・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
(よく出産の痛みを「鼻からスイカ」に例えますが正に私のこの状態。)

耐え難い苦痛に体をよじりましたが、何を思ったのか、その若造の医者が
それでも流れ出続ける鼻血に、出血元はもっと奥だとでも思ったのか、バルーンを捻じ込んできたのです。
硬いバルーン器具の先端が、ワタシの喉まで到達して私は完全に息が出来なくなりました。

バルーン器具の先端が喉を押さえて喋る事も呼吸も出来なくなった私

何とかこの状況を伝えようとバタバタしていると、若造の医者は、私が痛みを我慢できないダメな患者と思ったのか、その状況で「冷静になりなさい 」と私にマジ切れ。

こっちの方がマジ切れです。

鼻血を止めるのにバルーンは使わない。こんな素人でもわかる事さえわからない医者がいていいワケがない。

こんな未熟な処置で一体これまで何千人の患者を殺してきたんだ!?と怒りで身体がカッと熱くなりました。

心の中で激しく医者を罵倒するものの、気管を完全にふさがれて喋るどころか息することもママなりません。

私はこの時点で医者とコミュニケートを取ろうとするのを完全に諦めて、私の味方であるKに「息ができない」と伝えようと、身振り手振りするのですが、まさか医者の処置のせいで死にかけているとは夢にも思わないKは、少しでも私の苦痛を和らげようと、私の背中をさすったりしています。

私は必死に上を向いて、何とか少しでも喉に隙間を作って酸素を得ようと藻掻いていると、喉に指突っ込まれてるような状態なので、そこでリバース。

元々激しい出血の最中で、血も半分固まっていますから、
ものすごくおっきな血塊を天井に向かって噴射。その血塊玉はすごい勢いで天井にぶつかって飛び散りました。

するとその瞬間、私の周りを囲んでいた医者と看護婦がクモの子を散らすようにババっと私から離れました。
医者達とは逆にビックリしながらも旦那だけが私に駆け寄ってきました。

その対照的な様子が私の目にスローモーションのように映りました。

若造の医者は「こんな症状は初めて見た!」などと抜かしています。

医者の処置ミスで私は鼻血と窒息で息も絶え絶えになっているのに、単に私が少々の痛みも我慢しないで大騒ぎして、何故か突発的に悪化していると思われている事に腹が立って空しくて深く絶望してリバースしながら「おおおおお~ん」と動物のような声をあげて大泣きしました。

完全な医療ミスなのに、そして、政府病院はロクなモンじゃないと
わかっていたのに(それまでは風邪の救急くらいでしか利用した事がなかったので、まさかここまでレベルが低いとは思ってもみませんでしたが)このまま私が死んだら、私の死の真相は明かされることなく原因不明の大量出血と吐瀉物で窒息死という事。

・・・・犬死です。


死んでたまるか!

そう思いました。

こうして完全な医療ミスで、医者に「こんな症状は今まで見たことがない 」と言わせしめ即入院となった私。
さっきの特大の血塊噴射にすっかり肝をつぶした若造の救急担当の医者は、専門の耳鼻科医師を呼び戻したらしいのです。

私は奥の部屋で車椅子からベッドに乗せられて集中治療。

・・・という流れのハズが、政府病院の人材&設備不足の
成せる技なのか、バルーン器具を喉まで突っ込まれて、
呼吸困難に陥っている私の横で、医者と看護婦たちは、何かの器具を探して、それぞれがバタバタと動き回っているだけで、
「呼吸しようとする度にリバース」という患者の動向を誰一人として注意していません。

「死ぬよりはリバース」と思って血や吐瀉物を口いっぱいに溜めながら、必死で酸素を得ようと藻掻く私を尻目にただバタバタと走り回るスタッフ。患者の周りに誰もいないと言う状態。

私が苦しさの余りベッドの淵をガンガン叩くと
厄介者扱いでその時だけ口腔内を吸引してくれる看護婦。
でも吸引した直後、私は酸素を得ようと呼吸するわけだからその状態が延々続くわけです。ひっきりなしに。

それでもベッドの端をガンガン叩かないと来てくれない看護婦。
せめてずっと吸引し続けてくれていればまだ楽なのです。

とにかく私は生きる為にずっとベッドの淵を叩き続けました。
どれくらい時間が経ったのか、無能な若造に呼び戻された耳鼻科専門医が病院に戻ってきました。

奥の処置室に入ってきて若造の医者から状況説明を受けながら
チラっと私を一瞥して「はい、アーン」と口を開けさせる。
「あああああ~(助けて!!!)」と涙目で訴える私に専門医の年配医は一目見るなり、チっと舌打ちして
「おまえなあ・・ここまで入れるとそりゃ病人は苦しいよ。」と一言。

若造は「お~深く刺しすぎていましたか。」とブツブツつぶやいて無罪放免凸(`、´X)
専門医は「はい風船抜きますよ~」とすぐにそれを外してくれました。

呼吸が急に楽になった私は、さっきの出来損ないをなぐり倒して罵倒したかったのですが「生き延びたー」という安心と疲れで、もうぐったり。

「今日はもう土曜日で、時間も遅いからこのまま観察入院ということで、続きは月曜にしましょう。」
と言われ、鼻にはバルーンの代わりに人差し指くらいの太さで10cmくらいの四角い綿の塊を差し込まれて一般病棟へ。
政府病院の病室は「病室」とは名ばかりですごいだだっ広い空間をカーテンで10ベッドずつ区切られていました。

ベッドを延々足で蹴飛ばしている人、ず~っと看護婦を呼び続けている人、排泄物の匂い。そこは汚くてうるさくて臭くてカオスでした。

日曜日も再び鼻血を出してその対応でひと悶着ありましたが、ともかく問題の待ちに待った月曜日、あれだけの血液を爆発するように噴射したのだから、CTかMRIか綿密に検査してもらえるものだと思っていました。

それなのに「設備が不足しているので」と言って鼻の中を内視鏡検査のみ。

しかも内視鏡検査で「あれ?」という若い女性医師の声。
「鼻に腫瘍がある。」と言うのです。
「日本人には少ないけど、中国人にはとても多い
鼻腔癌かもしれないから組織を切り取りますね。」
と、麻酔をしみこませた綿を二分間私の鼻に詰め込んだかと思うと私の鼻の中をポチっと切ったのです。麻酔が効いているのですごく痛くはないんですが自分の肉が「ポチっ」と切り離される感触はリアルにありました。

そして切られた瞬間、私は貧血を起こして椅子に座っていたのに
その場で気を失って倒れこんでしまいました。

それで一旦退院となって、その治療&入院代。
280香港ドル(約3800円)

さすが!愕然とするほどの納得の安さです。
(請求書を見ると、全体では約10万3800円。そのうち10万円は「政府援助金」となってました。)

だけど安くて済んだ、と喜べないのです。

政府病院・・・それはまるで病院と言う名の公開処刑場。

常に命の危険と背中合わせ。

香港の医学生は最低7年という時間をかけて養成され、その間政府からも援助を受けます。政府も医者の育成に実際に他の学生にはない援助を行っている為、膨大な投資がなされている事に成ります。なので卒業したら医者はまず漏れなく政府病院に勤務しなくてはなりません。しかし政府病院では給料は高くありません。

そうすると実力のある医者は契約期間が終わるとどんどん独立し、政府病院は永遠に学校出立ての新人だらけという構図が出来上がるのです。

この政府病院で一体どれだけの患者が長い待ち時間の間に死に、どれだけ患者が、こうした青二才の救急医師らの間違った処置で死んでいるかを考えると空恐ろしい気持ちがします。

あの絶対ただの鼻のヒダだっただけの「腫瘍」は勿論良性で、その結果を以てあれだけすごい勢いの鼻血の謎も謎のままになりました。

こうした政府病院で日常茶飯事に起こる有り得ない医療ミスは私の身内の分だけでも枚挙に暇がありません。

私の旦那Kもそれよりもずっと以前に耳下のリンパに脂肪球が出来、それを私の鼻血事件と同じ政府病院で摘出した時の事(近所なので)。

その時も若い医師が執刀を担当。

若い医師は摘出に手間取ってしまい何と途中で麻酔切れ。緊急でベテラン医師を呼び手術を続行するも、再度麻酔をかけると危険な為、Kが歯を食いしばって痛みに耐えながら手術をされた事。

 3,4年前に私の詠春拳の師匠が腹部にあるしこりを摘出した際、内部の止血をしないまま縫合され、帰宅した後も縫合されたところから出血し続けた結果、病院に戻るともう一度開腹手術をする羽目になった事。

これは去年の話。旦那Kの友人の娘が出産。若干未熟児ではあったものの出産そのものは問題なかったのに看護婦が間違ってミルクを血管に点滴。ミルクが全身に回って一時嬰児が危篤状態になったのに一週間後、病院からは「病院側にミスはなかった」と説明を受けた事。(点滴間違いなのに病院側にミスなしって誰のミスやねん!?って話)

これらは私の身近で起こった命の危険に及んだのにニュースに取り上げられるまででもない程の小さなミス。

公立病院のあっと驚くような深刻な医療ミス、そう患者が亡くなる程ならニュースになり、上述の私や私の身内の例のように明らかに病院側のミスでもこうして助かれば誰もお咎めなしで過ぎていくのです。

勿論、私の知り合いでも政府の病院で無事に出産した方もたくさんいらっしゃいます。お姑も普通に政府病院でお世話になっています。

だけど私は間違っても「命に別状のない症状なら政府に行ったらいいよ」とは勧められないのです。
なんてったって私自身「鼻血で死にかけた」のですから。

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