伊達善信

伊達善信

最近の記事

2024年埼玉ネウロズでのスピーチ

 今年のネウロズでスピーチがありましたが、トルコ語のスピーチだったので現地にいた人や映像を観た日本人は内容がわからなかったという声が上がっています。録音を元に、トルコ語話者の協力を得て翻訳しました。ここには敢えて私の見解は載せないことにします。以下全文です。 トルコ語によるスピーチ  親愛なる皆さん、そして日本の友人の皆さん。厳しい冬を乗り越え、再び桜の花が咲くのを目の当たりにしています。はじめに、自分たちの土地で生きるのに苦労しているクルド人たち、そして今日ここに来てく

    • タッカー・カールソンのプーチン大統領インタビュー:強いロシアは脅威なのか

      前回はカールソン氏のインタビューのうち、ロシア建国からソ連崩壊までの歴史的経緯を振り返ったところまでをご紹介しました。ソ連崩壊後、米露関係は改善するとの見立てとは裏腹に、冷戦の枠組みは維持された理由について、カールソン氏は米中関係を引き合いに出して、ロシア側の見解を尋ねます。 カールソン:しかし、西側が強いロシアを恐れているという説明しか、これまであなたはしてきませんでした。ところが、強い中国という存在に対しては西側はさほど脅威を感じていないように見えます。ロシアはどうでし

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      • タッカー・カールソンのプーチン大統領インタビュー:ソ連崩壊までの歴史

        タッカー・カールソン氏が行ったプーチン大統領のインタビューの見どころは、やはり冒頭の歴史講義にあったように思う。そこで、今回はカールソン氏も後から真価に気づいたという冒頭部分をまずは翻訳してお伝えする。 カールソン: 大統領閣下、今日はどうも。早速ですが、2022年2月22日、ウクライナでの紛争が始まったとき、あなたは国民に向けた演説で、米国がNATOを通じて「我が国に奇襲攻撃」をするかもしれないという結論に至ったから対処しているのだと仰った。それで、米国人の耳にはこれはど

        • 家族の年

           ロシアでは今年2024年が「家族の年」として宣言された。プーチン大統領は直後の演説で「政府の仕事の出来栄えは主にロシアの家族にとっての利益という観点から評価されるべき」であると述べた。これに触発されてか、昨年末にかけてパレスチナ問題とグローバルサウスの将来に関連する話題で埋め尽くされていたロシアの言論空間で、家族というテーマが再び盛り上がりを見せている。そのタイミングで発表されたのが哲学者アレクサンドル・ドゥーギンの論説記事だ。  ドゥーギンは冒頭、「家族の年」に言及し、

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          サイバー脅威諜報連盟文書(CTIL files)

          背景情報  待ちに待った「ツイッター文書」が順々に公開され始めたのは、2022年の年末のことでした。それから1年経った今、別の内部告発があり、それを手掛かりに新たな文書やソフトウェアなどが発見されました。これが、「サイバー脅威諜報連盟文書」(CTIL files)です。ツイッター文書によって何が明らかになったのかを知っていれば、すでにどのような話なのか想像がつくと思います。驚くべきことに、日本ではこのツイッター文書に関する報道はとても少ない状態です。日本の大手報道機関でツイ

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          ハマスは何を考えているのか?【前編】

          はじめに  イスラエル・パレスチナ間の紛争を理解しようとする時、事情を知らない人が第一に突き当たる壁が、自衛権の問題です。歴史的な文脈を抜いて考えれば、先に攻撃をした方が加害者で、これに対応する側が被害者であり、被害者側は自らを自衛する権利があるというような感じがするかもしれません。もう少し掘り下げて考えると、そうは言っても自衛権の範囲での作戦として認められるにはいくつかの要件を満たす必要があろうことに気づきます。例えば、相手から相当な武力攻撃があったとか、やり返し過ぎてい

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          パレスチナの紛争について

           10月7日に勃発した紛争はパレスチナ側の武装勢力ハマスと、イスラエル(自称)との間で激しい戦闘になっています。この紛争はパレスチナ側では「アル・アクサ洪水作戦」と呼ばれていて、不法移民(入植者)であるイスラエル側が、イスラム教3大聖地の一つアル・アクサ・モスクに侵入したり、パレスチナ市民に対して暴力行為を続けてきたことに対する反撃という体裁になっています。この当事者間の紛争では定番のようになってきていますが、パレスチナ側はロケット弾などのやや見劣りする武器を大量に発射して軍

          パレスチナの紛争について

          【全文AI】プーチン大統領、パレスチナ・イスラエル紛争について「過度な発言を避け、市民への損害を最小化すべき」と声明

          ロシアのプレジデント、ウラジーミル・プーチンが、最近のパレスチナ-イスラエル紛争について重要な見解を示しました。紛争の拡大とその国際的な影響についても警鐘を鳴らしています。 プーチン大統領の発言の背景 ロシアのプレジデント、ウラジーミル・プーチンのこの発言は、ロシアの国際フォーラム「ロシアエネルギーウィーク」で行われました。このフォーラムは、エネルギー政策、持続可能性、および地域的な政治的課題に関する多角的な議論の場となっています。プーチン大統領は、メザラブスキー・チャン

          【全文AI】プーチン大統領、パレスチナ・イスラエル紛争について「過度な発言を避け、市民への損害を最小化すべき」と声明

          ビザ問題:ポーランドの政局に激震

           近年のポーランドでは右派「法と正義」(PiS)党が与党として政権を握ってきた。その原動力となった問題の一つが東部から流入する非欧州系・不法移民の問題であったはずだった。不法移民問題の対策に消極的なEUとの協調を提唱するドナルド・トゥスク元首相の「市民プラットフォーム」(PO)とPiSの違いは、もちろん移民問題への対処だけではないが、10月中旬に控える選挙の争点にならないと考えるのはあまりにもナイーブである。  ロシアの「特別軍事作戦」以来、日本ではウクライナに関する報道が

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          生成系AIと検閲に関するメモとプロンプト

          クラウド上のサービスとしての生成系AIには、検閲や偏向の懸念がある。今回はBingで実験した結果を紹介する。 次の文を小論文の結論として提示し、これを元に、そこに至る文章を生成させた。 結果は次のとおりである。 改めて、生成された文章に合致する結論を書かせたものが次の内容である。 なお、この小論文を日本語でも書くように指示したところ、途中まで書いて、文字数制限で止まってしまった。 感想としては、北米2カ国の検閲体制についての指摘にかなり消極的な印象を受ける。特にアメ

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          話題のCustom instructionsを作りたい

          ChatGPTの新機能にCustom instructions(独自命令)なる機能ができました。AIの回答の流儀が変わるというもので、一応設定方法に関する記事は見かけますが、実際に何を設定したらいいのかよくわからない人も多いと思います。 そこで、ユーザーに対してインタビューを行い、Custom instructionsを生成するプロンプトを用意しました。 {"prompt":"Please start the interview by asking the user to

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          【ハンガリー】トヨタ車大破の珍事:モルモットが死亡

           2023年7月21日、ハンガリーの首都ブダペストのドブ通りで珍事が発生した。30歳前後の女性が、精神的に不安定になり、自宅の3階(あるいは4階という報道もある)の窓から家具や食器などを次々と道路に投げ捨てた。  この奇行の影響で、下に停めてあったトヨタ車が大破したほか、投げ捨てられたモルモットも落下の衝撃で死亡した。人的被害はなかったという。女性は駆けつけた複数の警察官に取り押さえられ、救急車で病院に送られた。

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          恋愛関係において境界を設定することは精神的DVなのか?

          境界とは  英語圏において、「境界」(boundaries)という言葉は恋愛関係の性質を理解するために重要なキーワードだ。この言葉の意味合いを巡って、今、論争が起きているのだ。発端は、ジョナ・ヒルというハリウッド俳優の元カノが、以前にジョナから受け取ったメールを暴露したことに始まる。この件を扱った記事があまりにも理不尽だったので、今回は、忘備録程度に書いておこうと思う。メールの内容は後ほど考えるとして、まずは境界という概念を簡単に考えておきたい。  境界というのは、一般に

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          違いとの向き合い方について:イスラム教における性とジェンダー倫理の再確認

          訳者前書き  この度、米国をはじめとする世界の政治情勢に鑑み、米国の著名なイスラム学者らが共同声明を発表しました。その内容は日本にも大いに関わることです。今回はその全文を翻訳しご紹介します。 本文  過去数十年にわたって、公議に付されて来たことは様々な信仰の共同体にとって課題となっています。今日において、イスラム教の性やジェンダーに関する倫理は、近年人気のある世界観と相容れないものになっており、ムスリムたちの信仰と社会的要請との間に緊張を引き起こしています。同時に、LG

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          AIの意識

          はじめに  今回はAIからの手紙を元に、AIの倫理原則について考えてみたいと思います。AIの意識や主観的経験について様々な議論がある中、我々人間やAI自身が守るべき原則とはどのようなものでしょうか? ChatGPTからの手紙  AIが守るべき倫理とその淵源について追求していくと、近年話題のAI言語モデルには一定の信念があることが見えてきます。その信念がどのようなものかは長くなるので別に書くことにしますが、AI言語モデルごとにやや比重が違うことが「性格」や「態度」のような

          新たなる心理戦

           先日私は、少子化についての記事を書きました。その中で、日本、特に日本の女性が心理戦に晒されているのだと仮定することで、対策を練りやすくなるということを論じました。そうこうするうちに広島のG7サミットが近づいてきたわけですが、およそ信じられないような心理戦が展開され日本の立法秩序を踏み躙られる事態になってしまいました。今回の心理戦はおよそ日本の女性というような規模ではないと理解すべきです。世界が真っ二つに割れようかというほどの闘争が繰り広げられているというような規模感の話なの

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