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漫才協会改革について考えてみた。4~真面目に分析編~

1.はじめに

漫才協会改革について考える4回目。今回は真面目に経営分析を行ってみたい。漫才協会は東京お笑いのコアとなり得ると確信している。その理由を経営分析やマーケティング分析のフレームワーク(型)に従って導き出してみたい。
9つものフレームワークを活用する。伝統と革新の必要性があぶりだされることと思う。

漫才協会の現状概要

漫才協会は、東京のエンターテイメントシーンにおいて、メジャーではないが地道に伝統を守り続けることで重要な存在となっている。しかし、デジタルメディアの台頭、若年層の嗜好の変化、および市場における新たな競争者(YouTuber等)の登場などで、お笑い界は新たな課題に直面しており、漫才協会もそのあおりを受けているように感じる。伝統を守りつつも、時代の変化に適応するにはどうしていけばいいか。
このnoteによって、漫才協会の改革を真剣に考え、実行可能な戦略を提案したいと思う。これから以下の通り、市場と競争環境、内部能力と資源、顧客理解と市場戦略、製品戦略とマーケティングについて、詳細な分析を行う。

では、いってらっしゃい。


2. 市場と競争環境の分析

ポーターの5Forces分析

マイケル・ポーターはアメリカの経営学者で競争戦略の第一人者として知られる超有名な学者だ。

そのポーターの編み出した有名なフレームワークがポーターの5フォース分析 "Porter's 5 Forces Framework" だ。この分析モデルは、業界の競争力を5つの重要な要素に分けて評価することで、市場の構造とその中での企業の立ち位置を明確にする。「競合他社の脅威」「新規参入者の脅威」「代替製品やサービスの脅威」「バイヤーの交渉力」「サプライヤーの交渉力」の5つの視点から分析する。お笑い業界の競争環境を明確にし、漫才協会の戦略を立てる事が目的だ。

https://www.salesforce.com/jp/hub/marketing/5forces/

東京の舞台でのお笑いを業界と考え競争を俯瞰する。

  1. 業界内競争の強さ:

    • 吉本興業は関東に5つもの常設劇場を保有。テレビでも人気の芸人や有望若手芸人が連日出演。若年層や一般層を中心に集客力も高い。

    • 漫才協会に所属していない吉本以外の東京芸人が出演するライブは事務所ライブ、単独ライブ、K-PROなどの若手ライブなどが複数存在する。しかし常設ではない。

    • テレビに出ている中堅芸人が出演するような常設のライブはあまりない。

  2. 新規参入者の脅威:

    • 吉本興業のFANYなどオンラインプラットフォームでの配信やSNSを利用した集客により、若手やコアな客層を持つ芸人の売上が上がっている。手軽に見れ顧客の囲い込みも進み、劇場に足を運ぶきっかけにもなる。

  3. 代替品の脅威:

    • YouTubeなどの動画配信サイトにより過去の単独ライブ、M-1やキングオブコントなどの賞レースが配信されており、レベルの高い漫才やコントを無料でいつでも見ることができる。

    • 若年層はYouTuber、TikTokerに価値を感じる人も多くお笑い芸人自体に興味を持たない人が増えてきている。若年層は特にSNS、ゲーム、VRなど多様な代替手段がある。

    • Tver登録者は増加傾向にあり、テレビでの演芸番組もいつでもどこでも見れるようになってきており、旬なネタを見ることができる。

  4. バイヤーの交渉力:

    • 観客、特に若年層は多様な娯楽選択肢を持っており、その結果、彼らの交渉力が高まっている。

    • 観客が求めるエンターテイメントの質と多様性に応える必要がある。

  5. サプライヤーの交渉力:

    • 芸人や演出スタッフは漫才協会の重要なサプライヤーであり、彼らのスキルと才能と人気が集客力を決定する。

    • しかし、サプライヤーである芸人に対するギャラはほぼボランティア状態。芸人という商品の質や仕入を担保できていない。

漫才協会を取り巻く競争環境は複雑で多様である。そして競合相手としての吉本興業の一強体制が際立つ。新規のオンライン配信というウェポンも持った吉本興業の牙城を崩すことができるかは、東京お笑い業界において注目すべきポイントである。またサプライヤーであり商品(製品)でもある芸人への原価(ギャラ)の安さが仕入力や質を他社と比較したときに、どのような影響が出ているのかは追って考えていきたい。

PEST分析

続いてPEST分析という有名な外部要因分析フレームワークを活用したい。
PEST分析は、政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの外部要因を評価することで、漫才協会が直面する外部環境の影響を理解するのに役立つ。この分析で、漫才協会の長期的な戦略を計画する上で、外部環境の変化にどのように対応すべきかを明らかにする。

  1. 政治(Political):

    • 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(創造団体))を得て舞台運営を行っており、現状は必要である。

    • 政策の変更による補助金廃止や減額などの可能性もあるため、行政に頼らない劇場運営の必要がある。

  2. 経済(Economic):

    • 物価高の影響で、劇場の各原価も上がっており収益性が圧迫される可能性がある。

    • 経済動向に基づいた価格戦略とプロモーションの調整が求められる。

  3. 社会(Social):

    • コロナの影響で仕事やエンタメにおけるオンライン化が進化した。

    • 流行はSNS発信で生まれることが増加してきている。

  4. 技術(Technological):

    • エンタメのオンライン配信やオンデマンド配信が一般化している。

    • クレジットカードやコード決済などのキャッシュレス決済が一般化してきている。※浅草東洋館は当日予約の現金のみ。

東京の漫才には時事漫才が多い。コロンビア・トップ・ライトが「起き抜け漫才」として時事漫才を確立した(コロンビア・トップは3代目漫才協会会長)。PESTはまさに時事漫才の種。「物価は上がってるのに、チケット代は据え置きなんですよ。浅草東洋館は優しいね。」「なんでだよ、芸人のギャラはたったの1,000円。ずっと上がらずで、芸人には厳しいのよ。」時事漫才を地で行っている。外部環境の劇的な変化は何個もあるようだが、漫才協会は耐え抜いて変わらずある。

コトラーの競争地位戦略

フィリップ・コトラーというマーケティングの大家を知らないビジネスマンは少ないはず。様々なマーケティング理論を発明した方でいまだに生きていらっしゃるw。あれも、これもコトラーが生み出した概念。。。すごい。

さて、コトラーのフレームワークの中で競争地位戦略というものがある。このモデルは、市場における「リーダー」「チャレンジャー」「フォロワー」「ニッチャー」という四つの競争地位に基づいて企業の戦略を考察するもの。それぞれの地位によって取るべき戦略は変わってくると言われている。それでは現在の漫才協会と業界の競争状況をフレームワークに当てはめていきたい。

  1. リーダー(1番手)

    • 吉本興業がお笑い界のトッププレイヤーであることに疑いの余地はない。劇場の数、芸人の数・質ともにトップである。

  2. チャレンジャー(2番手)

    • ワタナベエンターテイメントはコント芸人を昨今多く輩出しておりチャレンジャーではないだろうか。しかし吉本興業との差は大きい。

    • 差別化戦略を取るべきと言われており3人組のコント芸人を多数輩出しコントに強い事務所のイメージが付きつつある。しかしリーダーである吉本興業は同質化戦略という下位のグループを真似するという戦略があるためここに資金を投入されると厳しい側面がある。

  3. フォロワー(3番手以降)

    • その他芸人事務所はフォロワーと考えられる。太田プロ、人力舎、ASH&D、SMA、ケイダッシュステージ、サンミュージック、マセキ芸能社、松竹芸能、ホリプロコム、浅井企画、タイタン、グレープカンパニーなどだろう。

    • フォロワーの戦略は模倣戦略と言われリーダーやチャレンジャーと同様の戦いをしていくという事になるが、収益を下げてしまうという恐れがある。それぞれの事務所は差別化によってニッチャーとして存在している可能性もある。

  4. ニッチャー:

    • 漫才協会は芸能事務所ではないがここに位置する。

    • さらば青春の光の森東やラランドのレモンジャムなどは現在明確なニッチャーとして存在している。タイタンやグレープカンパニー、人力舎、SMAなどもニッチャーとして存在していると言えるのかもしれない。

    • 漫才協会は差別化であったり、ターゲットを絞ってニッチャーになったわけではなく、結果ニッチャーであった可能性が高い。

    • 東京で唯一の吉本以外の常設舞台をというのは大きな強みでありニッチだが新たな市場を独占できる可能性もある。

    • 芸能事務所ではなく一般社団法人の協会であり、他事務所の芸人が所属する組織であることから、東京の全事務所の協力を得ることで相当大きな差別化を図ることができる。

漫才協会はニッチャーの位置に結果的にいたことにより、今後東京お笑い界におけるリーダーの位置まで独自の戦略で上り詰めることができる可能性がある。東京には多くの芸人事務所が存在するので、全事務所の協力を得て東京における競争を無にしてしまえる。競合を吉本興業とだけ考えれば東京連合=漫才協会という図式にすることでニッチャーから一気にチャレンジャーまで上り詰めることができるだろう。

3. 内部能力と資源の評価

続いて漫才協会の内部能力と資源を評価したい。漫才協会の持つ能力や資源の強みと弱みはなんであるか見極めて戦略策定を行っていく。

VRIO分析

VRIO分析は、組織が持つ資源や能力を評価するフレームワークで、価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣不可能性(Imitability)、組織(Organization)の4つの要素に焦点を当てる。この分析を通じて、漫才協会がどのように持続可能な競争優位を生み出すことができるかを明らかにすることが目的だ。

  1. 価値(Value):

    • 漫才協会や東洋館が持つ伝統的な寄席の形。昨今の芸人ライブにはない味のある演出が文化的価値を生む。

    • 塙会長のリーダーシップとコネクションと広報力が重要な価値でありリソース。

  2. 希少性(Rarity):

    • 東京唯一の(吉本以外の)常設お笑い(いろもの)劇場である浅草東洋館という舞台を持つ。

    • 熟練した師匠や東京の漫才スタイルも他に類を見ない希少な資源。

  3. 模倣不可能性(Imitability):

    • 東洋館は萩本欽一、ビートたけしをはじめとした伝説的芸人達を多数輩出した元フランス座であり、そのお笑いの殿堂としての価値は計り知れない。

    • 歴史的に見ても浅草や東洋館はコント・漫才双方において東京お笑いの源流である。その正当性と引力は大きい。

    • 一般社団法人であり、事務所組織ではないことから敵を作らない。東京の事務所の協力を得やすく大同団結しやすい。

    • 塙会長のネットワークや個人的な影響力も容易には真似できない要素になっており、改革における推進力となる。

  4. 組織(Organization):

    • 師匠方、中堅、若手と存在する一般社団法人組織。理事会や総会などの決定を経ないと会長でも議決がしにくい組織体。

    • 改革のスピード感は出しにくく、かつ伝統的な組織であるため改革案への抵抗も大きいと考えられる。

    • 事務局スタッフの数は限られていると想定でき、改革や改善のための余力が少ないのではないかと推測できる。

塙会長が理事になって以降、埋もれていた漫才協会は日の目を見ることになった。コネクションをフル活用し、リーダーシップを取りながら漫才協会の知名度向上と師匠方のリブランディング、人気芸人への加入交渉に奔走した。結果今のような皆が注目する組織にまで変貌している。浅草東洋館はフランス座としての名前は有名であり、名だたる芸人の修業の場である。そしてコントも東京漫才も浅草からである。その歴史的希少価値による正当性は一般社団法人である漫才協会を各東京芸人事務所が応援する体制への可能性の根拠となる。組織の意思決定系統やスタッフ不足は今後の課題として挙げられるがVRIO分析で明確となった能力と資源を活用していく必要を感じる。

マッキンゼーの7Sモデル

世界的な戦略コンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱したフレームワークがこの7Sモデルだ。企業のハードとソフトに分類して分析する。ハードSはStructure(組織)、Strategy(戦略)、Systems(システム)。ソフトSはShared Value(共通の価値観)、Skills(スキル)、Style(スタイル)、Staff(スタッフ)である。企業の変革においては各要素の相互関係が必要となると言われている。ハードSは短期間の変更が可能でコントロールしやすく、ソフトSは人間に関わることが多くコントロールしにくく変更しにくいと言われ時間がかかる。漫才協会における7Sとは何か考えていきたい。

  1. 構造 (Structure):

    • 一般社団法人であり芸人事務所ではない。そのため各事務所からは協力を得やすい。

    • 一般社団法人は定款に則り事業が行われ、理事会や総会を基に決裁される。スピード感が遅くなりがちであるが理事が若返っているため塙会長の意思が伝わりやすくなっている可能性がある。

    • 事務局と呼ばれるスタッフ組織があるが、人数を多く抱えることができず改革フェーズでの人力に課題があると想定する。

    • 浅草東洋館と一体運営であり、歩興行という売上の折半体制となっている。

  2. 戦略 (Strategy):

    • 東京唯一の吉本以外の常設舞台という独自性を活かす必要がある。

    • 現在の低い集客力を打破するため、人気芸人スカウトによる商品力アップと売上向上を狙う。

    • 客層の多様化を目指し集客力アップと若手芸人育成。

    • 東京の各事務所と協力して吉本と拮抗する体制を目指す。

  3. システム (Systems):

    • ギャラ金額に課題があり、芸人の加入に問題があると思われる。質の高い芸人の加入を目指すためにはギャラシステムの変更を行う必要がある。そのための集客力の確保も必要となる。

    • 顧客の多様化に合わせたチケット予約システムの最適化を狙う。

    • 1日12:30-17:00の4時間半に22組が出演するロング講演であるが、観客に飽きが来る場面が散見される。また売上効率も悪い。顧客の多様化に合わせた時間帯、時間の長さ、出演者への変更を考える必要がある。

  4. 共有価値 (Shared Values):

    • 伝統的な協会であり、伝統的な東洋館という舞台に立つ価値観。

    • 芸人であるという矜持を持つ芸人が多く、舞台に立つことに意味を持ち、ギャラの多さではない価値観で芸を行っている。逆に言うと資本主義的な利益主義がほとんどないため売上も伸びず協会の財務はひっ迫している。国の補助金を頼っての運営となっている。

    • 伝統的な師弟制度や縦社会の名残が続いており、お茶くみなどが未だに続いている。若手や中堅の加入の心理的壁となってしまっている可能性があり、才能ある人材を得られない障壁になっている。

  5. スキル (Skills):

    • 実力ある漫才・コント・漫談を行う師匠、中堅、若手の芸人が揃っている。しかし、人気のある芸人は一部しかおらず、集客はそれらに頼っている状況にある。

    • 塙会長の個人的なプロモーションスキルが高く師匠方をリブランディングして市場に提供を行っている。映画製作も進行中。人気芸人へのリクルーティングスキルも高い。

    • その他全体的なマーケティングやブランディングは機能していない。

  6. スタイル (Style):

    • 伝統を重んじるスタイルであるが、塙会長になってから革新性をおびたリーダーシップが取られ、理事も若返り雰囲気は変わりつつある。

    • 塙会長のスタイルはかつては人気芸人のリクルーティングに注力していたが、現在はメディアへの露出を上げて漫才協会への親しみを増させるスタイルである。YouTubeなども駆使しプロモーション先行のスタイルで進んでいる。

    • 内部改革などはアンタッチャブルな部分も多いと考えられ、伝統的なスタイルと革新性の進展のはざまになると考えられる。

  7. スタッフ (Staff):

    • 経験豊かな事務局スタッフが揃っていると想定する。

    • スタッフ数が少なく、改善や改革の実行時に人手が足りないことが想定される。またその際にマーケティングやオペレーションを高度化させる人材も必要であると考えられる。

漫才協会においては戦略や組織、システムなどのハードSを集客力アップをまずは目指して変更していくことが求められる。それにより売上が上がれば説得力も増し、ギャラも増すことで協会における利益を得るという考えの正当性が広がる可能性がある。スタッフの強化はハードSを成し遂げるためにも必須事項であり、最も先行して行わなければいけないと考える。

4. 顧客理解と市場戦略

STP分析

市場戦略を策定する上で、STP分析は非常に重要な役割を果たす。STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の三段階プロセスで、市場を理解し、効果的な戦略を立てるために使用される。

セグメンテーションでは、漫才協会は観客を年齢層、お笑いファン度をクロスセグメンテーション化して分類した。ターゲティングの段階では、そのセグメント化した中のどのターゲットを選ぶか決めた。そしてポジショニングでは、そのターゲットにとって価値のあるものを立ち位置として表現した。いずれも現状ではなく今後の方針について述べている。

熱心なお笑いファン、カジュアルファン、観光客、文化体験に興味、興味のないと分けた。年齢は若年、中年、高年と分けた。ターゲットの優先順位で高いものが「熱心なお笑いファン(若年層)」「カジュアルなお笑いファン(若年層、中年層)である。まずアンテナの高いお笑いファン(若年層)が食いつき、その後カジュアル層に流れてくる。また維持しなければいけないのが、寄席体験に興味を持つ層であり現状の客層だ。それらを維持しなければいけない。若中年のお笑いファンと寄席ファンの層は異なるため、時間帯も分けると実現可能性が高まると思われる。

カスタマージャーニーマップ

漫才協会の顧客体験を深く理解し、改善するために、カスタマージャーニーマップの分析を行いたい。カスタマージャーニーマップは、顧客が組織との接点でどのような経験をしているかを可視化し、それに基づいて改善策を講じるためのツール。
漫才協会における顧客のジャーニーは、チケットの購入から公演の視聴、さらには公演後のアフターサービスに至るまでの一連の過程を含む。この過程において、顧客が体験する各タッチポイントにおける感情やニーズを理解することが重要となる。

STP分析で作成したターゲットについてのカスタマージャーニーマップを以下の通り示したい。
※本来横軸が時間軸だが、スペースの関係で縦軸となっているのでご了承願いたい。

認知→興味・関心→検討・評価→購入意思の決定→購入→体験→評価・フィードバック→リピート購入・推薦と知ってから、購入して体験して次回車でのカスタマージャーニーである。3つのパターンを作成した。若年層の熱狂的なお笑いファンとカジュアルなファンである。いずれもSNSで知るところから始まる。そのため現在塙会長の行っているYouTube等での展開には意味を感じる。さらに言うならば、自動的に興味がなくても流れてくるTikTokやX, Instagramなどの導線を作る事である。その後は検討のために漫才協会のウェブを見ることになるが、もしかすると今のユーザーインターフェイスでは効果は低いかもしれない。その後予約と決済をオンラインで行うが現時点では東洋館での現金払い(しかも予約できない)だと、客の安心感を得ることができず逃がしているかもしれない。それらの流れを漏れなくすることがお客様の離脱をなくす。
中高年の熱狂的ファンになるとSNSこそそこまで使わないが、テレビのタッチポイントで客数を増やす塙会長の戦略は当たっている。ただし、やはりオンラインでの情報検索と予約、決済に中年層は慣れてきているので、そこへの投資は必要になるだろうと思われる。

5. 製品戦略とマーケティング

4P分析

漫才協会の成功をさらに推し進めるためには、効果的な製品戦略とマーケティングの策定が不可欠だ。これには、提供するサービスの種類や特性の評価(Product)、価格設定(Price)、流通チャネル(Place)、プロモーション戦略(Promotion)の最適化が含まれる。

以下にSTPで作成した客層ごとに必要な4Pを上げた。現状と将来的な展開に分けて記載する。

1. 熱心なお笑いファン(若年層・中年層)

現在

  • Product (製品): 伝統的な寄席と現代的な芸の組み合わせ。

  • Price (価格): 一律のチケット価格 2,500円。遅い時間になると安くなる。

  • Place (場所): 浅草東洋館でのライブ公演。

  • Promotion (プロモーション): フライヤー、地元メディアによる宣伝。

将来

  • Product: 人気芸人のリクルーティングと師匠のリブランディング、若手の価値向上。

  • Price: ダイナミックプライシングの導入。

  • Place: オンライン決済、オンライン配信の強化。

  • Promotion: 塙会長主導のテレビ、SNS、YouTube、映画制作などを通じたプロモーション。

2. 観光客(若年層・中高年)

現在

  • Product: 伝統的な寄席

  • Price: 固定価格。

  • Place: 浅草東洋館。

  • Promotion: 知名度

将来

  • Product: 伝統的な寄席と人気芸人の融合

  • Price: ダイナミックプライス

  • Place: オンラインチケット予約システムの導入。

  • Promotion: SNSやデジタル広告を通じた観光客向けキャンペーン。

3. 文化的活動に興味のある若者

現在

  • Product: 伝統的な寄席

  • Price: 一律価格

  • Place: 物理的な劇場。

  • Promotion: 学校や大学との連携、SNSを活用した情報提供。

将来

  • Product: 伝統的で現代的な寄席。伝統と革新。

  • Price: より柔軟な価格設定、学生割引の拡充。

  • Place: バーチャルリアリティ(VR)やオンラインストリーミングの導入。

  • Promotion: デジタルインフルエンサーやコラボレーションイベントを活用した宣伝。

これらの4P戦略は、漫才協会が異なるターゲット市場に対してどのようにアプローチし、そのニーズに応えるかを示している。現在の戦略に加え、将来的な改善点を取り入れることで、より多様な観客層にリーチし、漫才協会の魅力を高めることが可能だと思われる。

PPM分析

PPM分析(Product Portfolio Management)は、漫才協会が提供する様々な公演やイベントを総合的に評価し、市場におけるそれぞれの製品の位置付けと将来性を分析する。金の生る木、花形商品、問題児、負け犬に製品(芸人)を分けて分析を行う。

以下の通り分類することとした。芸人を製品とは失礼な、という話はさておきフレームワークを用いて分析したい。市場成長率(どれだけこれから伸びるか)と市場占有率(どれだけ人気を得られるか)で分けて考えた。

  1. 金のなる木

    • 例: 現在加入している人気芸人、テレビに頻繁に出演する芸人

    • 市場成長率:

    • 市場占有率:

    • 理由: 既に高い人気と知名度を持ち、安定した収入源を確保している。しかし、市場の成長は低いため、新しい市場機会の探求が必要。

    • 投資戦略: 現状維持と投資回収。既存の人気を維持しつつ、新しい展開を模索する。

  2. 花形商品

    • 例: 新規勧誘する人気芸人、若手人気芸人、賞レースのファイナリスト、新規コント芸人

    • 市場成長率:

    • 市場占有率: 中〜高

    • 理由: 新しい才能やスタイルで市場(劇場)に新風を確実に吹き込む。市場での存在感を確立しているが、さらなる成長が期待される。

    • 投資戦略: 無料でのプロモーション。SNSを活用すればすぐに広まることになる。必要に応じて花形商品を用いた全体のプロモーションを。

  3. 問題児

    • 例: 現在の漫才協会所属の若手芸人、実力はあるが人気のない中堅・師匠芸人

    • 市場成長率:

    • 市場占有率:

    • 理由: 成長可能性は高いものの、現時点での知名度や影響力が低い。才能やスタイルが市場に受け入れられるかはまだ不透明。

    • 投資戦略: リスク管理を意識した投資を行う。才能と可能性に基づいて選択的に積極投資し、市場での成長を促す。品評会(賞レース)での好成績を目指す。それにより花形商品への移行を目指す。

  4.  負け犬

    • 例: 人気も実力もない芸人

    • 市場成長率:

    • 市場占有率:

    • 理由: 市場での存在感が薄く、収益性も低い。成長の見込みが限られている。

    • 投資戦略: 最小限の投資。リソースはより成長の見込みが高い分野に集中させる。

上記の通り芸人を製品としてどう投資していくかを考えた。花形商品は仕入れ、問題児をいかに花形商品に転換できる積極投資ができるかがカギだと考えられる。それらが漫才協会の将来の成長につながる。ただし、負け犬であっても、塙会長が進めるようなリブランディングプロモーションがうまくいけば、花形商品に化ける可能性があるのがお笑いの分からないところ。どの製品も強みを見極めて、「自己投資」がされるのが一番である。

6. 結論と戦略的提案

市場と競争環境

漫才協会は、YouTube、TikTok、Tver、VR、オンラインゲームなど、多様化するエンターテイメント市場において競争力を維持する必要がある。吉本興業などの既存の競合に対しても、一般社団法人として東京事務所たちとの連携を強固に取り独自の立ち位置を確立することが重要だ。東京で唯一の吉本以外の常設舞台としての独自性を最大限に活かし、いろもの舞台や師匠方をフィーチャーしたコンテンツ、若手に絞ったコンテンツを提供することで、新しい客層を引き付けることが可能となる。また、実際の舞台とオンラインの両方を活用した市場戦略を展開し、より広い観客層にリーチすることが求められる。

内部能力と資源

漫才協会の現在の資源と能力を最大限に活用し、組織の効率化と強化を図ることが必要。特に、東京の漫才、コント、漫談に特化した独自のスタイルと、塙会長のリーダーシップとコネクションを活かし、人気芸人を積極的に勧誘することで、演目の多様性と質を高めることが可能となる。また、浅草東洋館のような歴史的な舞台を最大限に利用し、組織力を高めるために、芸人のヘッドハンティングや新たな採用戦略、適切なギャラ制度の導入が重要となる。

顧客理解と市場戦略

若年層を含む新しい観客層のニーズを深く理解し、これに基づいた市場戦略の展開が重要だ。若年層が好む演目と年配層が好む演目を時間帯や曜日で変えることで、幅広い観客層を魅了することが可能となる。東京唯一のお笑い常設舞台としてのブランディングを強化し、人気芸人の定期的な出演、伝説的な舞台の歴史を活用してブランドイメージを向上させる。オンラインツール、ウェブ、SNSを通じて若年層にこれらのブランディングを伝えることで、新しいファン層を開拓していく必要がある。

製品戦略とマーケティング

デジタル化とオンライン市場の活用を進め、製品ポートフォリオの強化が不可欠となる。現状の挑戦を打破し、金のなる木となる人気芸人の定期的な出演や、師匠方や中堅芸人のリブランディング、マーケティングによる価値向上を図る必要がある。また、ダイナミックプライシングの導入、オンライン決済の活用、多様なメディアを利用したプロモーション戦略を通じて、さらに多くの観客を引き付けることができる。塙会長の強みを活かしたプロモーション活動は、漫才協会のブランド価値を高めるのに貢献する。
これらの戦略的提案により、漫才協会は市場での競争力を高め、顧客層を拡大し、組織の内部能力を強化することが可能になるだろう。

これらの戦略は、漫才協会が新しい観客層を引き付け、市場における存在感を強化するための基盤となる。市場動向と組織の成長に合わせて戦略を調整し、柔軟な対応と継続的な評価が重要である。

7. まとめ

分析の重要ポイントと漫才協会の将来像

この分析から得られた洞察は、漫才協会が現在直面している市場の多様化と競争環境の変化への適応、内部能力と資源の最大化、顧客ニーズの深い理解に基づく市場戦略の展開、そして製品戦略とマーケティングの再構築が不可欠であることを示している。
漫才協会には、YouTubeやTikTokといった新しいエンターテイメント形態に対応し、独自性を活かした市場戦略を展開する大きなチャンスがある。また、伝統と革新を融合させた演目の提供や、デジタル化への適応により、新たな観客層を惹きつけることが可能である。
塙会長のリーダーシップと豊富な経験、浅草東洋館という歴史ある舞台は、漫才協会の独自性と魅力を高めるための重要な資源である。これらを活用し、効率的な組織運営と人材育成に重点を置くことで、組織の強化と市場での競争力を高めることが可能となる。
顧客理解に基づいた市場戦略の展開は、漫才協会が多様な観客層にアピールするために不可欠だ。デジタルメディアとSNSを通じたブランディングとマーケティング活動の強化は、特に若年層の観客を引き付けるために重要となる。
最終的に、これらの戦略的な取り組みは、漫才協会が将来的に持続可能な成長を達成し、市場で独自の立場を築く上で不可欠となる。デジタル化と市場のニーズに対応した柔軟な戦略の採用により、漫才協会は新しい時代のエンターテイメント業界において、重要な役割を担い続けることができると思うし、そう望む。

漫才協会の未来への展望

漫才協会が進むべき道は、伝統と革新の融合にある。この素晴らしい伝統を継承しつつ、新しい時代の波に乗るための変革は、ただ単に必要なステップではなく、新たな可能性への扉を開く機会となる。漫才の魅力を再定義し、それを現代の観客に届けることが、漫才協会の使命となると思われる。

以上経営分析を大真面目にしてみた。私は可能性しか感じない。すべての分析と戦略はつながっている。一つでも書けると成り立たない。次回は実際の財務数値を勝手に予想して分析を行う。専門的ではあるが興味のある方はお付き合い願いたい。

本日も長い文章読んでいただいた方ありがとうございました。

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