傲慢と善良に見る令和の婚活の難しさ
「傲慢と善良」、これは主人公である架の婚約者の真美がある日突然疾走し、真美を捜索する過程で架と真美、それぞれお互いの内面に向き合っていく物語で、「婚活」がテーマの珍しい小説だ。
この「傲慢と善良」というタイトルの意味のネタあかしはプロットの早い時点で回収される。
タイトルの意味、そしてこの作品のメインテーマとは
★傲慢とは:現代の男女は個々の価値観に重きを置きすぎていて、自分につける値段はすごく高い。自己愛がすごく強い。そしてそれに伴い相手に求める基準も非常に高くなる
★善良とは:謙虚で、自己肯定感は低い。親の言いつけを唯々諾々と守り、主体性に乏しい
そしてこの「傲慢」と「善良」という一見相反する単語が奇妙に同居するのが現代の若い男女だと。
「自己肯定感(自己評価)は低いが自己愛は強い」
これがこの作品が誇るキラーフレーズだ。
なぜ現代人は自己愛が強くなるのか リベラリズムと自由恋愛
ここ数十年で、日本も世界も急激にリベラル化、個人主義が進んだ。
リベラルな社会は繰り返し私たちに
「自分らしくあれ」「物事は自分で決めるのが尊い」「夢を持ちなさい」「個性を持ちなさい」
「自由恋愛はすばらしい」「社会の古い因習から抜け出しなさい」
のメッセージをサブリミナル的に私たちの意識に向けて送信してくる。何度も何度も。
その結果、皆が皆自由に生きるようになって、1人ひとりの個性が強く尊重されたらどうなっただろう。
嫌な集団からは「自分らしくない」と簡単に逃れられるようになった。
無駄な人付き合いは認知的コストが高いので避けるようになった。
「私がストレスなく自分らしく生きる」ために現実の面倒くさい集団や人間関係、現実に存在する異性から目を背けてイケメンアイドルやvtuberなどの推し活に没頭するようになった。
自由になった結果、孤独と自分の価値観こそがすべてとなり、現実の異性よりも自分の価値基準が上回るようになってしまったのだ。
なぜ世の結婚相談所はミドサー女性、アラフォー女性に厳しいのか
アラフォー 婚活でyoutubeの検索窓に打ち込むとこういったサムネイルのオンパレードだ。
なかなか辛辣だ。
なぜ結婚相談所が本来クライエントであり、優しくすべきだろうミドサー女性、アラフォー女性にここまで当たりが厳しいのだろう。
この理由を結婚相談所を経営している知人に聞いたところ、
「30代半ばから40代前半の女性入会者が一番ダントツでシャレにならないほど異性に高望みしているから」だそうだ。
要するにこうやって現実を見せておかないととんでもない条件を彼女たちは提示するらしい。
「同世代か年下希望、身長は170以上、当然大卒正社員で年収は最低で600、清潔感あり(※イケメンであることの言いかえ)・・・」といった具合に。自分のスペックや年齢は高い棚に上げて。
要するに傲慢のエッセンスが過剰にふりかけられているということだろう。
私自身Twitterで妙齢の婚活女性垢の主張を見ているとウッとなり胃液が上がってくる時がある。
こうやってyoutubeやtwitterで妙齢婚活女性に対し事前にファクトを突きつけておくという結婚相談所のやり方は成果を上げているのだろうか?
私はあまりそうは思わない。
現代人は「SNSで見たいものしか見ない」という自己愛に強烈にとらわれているからだ。
例えば、Twitterにいるような婚活女性は
「キモいオジが身の程知らずに若い女性にアタックして案の定撃沈していた、分をわきまえろ」
「イケメン40代芸能人がずっと若い女性と年の差婚したからといってお前ら一般人のオッサンが夢を見るんじゃねえぞ」
「いい年ぶっこいて萌えアニメや坂道系のロリコンアイドルや声優に熱上げてるオッサンきもすぎ」
このような主張にはそうだそうだ!といいねRTの共感の嵐で「身の程をわきまえないオッサン叩き」という娯楽に興じれるだろうが、
これと逆バージョンの
「いい年して韓国ドラマやKPOPのずっと年下の若いイケメンやジャニーズの追っかけしてる婚活オバサンキモすぎ」
「自分は低スペックFラン大卒なのにデート全おごりとか身の程知れよ」
「結婚相談所ですら上手くいかないオバサンがtinderでヤリ目の若いイケメン相手に婚活とか痛すぎ」
みたいな主張(主にyoutubeなどでの)には苦虫を嚙み潰したようになるだろうし、そもそもこういったコンテンツを見ないふりをすると思う。
この逆の男性verも同じだ。
私が10代のころのインターネット世論のメインストリームの2chの主張と言うのは異常に男に都合がよかった。
「25過ぎたら女はババアで、髪を染めている女はビッチで、処女こそが至高で、女は割り勘すべきで、オタク(2ch民のこと)に優しくない女性はクソで・・・etc」
以下のような感じで当時中高生男子だった自分ですら苦笑いしてしまうようなインターネットだった。
当時のインターネットはmale-dominant(男性優位)すぎたが、現在はtwitterのようにfemale-dominant(女性優位)のプラットフォームができたので少なくない女性たちも昔の2ch民のような都合の良い情報しか流れてこないフィルターバブル、エコーチェンバーの中にいるのだ。
もうこうなったらどうしようもない。
私もマクロとしての本邦の少子化のソリューションなどは全く考えていない。
少子化は全世界的に同時多発的に起こっていて、誰も止められないものであり、加速する一方だ。
進化生物学者のリチャードドーキンスは言う。
我々ホモサピエンスの一番強い本能と、そして生まれてきた理由は自己の遺伝子を複製して後世に伝えることだと。
これは実に正鵠を射ている主張だ。
だから、自己の遺伝子複製(=生まれてきた第一目的)をできない、自分の残せない男女が鬱になったり、社会や異性への呪詛で満ち満ちるのは人類の歴史を照らしてみても正しい。
だが、もうどうしようもない。
「傲慢」が過ぎる妙齢女性の多くは遺伝子を複製することは難しいだろう。
女性の生涯未婚率も急激に上がっている。IBJの統計でも女性は年齢を重ねるごとに露骨に成婚率が下がる。
自分の自己評価と男性へ求める基準を下げて、妥協婚するくらいならば独りを選ぶ女性は増える一方だ。
「善良」が過ぎる妙齢男性の多くはその善良が過ぎるがゆえに女性の基準に合わせて努力して外見改善はしないだろうし、もてなしやエスコート力の向上もしないだろう。
そもそも未婚男性の多くは年々自由恋愛市場から撤退しつつある。
結婚相談所が女性あまりになり、マッチングアプリで上位10~20%のヤリ目イケメンや既婚者に騙される婚活女性が減らない理由だ。
僭越ながら私から提案めいたことを言わせてもらうならば、SNSデトックス、ドーパミンデトックスが有効であるだろうということだ。
Twitterなどの常に誰かの憎悪を煽り、学歴/年収などの不毛すぎるマウンティングであふれている他者との比較で自己肯定感が下がるだけの有害なコミュニティから「降りる」こと。
インスタグラムなどの醜形恐怖や過剰なルッキズムを煽る有害なコミュニティから「降りる」こと。
自らがアテンションエコノミーの奴隷となっていること、自分の精神の不安定さや注意力がグーグルやイーロンマスクによって搾取され金に換えられていることに「気づく」こと。
現実の異性から目をそらして「傲慢」化を促進しドーパミン回路を破壊するアイドルコンテンツや推し活から「離れる」こと。
これが一番のキーになってくると感じている。
デジタルデトックスやドーパミンデトックスのために一番有効なのは、マインドフルネス瞑想であると英語圏の哲学書や精神医学書、ビジネス書にはいつも必ずと言っていいほど書いてある。
私の瞑想に関して好評だった記事をここに残しておく。よければご一読いただければ嬉しい。
「善良」すぎる男性に向けての恋愛指南記事。こちらもよければ。
自分の音楽依存症の克服体験に関して。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?