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養う女、養われる男日記(8)

養う女

本好き人生初の本の断捨離

2022/11/28

本好きにとって、本を捨てるハードルは、他の人が思うより高い。
特に、本棚を眺めることが幸せ、みたいな人間にとっては尚更だ。
本は捨てるものではないという認識がある。
もちろん私もそんな人間で、人生で本を捨てたことは数えるほどしかない。
そんな私が、人生で初めて、1,000冊近くを処分した。
捨てることがものづくりにつながるのだと、わかったからだ。

まずはかたづける前の私の本棚を見てほしい。
壁一面、大体38入る区画が10段×5列あり、そのほとんどに本がつまっていて溢れ出しているくらいだったので、大体2,000冊本を持っていた計算になる。

それを、一晩と一日かけて、3分の2ほどに減らした。

これでもだいぶ減らせた方


「本捨てなよ」
きっかけは、Tの言葉である。
実はこれは色んな人に言われたことがある。ただ皆、「部屋をすっきりかたづける」視点からで、私は「本は捨てるもんじゃない」と思い込んでいたので聞き流していた。
Tは、「ためこむ人ってなんか頭かたい人多い」と続けた。
「意識変わると思うよ。ダイエットとか健康とかお金とか、セルフマネージメントってほぼ減らすことしかしてなくない?」
言われてみれば、自己管理系で足し算を聞いたことがない。全部が引き算である。
足し算は無意識にでもできてしまうけれど、引き算はできない。
そもそも、本を捨てる=セルフマネージメントの視点が無かったから、私には新しかった。
さらにTは、
「極端な話、手元にある本が全部、自分のアイディアの源になるものにした方がいい。
じゃないとクリエイティブになれない、おれは」
Tはたくさんの作品を描いているけれど、常々好きだったらずっと続けられるとか嘘、と言い切っている。描き続けるためには、続けられる環境が必要。クリエイティブであるためにも、環境が必要なのだ。
「だからこそ、面白くないものを作ったらダメ。捨てられるから」
Tのその言葉は、面白くない小説ばかり書いてきた私の心に思い切りささった。
「捨てまくれ。物が多くて成功する人は箱が大きい人。自分の箱に見合った量にするべき」
身の丈にあったことをする、と常々言っているTの姿勢がぎゅっと詰まっている気がした。
その日の晩から箱に本を詰めだした。
とまらなくなって気づけば夜が明けていて、午前休をとってさらに本以外のものもばんばん捨てた。

本の減った本棚を見たら、ふと、ブックカバーのついていない本が目に付くようになった。
はずして読むので、読み終えた時にはどこに置いたか忘れて、本を本棚に横にしてさしておく、なんてこともあったのだが、少なくなるとそれが気になるようになった。
ばらばらに収めていた同じ作家さんの本を並べておきたくなった。
なんでこの本持っていたんだろう、という本が、減るたびに出てきてまた捨てた。
結局、手に負えていなかったのだ。
本の量が、自分のキャパを越えていたことにようやく気がついた。
小説のこやしにするためにたくさん読むんだ!と闇雲に読んでいたけれど、思考停止して、ただ冊数を稼いでいただけだった。
Tと本の感想を話し合う時に、Tは本を読んだ内容を自分の言葉で置き換えて、意見にすることができるけれど、私自身は、言葉の語感だけを見ていたり、文学部で学んだような、通り一遍の評論の流れにのっかった感想しか言えなかった。
その理由が少し見えた気がした。
「捨てたら、何が良い本で、どうして良い作品なのか、少しはわかるよ」
Tの言葉のおかげで、読書が変わりそうな気がしている。

養われる男

2022/11/25


昨日春田さんの周りの人から僕たちの関係の感想を聞いた所、漫画や映画のような架空の創造作品に例える方達がいると聞いたので、今回はかなり生々しく現実的な話をしようと思います。 
そして僕達の関係に至るまでに僕が作為的にそう仕向けた部分と偶然の部分があって、その人工的な部分はなるべく回数を重ねてでも説明したいと思っています。
僕は普段絵を描いていて物凄く分かりやすく言うと「全く知名度のない売れないアーティスト」と言うことになります。
結論から言うと、その「全く知名度のない売れないアーティスト」を大変気にいった彼女がお金を払いたいと言い出した訳です。
まだ養われる前、僕は彼女が小説家志望だということを知りました。
この部分が前提条件としてかなり重要だと僕は感じています。
絵を描くと言っても、キャンバスや絵の具など、凝れば凝るほどお金がかかってしまいます。
その上、当然売れないアーティストですから、完成した後にお客さんがいる訳でもないので取り返す事すらままならない。
そうなってくるとフリーターの僕からしたらどれだけ情熱があっても金の切れ目が縁の切れ目状態になってしまい、続けたくてもいつか諦めた方がいい状態になる恐れがあるということです。
なので「お金」から目を逸らして成功するのはごく一部で、無視して活動するのはかなり黄色信号だと僕は思っていました。
ここで分かっていただけると思うのですが、彼女がやりたい小説、執筆活動にはほとんどお金がかからないということです。
戦時中に書いていた小説家がいるように、物作りの中でも段違いに低コストで済む業界を目指していたからこそ成立した関係ということになります。
「お金が欲しかった僕とお金では買えない何かを探していた彼女」
根本的に相性がとても良かったのが今日言えるこの関係性を成立させる条件の一つだということです。
長々と今回だけで書くことは難しいのでここら辺で引き上げますが、僕は確かにお金の存在を意識して計画的に支援してもらえる状況を作ってはいた。
別に僕がアーティストのファーストステップとしてベストかは分かりませんが、この先も物作りを続ける為の一つの事例として書いていければ良いなと思っています。


養う女と養われる男で雑談するpodcastをやっています。2人の温度感が伝わるとうれしいです。
おひまな時にぜひ。

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