ショート百合小説《とうこねくと! ぷち》ほおずきって食べられるの?恋どろぼうな東子さま
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
「恵理子ちゃん、食用ほおずき買ってきて!」
テーブルの前にカスタードプリンを置き、こちらを見つめている奥さま──神波東子さまの付き人をしています。
「えっ、食用ほおずき……ですか?」
私はそう聞き返します。
「そうよ」
まっすぐな目で私を見つめる東子さまですが……
「ほおずきって、食べられるんですか?」
「あら、恵理子ちゃん知らないの? この動画を見てみて」
東子さまはそう言うと手元にあったスマホを取り出し、画面を私に見せました。
「あっ、これは……」
その画面に映った人物に、私は見覚えがありました。
「この人……作者の、やしゅさんじゃないですか!」
「そうよぉ。やしゅちゃんの故郷である上小阿仁村は、食用ほおずきが特産品なのよ」
「『恋どろぼう』って名前、可愛らしいですね」
「ほんと。どうやら『甘酸っぱい初恋の味』らしいわ」
「動画でも、みなさん美味しそうに食べてますね!」
「初恋の味……すっごく気になるんだけど、今調べてみたら、どうやらシーズンは終わってるみたいねぇ」
「それは残念です」
「でも、食用ほおずきを使ったお菓子がいっぱいあるみたいだし、食用ほおずきのお酒とか、ドライフルーツみたいになった食用ほおずきも置いてあるそうよ! だから恵理子ちゃん、買ってきて!」
「えええっ!? ここから上小阿仁まで車で1時間くらいするんですよ!?(※注)」
慌てふためく私に、東子さまは少し悩んだ後、ひらめいたように顔を上げました。
「それなら、私も一緒に行くわ! ドライブデートなんでどう? きっと楽しいわよ〜!」
そう言った東子さまは、さっそくお出かけの準備をしにお部屋へ戻っていきました。
「もうっ、東子さまったら……」
私はクスッと笑います。
運転は苦手な私ですが、東子さまと一緒のドライブならきっと楽しいに違いありません。
12月29日の誕生花は、鬼灯。
『偽り』とか、『ごまかし』とか、あまりプラスにとらえられない花言葉だけど……
この食用ほおずきは、偽りも、ごまかしもない、初恋の瞬間のときめきを教えてくれるはずです。
来年こそはシーズンを狙って、東子さまと一緒に生の食用ほおずきを買いに行かなきゃ!
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(※注)
恵理子ちゃんたちは、秋田市のとある街に住んでいるという設定です。
秋田市から上小阿仁村までは、電車やバスは通っていません。
村へお越しの際は、自家用車をオススメします!(こんなご時世なので尚更……)
恵理子ちゃん、雪道の運転は気をつけてね!
ふたりが来るのを待ってるよ!(by やしゅ)
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