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ショート百合小説《とうこねくと! ぷち》舞い上がれ!カラフルひなあられ

 みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
 
「ひな祭り……ふふっ」
 
 テーブルの上に置いたひなあられを見つめながら、ひとりほほえむ奥さま──神波東子さまの付き人をしています。
 
「ひな祭り、ですね」
 私も東子さまのそばに座ると、東子さまは柔らかくほほえんだままこちらを向きました。
 
「あなたに出会うまでは、大人になってからひな祭りを意識することがなかった気がするわ。歳をとるにつれ、忘れていってしまうのかしらね……」
 
 そう言って、ひなあられの封を開けようとする東子さま。
 しかし、なかなか袋は開きません。
 
「お待ちください東子さま。私が開け──」
 
 最後まで言いかけた時、東子さまが開け放った袋はボンと音を立て、ひなあられが弾け飛びました。


 
「……」
 
 時間差で降ってきたひなあられの雨を浴びながら、呆然とする私たち。
 
 そして。

「ぷっ……あははははは!」
 
 ふたりで吹き出し、大笑いしました。
 
「まさか、何十年ぶりのひな祭りで、ひなあられをかぶることになるなんてね」
 涙をぬぐいながら笑い続ける東子さま。
「私も、こんなひな祭りは初めてですっ」
 笑いすぎて、お腹が痛くなってきた私。
「まあ、楽しいからいいわ。片付けも一緒にしましょ」
「はい、東子さま」
 
 私はさっきのシーンをリプレイします。
 宙に舞った色あざやかなひなあられは、満開の桜を連想させました。
 
 秋田の春は、もうちょっと先。
 東子さまと迎える桜の季節が、今から待ち遠しいです。

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