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連載百合小説《とうこねくと!》東子さまの知らない恋物語(1)

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 みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
「つらいこと、話してくれてありがとう。……さて、夕飯の時間ね。今日は私にもお手伝いさせて」
 そう言って腕まくりをし、鼻歌まじりで台所へ向かう奥さま──神波東子さまの付き人をしています。
 
 高校時代のトラウマはさきほど東子さまに吐き出した私ですが、高校時代にあったもうひとつのお話は切り出せずにいました。あんなに楽しそうにしている東子さまに、過去のその話を今するのはどうも違うような気がしたのです。
 
 過去のその話──高校時代、周囲の目を避けるように密かに付き合っていた、私の『彼女』のことを。
 
 *
 
  『彼女』こと、南武有希。茶髪のショートボブで、姉御肌の女の子。高校で初めて出来た友達です。
 クラスは違ったけど、同じ帰宅部同士。帰りのバスが一緒だったこともあり、私たちはバス停で自然と会話を交わすようになり、気づけば『南武ちゃん』『北郷ちゃん』と呼び合う仲になっていました。
 
 仲良くなった私たちは、誰もいなくなった放課後の教室に集まり、いつも何気ない話をして笑いあっていました。勉強のこと、遊びのこと、流行りのファッションや昨日見たドラマのこと。南武ちゃんと一緒にいる時間は、私にとってかけがえのないものでした。
 
「北郷ちゃんはさ、ゴスロリ似合うかもね」
「えーほんとに? まだ着たことないんだけど。高いから買ったこともないし」
「バイトしない? お金貯めてゴスロリ服買お」
「いいね。やっちゃおっか」
「でさ、今度駅前行かない? 新しく出来たビルの中にゴスロリのお店も入るらしいじゃん」
「南武ちゃんよく知ってるね」
「へへ……。実はさ、アタシも興味あるんだよね。ゴスロリとか、雰囲気が不思議で可愛いものに」
「南武ちゃんも?」
「うん。なんかあの世界観がいいじゃん。他を寄せつけない、独特な世界観」
「あ、それわかる」
「やっぱり。北郷ちゃんもわかるでしょ? あの感じ」
「うん、めっちゃわかるよ。だからそういう雑誌買って読むんだよね。ファッションだけじゃなく、ポエムみたいな文章がたまらなく好き」
「え、もっと詳しく知りたい。北郷ちゃんの雑誌貸してよ」
「うん、いーよ。南武ちゃんに似合いそうなお洋服も探しちゃおう」
 誰もいない教室。隣どうしくっついて、ゴスロリ雑誌を読み漁る私たち。南武ちゃんと過ごすゆったりした時間が大好きでした。

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