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おいしい温度。燗の利き酒Vol.5『天寿/純米酒』

日本酒は、自分の魅力と特性を最高の形で表現してくれる温度を求めている。

「同じ日本酒で、燗の温度を変えると味わいがどれほど変化するか」を試す『おいしい温度。燗の利き酒』シリーズの第5段。

前回第4回目から、燗酒の利き酒方法を変えました。詳しくは以下2項の通りです。

1.  銘柄選定

既に何年も前からお世話になっている銘柄、秋田の天寿酒造さんが造られる、その名も『天寿』。

この銘柄を知ったのは近所の大衆スーパーで簡単に手に入るからだったんですね。

この手の伝統的なシンプル純米酒は、その傾向として冷やすと味わいが固くこわばってしまったり入口から苦味が先行するようなことが多いところ、

このお酒はそんなことはなくて、冷やしても温めてもお米のしっかりとした旨みと飲み口の柔らかさを感じ取れる銘酒なんです。

そんな良いお酒が近所で手に入るということで、伝統的なシンプル純米酒が飲みたくなったらまずこの銘柄に手を伸ばしてます。

裏ラベルの写真です。

2.  用いた道具と燗付け方法

前回から、道具と燗の付け方を一部変更しました。ちろりは今後、錫や銅の本格的なものを揃えたいと思ってます。(ネット調べでは、アルミ製もそんなに悪くないよ!)とのことで、今回は家にあるアルミ製です。

1) 道具
・8勺サイズの利き猪口(磁器)
・ちろり(アルミ製)
・温度計:TANITAの料理用デジタル温度計

2) 燗付け方法

・鍋に70℃あたりのお湯をはる。

・ちろりにお酒を注ぎ、ちろりごと鍋の中へ浸け湯煎。

・デジタル温度計をちろりの中に浸け、温度を計測。温度を上げていき、30℃から5℃刻みで利き猪口にその都度注いで利き酒。

・利き猪口についても、湯煎しているちろりの横に浸けて温めておく。

写真のような感じです。


3. 利き酒結果 

以下は、上記の通り湯煎で燗付けした日本酒を徐々に5℃刻みで上げていき、「これ以上温度を上げても美味しくならない」と判断できる温度でやめています。

まずは常温での利き酒結果。

入口は、上新粉や綿飴、炊いたご飯を思わせるふくよかな香り。口に含むとお米の甘みが柔らかな酸味に乗って口の中で膨らんでいく。
キレは柔らかい酸味に優しい苦味が乗って、程よい余韻でキレていく。

以下は燗の利き酒結果です。

30℃=日向燗 結果:○
飲み口が柔らかく感じる。冷やよりも甘みを感じる。酸味は少し奥で優しくスタンバイ、苦みが少し和らぐ。

35℃=人肌燗 結果:◎
飲み口がさらに柔らかくなり、酸味が柔らかくも少しだけ輪郭を帯びてくる。その酸味の引き締まり感に支えられて、お米の甘みがほんわりと出てくる。

酸味に支えられた甘みの優しい余韻のキレ感。これは美味い。

40℃=ぬる燗 結果:◎
人肌燗に比べて、さらにほんの少し酸味が立って前に出てくるが、お米の甘みもちゃんと感じ取れる。美味しい。

苦味が和らぐ気がするのが不思議。

45℃=上燗 結果:△
少しアルコール感出てくるが、気にならない程度。酸味がさらに立って来て、甘みと酸味のバランスの崩れを感じてしまう。

酸味が主体の味わい。

50℃=熱燗 結果:△または×
酸がさらに強い。アルコール感も強くなり、このアルコールのボリューム感は悪くなく個人的には好きだけど、飲み口の柔らかさというこのお酒の特徴を表しているとは思えない。別のお酒を飲んでいるみたい。

ここで昇温はストップ。これ以上上げると、もっとアルコールと酸が立ちそう。


4. 総評 

柔らかい飲み口をベースにした、厚みを伴うお米の甘さ・旨みというこのお酒の特徴を一番よく表していたのは、35℃=人肌燗〜40℃=ぬる燗だと思いました。

これまでは手間を惜しんで、大抵は常温か冷やして飲んでたのですが、この手のシンプル純米酒を燗で飲んだ時の安心感は大きいなーって、改めて実感しました。

温かいお茶を一口飲んだらホッと力が抜ける、あの感覚ですね。

これぞぼくの中のスタンダードな日本酒、シンプル純米酒。やっぱり美味いです。

冷やしても温めても美味しい、この日本酒の懐の深さに感謝。

ごちそうさまでした!


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