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おいしい酒器。利き酒Vol.9『東一/純米吟醸/Nero』

自分の持ち味を最高の形で表現してくれる器。日本酒は、そんな酒器を求めている。

同じ日本酒で、酒器を変えると味わいがどれほど変化するのか。酒器を代えて利き酒する、「おいしい酒器」シリーズの第9弾。

酒器が変わると味わいも相当変化する。

日本酒の美味しさの本質は「味わいの重なり模様」にあると思っているぼくは、普段日本酒をワイングラスで飲む(『リーデル』というグラスメーカの脚なしタイプ)。ワイングラスで飲む理由について詳しくは以下記事の通り。

そんなぼくの個人的嗜好は一旦置いておいて、他の酒器で飲むと味わいや香りが具体的にどう違うのか試してみた、その記録。

1.銘柄選定の基準  

今回酒器別のテイスティングに選んだ銘柄は、『東一/純米吟醸/Nero』。

日本酒のアルコール度数の設定にはいくつかあって、

①通常の発酵後そのままの状態で17度〜18度程度のアルコール度数のもの。近年よく見かける「無濾過生原酒」の、「原酒」は大抵この度数。(原酒とは発酵完了後に水を加えていない、という意味です)。

②上記①に加水をして15度程度のアルコール度数に整えるもの(大多数の日本酒はこれ)。

③13度〜14度ほどの低アルコール度数に抑える発酵をさせたもの。加水をしないという意味で、これも原酒です。

今回は上記の③のお酒になります。加水をせずに、低アルコール度数を狙って造られたお酒。
低温での発酵を長期間行うことで発酵具合をコントロールし、加水をしない原酒のままで低アルコールになってます。

2.用いた酒器と選定の基準  

今回用いた酒器はこれまでと同じく以下一覧表の5種類。

1)普段は①のワイングラスで飲んでいるので、これがぼくの標準。

2)②利き猪口だけ磁器になるが、これは利き酒の一般「標準」酒器。ぼくの「標準」である①ワイングラスとの差異を知る目的。利き猪口のサイズは①ワイングラスの口先口径と同じぐらいの8勺(1合の8/10)を使用。

3)②以外の素材は全てグラスで揃えた。素材は同じ条件で、形状が違うだけで味わいがどれだけ変化するのかを見るのが目的。

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3.酒器別利き酒結果 

①ワイングラス 結果:◎
上立香は洋梨を思わせる吟醸香をしっかりと感じる。

口に含むと、洋梨の香りを伴う綺麗な酸味が優しい旨味と一緒になって、爽やかに口の中に広がる。

飲み口は低アルコール度数のお酒らしく、一貫して淡麗、軽快ながらも、どこか伝統的な日本酒のまろやかさを感じる。

華やかな香りに始まり、軽快ながらもまろやかさに支えられた優しい旨み感が、軽快な瑞々しいキレで終わる。この味わいの変遷は、なかなか他では味わえないと思う。

美味しい。

②利き猪口 結果:
上立香はワイングラスに比べると弱まってしまい物足りない。

お米の甘みと酸味感のバランス、淡麗ながらも旨さをしっかりと感じ取れるところはワイングラスと同じく申し分ないと思う。

③天開グラス 結果:◎または○
上立香は、ワイングラスに比べると物足りない。これはグラスの形状から仕方ない。

口に含んだ後の酸味がとても柔らかく、そのおかげで旨さに優しい膨らみ感が伴うようになる。
いい意味での軽快さ、飲みやすさが上手く表現される。

美味しい。

④カクテルグラス 結果:△
入口の香りはほぼ消えてしまう。口に含むと淡麗さが前面に。軽快さが強調され、これはこれで悪くはないが旨味がかなり弱くなる。
旨さが特徴のこの酒質を表現出来ていないようで、もったいない。

⑤ シャンパングラス 結果:○
上立香はほぼ感じない。
代わりに口に含んだ際の旨みの広がり感は、これが一番だと思う。

酸味の柔らかさとのバランスも良く、入口の香りを感じられないのがもったいないが、口に含んでからの味わいは美味しいと思う。

4.総評 

低いアルコール度数による飲みやすさをベースとしながら、はっきりとした品のある香りと、まろやか且つ優しい旨み感。

一口飲んでみて、飲みやすさと満足感を両立させてくれる、凄いお酒だなと感じました。

近年よくあるような、「綺麗で甘く飲みやすい」という部分だけが表現されたお酒ではなく、低アルコールとは思えないまろやかさとしっかりしたお米の旨み感は、どこか伝統的な日本酒を感じさせる、他では無い味わいだと思います。

この素晴らしい酒質を最高の形で表現してくれたのは間違いなくワイングラス。やはり、入口のしっかりとした吟醸香がこのお酒の特徴からは外せず、口に含んだ際の吟醸香と柔らかい酸味との融合感はワイングラスでのみ表現されていたと思います。

今回も美味しかったです。
ごちそうさまでした!



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