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八百屋の真骨頂と怖さ【八百屋から見た食no.20】

記憶力は良いほうだと自負しています。
一度訪れた場所や経路を覚えています。特技かもしれません。お客さんとの普段の会話の中であまり意識したことはないものの、営業中に交わした会話の内容をおおよそ覚えています。おそらく丸1年くらい。季節モノであれば3-4年でしょうか。

マスク社会になってしまって判別しにくくなったものの、週1以上来られる常連皆さんの顔・お名前・好み(良く買われる食材)は勝手に覚えます。客商売とはそういうものです。

毎回買われるトマト。週1パン販売のスコーンの種類。特定の時期だけの文旦・かおり梨・とうもろこし・ビーツ・たけのこ。付随して会計時のレジ袋の有無も。【お客さんの好みを選ぶ】とは、喜んだお客さんの声や表情を思い出すことにほかありません。次、店で会話する際の“時系列的な会話”が成立するためにも記憶を毎度辿っています。

商品が高位安定している(特定できる)からこそできる業とも言えます。

1つの野菜を見て生産者・製造現場を思い浮かべるのと同様、“そういえば○○さんが喜んでたなぁ”と思い出しながら仕入や接客をします。「いつもミニトマト買う○○さん、お子さんが喜んで食べたって言ってたなー」のように。

味が乗った野菜くだもの食材を出す“作り手”。
味が乗った野菜くだもの食材を食べて思い出す“買い手”。
繋げる“売り手”としての矜持。

嬉しさもやりがいも感じる反面、40代中盤に差し掛かり記憶頼りの商売は怖いなぁとも思ってます。

つくづく幸せな仕事やってますね。しんどいけど(笑)

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