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今月の短歌 23年12月16日~12月31日

「人生は一度きり」だと思わない 鮮やかな朝にできたニキビ

砂漠には怠惰な父が「いい男」目指す冬の日、オールインワン

掌で掬えるだけの六花すら僕には扱えないよ、1℃

復興灯すイルミネーション 人々の笑顔がめっちゃ嬉しくて

ズレた視線両目に映るホログラム乾いた風に湿った眼鏡

小規模の狼の群れ 生きるため この最果てで遠吠えをする

冬至まで太陽高度低くなり日差し眩しくゆく年の知らせ

多幸感 扁桃腺が腫れるたび表れるのはおそらく「未来」

一日の情報量のキャパシティ日が変わるたび過去消す作業

忙しい。忙しいけれど贅沢に食事頬張る白い追い風

福袋 在庫処分であるはずの希望の残滓「福」に化けるか

「第二の脳」をいたわることの大事さを痛感しはじめる四十路

ありふれた放射冷却 ミルクチョコが酸いイチゴをよく引き立てる

木星の最大瞬間風速 君の目となるビュッシュ・ド・ノエル

サイレント・ナイト ホーリィ・ナイト 白い光を浴びて走る夜汽車

潮騒が聞こえる街が久しくて見える熱量赤い冬夜に

体内でもっとも感度が高くなる手と足の先寒波の刺激

鋭敏な凍結したての空気を吸い込みながら孤独を変える

いつ着ればよく分からない大きめのデニムジャケット この冬もまた

これまでもこれからも舞う人生のサンバは高く烈しく燃えゆく

お願いをする方よりもお願いをされていたくて眺める月夜

点と線 たぶんその間の濁流に洗われながらリセットしてる

情熱よ 白い花瓶に花束を その一歩から 次の二歩目へ

本当は「競争」それを諦めたはずなのにまだ、抗う心

ダンボールに有田みかん ほろ甘い令和五年に回れ右して

僕にはさ、遅すぎたかも知れないね だけど明日も星は流れる

旅の果て ほろり苦味のカルダモンは刺激的な役目を終えた

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