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<10>スランプから抜け出せなければ「自分にとって何が終わろうとしているのか?」を考えてみよう~3つの質問への回答事例と解説~

中堅のビジネスパーソンが、これまで情熱を持っていた仕事への興味が失せたり、仕事の勝ちパターンが通用しなくなってスランプから抜け出せないなど、これまでにない壁に直面した時に行うべきことは、古い自分のリセットです。

そして、その為にまずやるべきことは、次の3つの質問を考えて答えることで現状を把握するのだと前回10/16のコラムで述べました。
転機をむかえた中堅ビジネスパーソンが考えるべき3つのこと

1)自分にとって変化してきたことは何か?

2)自分の心変わりは何か?

3)その変化が自分にどう影響しているのか?

そこで、前回のコラムで紹介した転機を向かえた中堅の営業マネージャー和田さん(仮名/37)が、上記の問いに対してどう答えたのか、参考までに紹介します。


3つの質問への回答事例

キャリアの転機をむかえたであろうインターネット系広告会社の営業マネージャー和田さん(仮名/37)が、上記の3つの質問に答えた内容は以下の通りです。


1)自分にとって変化してきたことは何か?

・切磋琢磨してきたライバルがやりたいことを見つけて転職。
・部下が成長して安定して売り上げられるようになってきた。
・採用した部下の教育に時間を割けずにいると立ち上がれない人もいる。
・自分が一番業績を上げても、以前の様に称賛されない。
・従来の営業のやり方では上手くいかないことが時々生じる。
・ライバル会社が増えてきた。
・営業ターゲットのニッチな市場が拡大して大手企業の参入が増加。
・会社が成長して業績と組織が拡大するにつれて、会社から自分が特別扱いをされることが無くなってきた。

2)自分の心変わりは何か?

・「このままでよいのか?」という不安が大きい。
・誇りを持って仕事をやってきたが、最近マンネリを感じる。
・これまでは熱意を持っていた仕事に、あまり興味を感じなくなってきた。
・自分の勝ちパターンを部下に教えてきたが、部下それぞれにとってそれが必ずしも最適なやり方ではないかも知れないと感じる。
・実は上司に信頼されている訳ではないと気づいた。

3)その変化が自分にどう影響しているのか?

・新たなビジョンを描きたいが、やりたいことが見つからないという悩み。
・営業でライバル会社に負けて受注を取りこぼすことが少しずつ増加。
・新たな提案やサービスを考案する必要性がある。
・新入社員が実力を発揮できるようになる前に退職する人が出始めた。
・部下の教育やサポートなどに時間を割かざるを得なくなってきた。
・仕事への興味の低下から、新たな顧客を開拓する意欲が無くなってきた。
・上司からの信頼が思っていた程は無いと気づいて、会社へのロイヤリティと仕事へのモチベーションが下がっている。


~解説~

営業マネージャー和田さんの回答例は以上です。

何が終わろうとしているのか

もし、読者の方で前回コラムで紹介した「いま自分に起こっていること」を把握する3つの質問に取り組んだ人がいたとしたら、自分の周りで起こっている変化や自分の内側で生じている変化を把握できましたでしょうか?
 
そして、それらの変化が自分に対してどのような影響を及ぼしているのか、見えてきましたか?

自分が何らかの問題を抱えていると感じた時、人は誰しもすぐに問題を解決する為の答えを短絡的に求めてしまいがちですよね。一挙に問題を解決する為に何かやりたくなるものです。

でも、よく考えずに反射的に何か“新しいことに”取り組んだとしても、それでは古い考えのままで、今までと同じ発想で同じ様なことを繰り返すだけになりがちです。これでは自分に生じている問題を何も解決することにならないことは、既に述べた通りです。

しかし、「いま自分に起こっていること」を把握する為の3つの質問に取り組むと「何が変化していて、それらが自分にどう影響しているのか」という自分の現状を理解できます。

現状を把握すれば心は落ち着く

キャリア/人生の節目で漠然とした不安や悩みで辛い時期を過ごしていたとしても、3つの質問に取り組んだように丁寧に自分の状況を振り返って、自分に生じている変化とその影響を具体的に把握するだけでも気持ちは落ち着くものです。

例えば、人は何かに脅威を感じた時、それが目に見えない場合は不安が大きくなって恐れを感じますが、その何かが何であるのか具体的に見えれば安心出来ます。真っ暗な夜にガサガサって音がしたら「何だろう?」と思って恐怖を感じますが、その音を立てたのが猫だと分かれば安心するものです。
コロナ禍で世界がパニックになったのも、ウィルスという目に見えないものが原因であったから人々は余計に怖いと感じたのではないでしょうか。

ありのままに受け入れた上で分析する

漠然とした不安や悩み、それによって混乱や焦りが生じた時には、自分に何が起きているのか客観的に観察をして不安の原因を具体的に把握することが気持ちを落ち着かせるコツです。「あー、自分はこういうことで不安を感じているのだな」とその状況にある自分とその感情をありのままに受け入れましょう。

そして、自分の周りで何が変化しているのか、その変化が自分にどう影響しているのか、と現状を分析して把握しましょう。そうすれば、考えを次に進めることが出来ます。

例えば、自分が会社で昇進をして役割がプレーヤーからマネージャーに変わったけれども、管理職としての仕事に興味が持てないということが生じている現状があるとすれば、自分は何が不満で興味が持てないのか?その原因を考えてみましょう。

自分がスタープレーヤーで周囲の人々から称賛されることが嬉しかったのに、それが無くなってつまらないのか?

それとも、部下のスキルを引き上げてスタープレーヤーにする為にはどうやれば良いのか、そのやり方が分からず悩んでいるのか?

あるいは、自分の役割の変化に気持ちが抵抗しているのか?

この様に現状を分析して自分の仕事に興味が持てなくなっている原因を把握しましょう。原因を明確にして自分が抱える問題を対象化することが出来ると、漠然とした不安や混乱した気分は落ち着いてくるでしょう。

自分にとって終わろうとしていることは?

そして、次に考えるべきは「自分にとって何が終わろうとしているのか」ということです。まず、自分の内面に目を向けてみると、自分がとらわれていた古い考え方、思い込み、興味、自分はこうだ!と信じてきたセルフイメージ、習慣、仕事のやり方、スキルや知識、などがあります。他にもあると思いますが、そういった事柄の中で今の自分にとっては古くなってしまったものは何でしょうか?

また、自分の周囲に目を向けてみると、従来からの友人、付き合い、コミュニティ、よく足を運んでいた場所などがありますね。これらの中にも、これまでは親しくしてきたけれども距離を置いた方が良い人間関係や、足を運ばない方が良い場所などは無いでしょうか?

必要であると思っていたことは、本当に今も必要なのか?

慣れ親しんだことが終わるのは、怖いものです。混乱することも、絶望することもあります。

ですから、終わりからは目をそらしたいと思うのは人として自然な感情です。終わりには目をつむって問題をすぐに解決する為に何かをやろうとしてしまいがちです。

しかし、変化のプロセスの入り口である終わりを消化しないことには、次には進めません。

終わりを消化して次に進む

終わりの局面は、これまでの古い考え方、古くなった行動パターン、止めるべき悪習慣、過去のものになりつつある自分の在り方などをデリートしていくプロセスです。

ガーデニングなどをやっていると分かると思いますが、古い枝と幾重にも重なる葉に覆われた日の当たらない地面には新たな植物の芽は育ちません。古い枝や葉を取り除くことで日が差し込み新しい芽が顔を出し始めます。

もし営業マネージャー和田さんと同じように、自分がキャリアの転機をむかえているとしたら、あなたにとって本当に必要なことは、自分にとって古くなったことを1つ1つ取り除いて古い自分を納得の上でリセットすることです。そうすれば、次のステージに進むことが出来るのです。

(2023年10月23日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士 


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