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<9>転機をむかえた中堅ビジネスパーソンが考えるべき3つのこと

充実感を持って続けてきた仕事に対して急に興味が失せることや、自分の勝ちパターンが崩れ始めて仕事のパフォーマンスが落ち始めることが、中堅のビジネスパーソンに生じることがあります。そんな時は、その人にとってはキャリア上の転機をむかえ始めているのかも知れません。

今回は30代後半の営業マネージャーが転機をむかえた事例(前編)を紹介した上で、そのような状態に陥った時に考えるべき3つのポイントを説明します。


ある営業マネージャーの話(前編)

インターネット系広告会社の営業マネージャー和田さん(仮名/37)が転機を迎えた事例を紹介します。

やり手の営業マネージャーとして活躍

和田さんは都内の私立大学卒業後に大手の広告代理店で営業職を5年ほど経験した後、現職に中途採用で営業担当者として入社をして9年目。入社後は中途入社社員で同社史上最速の1年でマネージャーに昇格したやり手の営業パーソンです。

マネージャーに昇格してからは部下5名のチームでプレイングマネージャーとして自らもクライアントに対峙する最前線で営業活動に従事しながらチームをけん引していました。部下と同じように自らも営業活動を行うことで、結果と働きぶりを行動で表すリーダーです。

部下と一緒に走りながら、皆を鼓舞して士気を高めて、必要に応じて背中を押したり、手を差し伸べたりして、チームを引っ張っていくスタイルで社内トップクラスの成果を上げて活躍をしていました。

彼は常にモチベーションが高く、自分の仕事に誇りを持って取り組み、その姿勢や考え方が部下をはじめ他部署の人々にまで良い影響を与えているインフルエンサーでした。彼自身も営業マネージャーの仕事が自分にとって天職だと思っており毎日が充実していました。更に、チームの業績も、会社の業績も、とても良くて右肩上がりで成長していましたので、周り人々からは和田さんが輝いて見えていたことでしょう。

待遇や働き方にも満足

因みに、このインターネット系広告代理店で営業マネージャーとして働く和田さんの年収は、ベース年俸が700万円で業績賞与が150万円~200万円(会社業績と個人評価で0円~200万円程度で変動する制度)という水準でした。忙しいものの労働時間は残業含め1日12時間前後で収まっており週末はほぼ休めて、リモートワークも柔軟に活用出来るなど、労働条件や環境には不満はありませんでした。

入社から8年が経過した頃、自らのキャリアに不安感が広がる

しかし、入社してから8年程度が経過した頃から和田さんは違和感が生じてきたと言います。自分の心の内側から「このままで良いのか?」との疑問と漠然とした不安感が広がってきたそうです。

きっかけは他のチームでマネージャーをやっていた同僚の転職でした。良きライバルでもあった同僚が退職しIPOを目指しているベンチャー企業へ営業部門の執行役員として転職をしたのです。良い意味で張り合う仲間と一緒に働くことが自分にとって思っていた以上に大切であった様にも感じました。

そして、その仲間が自分に正直にやりたいことに向けて次の一歩を踏み出したことも、自らのキャリアを考えるきっかけとなったようです。今の自分にはやるべきことがあるから、それに集中すべきだと思って今まで通り頑張ろうとしているのですが、ふと自分を振り返り、自らの働く環境を見渡すと、「このままで良いのだろうか?」との疑問と不安が湧いてくるのです。
でも、当時の和田さんには新たに挑戦したいことが具体的にある訳ではありません。疑問と不安感だけがある状態です。

自分の中で何かが終わった

今まで疑いなく興味を持っていたことに興味を持てなくなり、また勝ちパターンが確立していた営業手法も時々ライバル会社に仕事を取られることが増え始めたのです。これまでの強みであった勝ちパターンが、逆に柔軟性の無い同じパターンの繰り返しになりつつあることが目立ち始めたのです。

それから自問自答する日々が続きました。「もっと新しいスキルを身につけるべきか?」、「新しい市場を攻めるべき?」、「でも、今の会社でそれらをやるのは何か違う気がする」、「別に自分がいなくても良いのではないだろうか?」、「けど、子供が生まれたばかりだし生活の安定が必要だな」、などと頭の中で独り言がぐるぐると回っていました。答えは出ないのですが、今までには無かったような気持ちで、自分にとって何かが終わった感じが漠然としていました。

解説~自分に何が起こっているのか~

営業マネージャーの和田さんが陥っている状況は珍しいことではありません。今までは仕事に情熱的に取り組んできて実績も十分に上げてきて大きな不満もなかったのにも関わらず「このままで良いのだろうか?」と不安になってしまうことは誰しもあります。

自分の内面や仕事の方法が旧式化

この不安感は、特に10年、15年とキャリアを積んできた中堅クラスの人々に頻繁に生じる自然な現象です。和田さんの事例では、きっかけは同僚の退職と転職でしたが、他には人事異動、昇進、会社の業績悪化といった仕事上の事象や子供の誕生などのプライベートでの出来事など外部からの刺激が引き金となって、この様な悩みが生じることがあります。

また、こういった特別なきっかけがなかったとしても、ずっと自分が情熱を感じていた仕事にいつの間にか興味を持てなくなってしまうことはあります。平たく言えば「なんか飽きてのかなぁ~」という漠とした気持ちです。

他にも、上手く機能していたやり方が機能しなくなって何か違ってきたと感じることがあります。「近頃、どうしてか上手く行かない時があるなぁ~」って感じ始めたとしたら自分の勝ちパターンだと思っていた仕事のやり方が古くなってきているのかも知れません。

やりがちな間違った方法

そのような時に人は、つい変化に抵抗して今まで通りにやっていこうとします。古くなってしまった仕事のやり方で今まで以上にアクセルを踏んで頑張ってしまう、とか。

興味が無くなったはずの仕事や古くなってしまったはずの仕事のやり方を必死に繰り返して、古い興味や古いやり方が間違っていないということを証明したくなることは人のさがです。

それに「興味が無くなってきたかも」なんて甘いことを言ってはダメだという思いもありますよね。自分で内心そう叱咤激励することもあれば、人に相談したらそう言われることだってあるでしょう。

しかも、最近は仕事においてより高い収入や立場が重視される傾向が強まっているので、自身の内面に根ざす働きがいや興味を軸としてキャリアを追求することに対しては知らず知らずのうちにブレーキがかかってしまうこともあります。

しかし、自分の内なる声を過小評価すべきではありません。 

古くなった発想での頑張りは問題の先送り

ここで立ち止まって考えること無しに、今までと同じ発想で同じようなことを繰り返すことにエネルギーを費やしても、問題を先送りしているだけです。

不安は消えず、新たな自分に変わることも出来ません。古い自分の発想で、手当たり次第に手を出してもエネルギーと時間を浪費するだけです。これでは頑張っているのに辛いですよね。

まずやるべきは古い自分をリセットすることです。

終わりを感じた時に考えるべき3つのこと

それでは、古い自分をリセットする為にやるべきことは何でしょうか?
この様な状況に直面した時に、その問題を解決する為に始めに考えるべきポイントがあります。

まず今の自分に何が起こっているのか現状を把握する必要があります。
自分の周りや内部で起こっている変化を把握して、それらが自分に対してどう影響しているのか理解しましょう。これが一番初めにやることです。
そうすれば、新たな自分に変わる為のプロセスを先に進めることが出来ます。

まとめると、古い自分をリセットする為に、まず実施すべきことは現状の把握です。

その為に考えるべきことは次の3つです。

1)自分にとって変化してきたことは何か?

2)自分の心変わりは何か?

3)その変化が自分にどう影響しているのか?

以上の3つを考える為の時間を取ることをお勧めします。
一人で静かになれる時間を取ってコーヒーでも飲みながら考えてみましょう。

以下に、各ポイントについて考える時のヒントを書いておきますので、
参考になさって下さい。


~いま自分に起こっていること(質問と考える時のヒント)~

まさに今、上述の営業マネージャー和田さんのような状態に陥って悶々としている人は、下記の質問とヒントを読んで、自分の回答を考えて書き出すと良いでしょう。

1)自分にとって 変化してきたことは何か?

仕事、役割、人間関係、プライベート、環境などで変化してきたことは何でしょうか?

また、これまでは上手く回っていたのに機能しなくなってきたことはありますか?

2) 自分の心変わりは何か?

あなたがこれまで長く熱意を持っていたにも関わらず、興味を失ったもの、あるいは、興味を失いつつあるものはありますか?
思い当たることがあれば、書き出しましょう。

3) それらの変化は自分にどう影響しているのか?

例えば、肩書を失ったこと、職業を失ったこと、パートナーと別れたこと、仕事の勝ちパターンが崩れ始めたことは、あなたにどのような影響を及ぼしたのか?

または、長く続けてきた仕事への情熱が冷めたことは、あなたに何をもたらしたのか?

このように生じた変化が自分にどんな影響を及ぼしているのか、書き出していきましょう。


以上となります。

少し長くなりましたが、「興味の対象が変わってきたなぁ」、「仕事に飽きてきた」、「どうも勝ちパターンが崩れてきたかも」、「仕事にマンネリを感じてきたなぁ」・・・という人は、上記の3つの質問に取り組むとよいでしょう。

(2023年10月15日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士




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