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熱湯で火傷してもいいから、死ぬまで好きと言われ続けたい

臨月の妹Bに会いに行く。実に1年ぶりの再会だ。たった5つ先の駅に住んでいるのに、出不精・デブ症・コミュ障な三拍子人間にとっては、NYとLAのディスタンス(※もちろん出不精なので想像です)に勝るとも劣らず、何かトンデモない理由がないと「来ちゃった♪」と小首を傾げて玄関前に立つ小悪魔みたいな行為は出来ないのだ。じゃあどうして今回(田中みな実になり損ねた)ヨネスケみたいなことができたのかというと、隣の晩ごはんが知りたかった訳でも、デカいしゃもじを購入したからでもなく、ただ、喝を入れて欲しかったからだ。

以前、妹Bが一人目の子を宿した臨月の時、どうしようもない男を切るに切れず延々と空中にのの字を書いてボヤいていたら一喝、“今すぐその男のLINEをこの場で消せ”と彼女は声高に仰った。これが同じ腹から産まれた子か...と見紛うほどの力強さで、ああ…俺はこうやって誰かに背中(と削除ボタン)を押してもらいたかったんだなぁ...と痛感した。彼女の助言通りその男と縁を切った後、仕事が見つかり、いい上司にも出会えて借金も消えた。まさに我が心のアイフル。もちろん利子は永遠につかないし、借りパクOKだ。

遊びに行くにあたって、何か土産はいらないか?と聞くと、何もいらなからネイルをしてほしい、とお願いされた。前にここにも書いたかもしれないが、元旦那に散々“大卒のくせに無資格な役立たず”と罵られ、何か手に職をつけねばとネイルスクールに通学し、サロンで働ける資格を半べそで取得した経緯があった。卒業後、多くのネイリストが地下労働並みのペリカしかもらえていないという現実に直面し、胸はざわざわ、俺の中のトネガワが対岸から手を上げてこう叫んでいた、「金は...命より重いっっ!」

そんなこんなで宝の持ち腐れとなっていた技術を、妹Bが掘り起こしてくれた。親族にもらった結婚祝いを全ツッパして取得した資格を水の泡にするなんてクズの所業!打首獄門!とは言わず、あくまで、最近息子に「妹Aちゃんの爪はきれいなおピンクなのに、どうしてママの爪は腐ったみかんみたいな色をしているの?(※意訳)」と指摘されたからだ、とのことであった。聖母が過ぎる。彼女は一体何回目の人生なのだろうか。人生1回目の俺が先に産まれただけで姉として優遇されてしまい、本当に申し訳ない限りだ。

現在息子は保育園に預かってもらっているため18時までは束の間の自由なの〜♪と微笑む妹Bは、幸楽苑の中華そばクラシック¥290さえも女に奢らせるクズと付き合っていたとは思えないほどの良妻賢母で俺を迎え、茶を入れて労ってくれた。

「で、ハッキリ言うけど、その相手(※この方)は今すぐ切りな?そいつ、お姉の好みの皮を被ったただのクズだから。」

バスン!ズサーッッ!ギェェェェ!

数多のダメ男の屍を越えてきた女が放つ、文春砲より威力のある一撃。

「は、初めはいい人だったんだよ?優しいし...」
B「ハンッ!ヤる前の女に優しくするなんて男のデフォだわ!クズでもできる!」
「でも結局、順番間違えた俺が悪かったのかもしれない、話は合うんだよ?」
B「ケッ!ダブルブッキングされてる時点でダメなの、話が合ってるんじゃなくて、お姉が合わせてるんだよね?違う?」
「あっ(思い当たる節あり)...うん、でも...毎日LINEもくれてたし、毎日電話も....」
B「なっ!その電話、毎日付き合ってたの?」
「うん、でも正直眠かった...俺6時起きだから...」
B「もう!だーかーらー!」
「都合...いいね?俺...」
B「そう!めちゃくちゃ都合よすぎ。友達って言われたんだよね?そんなすぐになれる友達って、セフレしかないの!お姉はもう、セフレでしかないの!」
「あああぼえぼえああ(バグ)...!!!ん、まぁそうは言うても今、臓器が一通り揃ってて息できてるだけで感謝やないですか?ちゃいますか?臓器って大事ですよね、分かりますっ♪イェーイ!」
B「コラァ!盛大に目と話を逸らすんじゃないっ!!!」
「おおおおおおおおお(慟哭)...!!!分かってた、なんとなく分かってたの。何回聞いても“好き”って言ってくれないし、俺の話とかも全然聞いてなくて、LINEの内容も彼のブログにコメント残すファンみたいな感じだったし、電話も限りなくテレクラ...ぐすっ...」
B「はい、さよならLINEしよ!今日しよう!今すぐ伝えよう!」

これが愛の言葉ならソッコーで捻り出して送れるのに。
ケジメをつけるとなると途端に手と頭が止まってしまう。

B「はいそこ!手がお留守だよー!送る送るー!」

【俺】という人間を辞書で引くと【尻軽】と出てくるのだろうか。
好きだからヤッたのに、好きだからヤッちゃダメだったんだね。
結局その場ではさよならLINEを送れなかったが、家に帰ってから長文で思いを綴り、強引にポストした。

今年は縁切り神社を2ヶ所もハシゴして(※ここともう一つは豊川稲荷)、縁結びの出雲大社(※珍道中)にまで行ったのにどうして...何の罪があってこんな苦行を...とグズる俺の肩に手を置いて妹B神は仰る。

「人は運が悪いから別れるんじゃないんです...自分が運のいい時に切れるのが悪縁...だから貴女は今...ものすごく運がいいんです...わかり...ますか...?(今...あなたの心に...直接呼びかけて...います...)」

嗚呼、静脈に注射したい金言の数々よ。いやはや子を二人宿し、ますます屈強になった妹Bにはアガペーしかなく、それだから友人に何度同じことを言われても切れなかった彼との縁を、1発でぶった斬ることができた。

たしか2つ前のnoteに“何回してもいいし、自分を成長させてくれるマジック、それが恋なのだ、ルンルン♪”と書いた記憶がある。今すぐに改ざんしたい。現実、「恋は人生の彩りにすぎないし毎回当たるバクチなんてつまらない」と唾を吐きながらも、腐肉を漁る手を止められなかった。
本当は、好きになった人に振り向いてもらいたかったし、愛してると囁き合う未来を、ずっと想像していた。

妹Bにはフットネイルを頼まれていたので、己のダイハードな毎日を筆に込め、這いつくばってお塗りした。トーマスが好きな息子のために、指にトーマスとジェームス(コンビか)を書いてくれと言われたので、スマホを片手に持ち、ありえない角度に肘を曲げながら一生懸命描かせていただいた。(※1)

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(※1 キューティクルのラインがいまいち攻め切れないよね〜?とよく先生に注意されたが、その注意が全然活かされていない甘いネイルライン...反省)

翌朝、彼からLINEが返ってきた。

「いろいろ有耶無耶にしてごめんなさい。まだ友達って感じでした。また機会があったらよろしくお願いします。」

え...?あんなに長々と思いを吐露したのに...たった...たった2行...
オーマイなんとも呆気なく...終ー了ー!!!!!!!!!!!!!!!!

つーかまた機会があったらって...
どんな社交辞令ギャグだよクソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


コーヒーを飲みながら“正拳イスぶち抜き”を連発し、軽く家の中を破壊してから出勤。もちろんその日は1日中、薙刀を持った俺がアイツを串刺しにする妄想が止まらなかったし、手も頭も安定のバグを来たして居留守しまくりの給料泥棒そのものだった。

ぬるま湯に浸かって、死ぬまで好きと言われない代わりに、たまにヤれる友達でいてもよかったのかもしれない。だがそれでは露店で買い叩かれるバッタもんのままだ。一生本物になれず、大切にされないまま、腐肉として扱われるなんてごめんだ。熱湯で火傷してもいいから、死ぬまで好きと言われ続けたい。

アラフォーの失恋は自然治癒を待っていたら即神仏になる。
歯がなくても食べられる肉を一人で飲みに行き、頭頂からつま先までをオイルまみれにしてほぐしてくれる店を訪ね、BTSと同じ数の諭吉を伊勢丹にダイナマイトして真紅のワンピを買った。
力ずくで癒すしかないのだ、強引にでも、前を向くしかない。

人生はみだしまくりの万年ハミパン野郎な俺だけど、臨月の女神に背中を押され、今宵本物になる覚悟を、もう一度、強く持つと決めた。決めたんだ。

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