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経理部、そこはガラパゴス。

(Twitterはこちら → @yanagi_092)
※このnoteは、毎週土曜の夕方に投稿しています

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14年目になりました。財務企画部に所属していた頃は、出世のレールから振り落とされて絶望の淵に立たされましたが、出世の壁を2回超えるという訳の分からない状況となりました。他に私と同じような方がいたら、TwitterからDMで教えてください。

ぼく「えっと、結局のところ、出世のレールに戻ったの?よく分からないな・・・」

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前近代的な手作業による拷問、その名は「テンテン(点々)」チェック

私は、損害サービス部門から脱出したい一心で、会計を中心とした勉強を続けてきたこともあり、経理部・主計グループへの異動は本当に嬉しかったです。

しかし、定期異動の4月は期末決算の真っ最中で、他部署から異動してきた私が戦力になれる訳でもなく、最初は決算のお手伝いから始めました。

経理の人「まずは、これの数値チェックをお願いします。これをテンテン(点々)と言います」
ぼく「何ですか、テンテン(点々)って」
経理の人「帳簿から正しく転記されているか、全部『点』を付けながらチェックします」
ぼく「・・・(えっ、手でやるの?エクセルで数値を突合させれば終わりじゃないのか、なぜ手でやるの?何かの拷問ですか??)」

手作業

やじるし

テンテン作品

やじるし

大量


これらの膨大な資料を、全て手作業で「テンテン(点々)」して、頑張った感のある紙の「作品」を創作するのです。windowsが普及する前の1980年代なら理解できますが、現代においてこのような労働集約的な手作業が蔓延しているのは、少々理解に苦しみました。

また、東京海上の人件費単価は高いですが、終身雇用の会社であり、作業あたりの人件費単価という概念が無いことも、無意味な「テンテン(点々)」が蔓延している要因になっていると思います。これは、損サ部門が人件費度外視で「査定あるべき論」に邁進しているのと同じ構図ですね。

このように、外資系企業だったら一瞬で廃止されるような作業が平然と残っていることが、東京海上に限らず、終身雇用を前提とする日系企業の競争力低下に大きく寄与しているのではないでしょうか。

いずれにせよ、私の最初の仕事は「テンテン(点々)」でした。

ぼく「えっ、機械を信じるな的な感じ?昭和のおじさん的な発想ですか?エクセルのif関数で突合したら終わりじゃないですか?」
経理の人「1円単位のミスが大きな事故につながるので、正確にチェックする必要があるのです。全てテンテンでチェックする『べき』なのです!!」

おじさん


「べき論」には注意した方が良い

そもそも、決算作業の目的は「正確な数値を作り上げること」だと思うのですが、なぜ手作業の「テンテン作品」を作り上げる必要があるのでしょうか。このように、経理部においては「べき論」が多い組織でした。

ここで、「~~すべき」という言い回しは、一見もっともらしく聞こえますが、所詮は個人の強い主張にすぎません。「~~すべき」とは「(私は)~~するべき(と思う)」と同義ではないでしょうか。

この「べき論」は、日本語独特の論証責任を曖昧にする特徴がある一方で、それっぽい主張をすることもできるので、使う人にとっては非常に便利な言い回しだと思います。しかし、多用すると、論点をごまかしながら進めることになるので、結局は思考停止に陥っているだけな面もあります。

このような背景から、ビジネスの場面において「べき論」が登場したら、私は注意深く論理構造を観察するようにしていますが、ほとんどの場合、論理の飛躍や抜け漏れがあり、話が繋がっていないことが多いように思います。なぜなら、しっかりとした論理構造があれば、そもそも「べき論」を持ち出す必要がないからです。

ぼく「すみません、テンテン以外にも数値の正確性を担保する方法はありそうですけど、なぜ『テンテンすべき』なのですか??」
経理の人「今までこれでやってきたからです。するべきだからです!」
ぼく「・・・(うん、お疲れ様でした)」

テンテン突合


決算反省会という名の公開処刑

そして、決算が終わると「決算反省会」という粛清の場が開催されます。私は、様々な部門を経験してきましたが、これは他部門では見られない独特のものでした。

経理のベテラン1「XXXの工程で誤りが生じました、なぜこのようなことが発生したのですか?担当は説明してください」
担当の人「しっかりチェックできていませんでした」
経理のベテラン2「すごくイージーなミスだよね、事前準備は十分だったの?ちゃんと工程を理解してるの?」
担当の人「申し訳ございません・・・」
経理のベテラン3「ちゃんと数値チェックしているの?」
担当の人「申し訳ございません、今後はしっかりチェックします・・・」
経理のベテラン4「ちゃんと工程を理解せずに、決算を担当するとかありえないんだけど」
担当の人「申し訳ございません・・・」

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ぼく「えぇぇぇ、公衆の面前で担当者を公開処刑にする必要ある?ブラック企業の『詰め』と同じ構図じゃないか・・・」

私は、損害保険会社において多くの部門を渡り歩いた珍しい人間ですが、このような組織は初めてでした。「テンテン」は中学生でもできる作業ですが、経理処理の考え方は複雑かつ難しいものも多く、特に損害保険会社等の金融機関においては、責任準備金など業界固有の会計処理が求められるといった背景もあり、相当程度の専門性が必要となります。

このような背景から、ジョブローテーションで頻繁に人を回すのは現実的ではなく、経理の人はずっと経理関連の部署をグルグル回っているような状況で、究極的に内向きな「経理ガラパゴス」を形成していました。私のように他の部門から来る人間は1割にも満たず、経理ガラパゴスにおいては、新卒もしくは若年時から長く経理に携わっている社員が幅を効かせているのです。

そして、決算反省会の場においては、日本の公立小学校における「終わりの会(帰りの会)」のように、「xxさんが悪いことをしました(xxさんが適当に仕事したから決済数値を誤りました)」という議題が挙げられ、当該社員はベテラン社員から公衆の面前で袋叩きに遭います。

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表面上は「失敗を共有することで、組織力の強化に繋げる」ということでしたが、そうであればミスの事例と原因をファイルにまとめて共有すれば済む話であり、敢えて全員を集めて該当者を公開処刑にする意義は何だったのでしょうか。部外者の私が感じたのは、「他の担当者への見せしめとして恐怖心を植え付けること」、および「経理ガラパゴスにおいてベテラン勢が威厳を誇示する場を提供すること」等が挙げられます。

しかし、外部交流の少ない経理ガラパゴスにおいては、これが通常運転でした。経理経験の浅い者は公開処刑に怯え、「使えない」とのレッテルを貼られた者は経理ガラパゴスを追いやられ(強制的に人事異動)、無事に生き残った場合は選ばれしベテラン勢サークルへの加入が認められ、今度はベテラン勢として威厳を誇示しながらメンバーをボコボコにするという、スクールカーストにも似た構図に大きな違和感を覚えたのでした。

怖すぎ

(続く)

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